毛布
破れたカーテンの隙間から射し込んだ朝日の眩しさで、ローズは目を覚ました。
「うぅ、また…」
少しだけ寝るつもりが、朝までぐっすりと眠ってしまったらしい。
体をおこすと、毛布がずり落ちた。
「何で、客間の毛布…?」
確か、レオンに客間を使うよう言ったはずだ。その時に、毛布の置場所も伝えた。
うん、今日はちゃんと覚えている。
軽く頭を振ってみるが、痛みもない。寝る前にハーブティーを飲んだおかげか、影響は残っていないようだった。あとは、目の色彩感覚がもとに戻ったかを確かめるだけだと、ローズは助手の姿を探した。
「えっ」
まだ早朝のようだし、客間で寝ているかなと思っていたが、ソファの近くに綺麗な金色の髪が見えた。
踏まないようにゆっくりと足を下ろす。
「何で…?」
レオンは、床の上で寝ていた。
大きな体を折り曲げて、若干テーブルの下に潜るような体勢だ。
とりあえず、そばにしゃがんで軽くつついてみる。
…起きない。
どうやら熟睡しているようだ。
無防備な白い首筋から枷の鎖が見える。
「…」
本当は、ローズにはこの鎖を外すことが出来た。
資格のある者だけが付け外しの方法を知っているとされているが、ローズからみれば、ただの魔術の一つ。法則さえ読み解けば、壊すことなど容易い。
魔術が得意で、褒めて貰いたくて、子供の頃に身につけた技だ。
でも、外さない。
可憐な乙女でも、冷静な女性でもない。
ただの臆病なローズは、何の保証もなく優しくは出来ない。
「二年間、よろしくね」
起こさないようにそっと毛布を掛けた。




