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第3話牢屋って意外と騒がしいよな?いや、騒がしくしてんのは俺等だけど……

 ガシャッ、キーッ。


 地下一階。


 南京錠の鍵が開く音がした後、鉄格子の扉がおもむろに開いた。


「うわッ」


「くッ……」


 騎士達によって、俺と天野はそこへ乱暴に投げ捨てられるように入れられた。


 扉が閉まり、鍵がかかる。


 体を壁や床に打ち付けられ、痛みに軽く苦悶の表情を浮かばせながら、俺は顔を上げた。

 そして、この状況を作り出した張本人であるお姫様を睨み付ける。


 マジざっけんじゃねぇぞ、こんの糞王女ぉ!テメェなんざその気になればワンパン――


「何ですかその目は?――殺しますよ?」


「い、いやいや冗談、じょーだんですって!そうそう、ア、アレアレ、イッツジャッパニ~ズジョークっ!いっやー、そ、それにしてもお姫様はお綺麗ですねぇ。あ、もしかしてエステとか行きました?」


 畜生死ぬのが怖ぇ!


 両手を合わせ揉み揉み胡麻すりながら笑みは崩さず、しかし、俺は顔面蒼白だった。

 冷や汗が頬を伝うのを感じた。


「あら、そう言えばこの者達は(わたくし)達の言葉が分かるのでしたね。(わたくし)には何を言っているのか理解出来ませんが、恐らく命乞いといったところでしょう…。まったく浅ましい。やはりあの方々とは違って気品や矜持というものがありませんわっ」


 くっそ、この女殴りてぇ!

 平和ボケしてる人間が、他人に生殺与奪の権を握られたら大体俺みたいになるに決まっている。


 自分が召喚した、俺以外の異世界人の奴等に聞いてみろってんだよこの野郎!




 …畜生、惨めだ……。



「さて、勇者様方をこれ以上待たせる訳にはまいりませんわ。行きましょう」


「「はっ!」」


「ったく、無様な奴等だぜ。ペッ」


「だな、特にこの男のガキの姿の魔物はっ。ペッ。はっ、良い気味だ」









 騎士達に吐きかけられた唾が顔面にかかったまま、俺は死ぬのが怖くてヘラヘラした笑みは崩せなかった。


 本当は頭に血が昇っていて、今すぐにでも暴れ出してやりたいのにッ……。




 畜生、畜生…惨めだ……。




 何だってこんな気持ちにならなきゃいけないんだよ。俺は人間だ…。気品は知らない、けど俺にだって、プライドってもんがある。


 それを、それを……――。


 だいたい、何時もこうだ。俺が弱いのを良いことに、寄って集って脅して罵って…。


 しかも、ちょっと歯向かえば何だ!この世は弱肉強食?ふざけんなッ、毎度毎度お前等強者の理不尽に付き合わされるこっちの身にもなれ!


 挙げ句の果てには、異世界に来てもこれか!


「くッ…」





 あぁ、あぁ、あぁ……――。













 ――()()()()()ッ。







「フ、フフフフフフフフフ…………」






 俺の中で、堪忍袋の緒が、完っ全に切れた。


 何かが、なんて濁さない。これが、何かよく分からないもののはずがないから。俺は知っていた。だから、何度だって言ってやる。


 今切れたこれは、堪忍袋の緒だ。


「アイツ等…アイツ等にっ。目ぇに物ッ!見ぃせてやるわぁぁぁぁあああああ!」


 今まで抑えていた怒りの感情を爆発させ、俺は猛り狂った。


「ったく…あなた名前は」


「あ゛ぁ!?俺は並家新丞だよォッ!」


「そう…。じゃあ並家君、静かにしてくれない?」


「静かに…静かに?な、なな、な~るほどなぁ…そりゃお前には分からねぇよな天野ォ!」


 馬鹿を見るような目でこちらを見る天野に、俺は悪態をついた。

 だが、


「笑わせないでよ…。訳も分からないまま誘拐されて、さらにはふざけた理由で殺されようとしてるこの状況で、私が怒りの感情を抱えてない道理がある?でもね、私はあなたと違って怒りに身を任せないタイプなの。だから、今こうやっている間にも、どうすれば生きて家に帰ることが出来るか考えてるの。分かる?」


 はぁ。どこに行っても、馬鹿はいるものよね……、と小さく天野が言ったのも聞き逃さなかった。


 正論だ。そんなの俺だって分かっている。

 けど、どうにも天野は分かっていないようだ。


「はぁ…やっぱお前、何も理解してないな」


「……どういうこと?あなたの感情なら」


「絶対分かってないな、断言してやらぁ。何でって、この状況の本当の恐ろしさすら知らねぇ奴が、俺の気持ちなんて理解できる訳ないからだよ!」


 捕まりました、明日殺されます。天野の奴はそう考えてる。


 あり得ない、()()()()()()()()()()()()()()


 元の世界で、不良共に目を付けられてた俺だから分かる。


「なぁ天野……お前、こういう相手にナメられ切ったら、どうなるか知ってるか?」


 答えは簡単だ。


「さ~て」


「おっぱじめよ~ぜぇ♪」


「なッ……」


「やっぱな」



 コイツなら何やっても構わない。そう思うようになる。


 薄暗い地下には、さっき去っていったはずの騎士2人が再び戻って来ていた。

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