帰宅
お肉の入ったお弁当と魚の入ったお弁当、二つを買ってローズはレオンを連れて帰宅した。
最後の気力を振り絞って、ハーブティーを入れる。
まずは、この特製ブレンドのハーブティーの入れ方を覚えてもらお…。
特に助手に望むものはなかったが、これは大事なことだ。
朝、昼に続き、三度めのハーブティーを飲む。
「この毒消し…じゃなかった、ハーブティーを飲んだらちょっと休むね。好きな方のお弁当食べて」
湯気がたったハーブティーを一気飲みし、さらに二杯目を注ぐ。
その様子をレオンが見ていたので、のどが渇いたのかなと聞くと、首を横に振った。
「もしかして、朝からずっと具合が悪かった?」
レオンの問いにローズは頬をかきながらこたえた。
「…頭痛は治ったよ?」
朝、ハーブティーを飲んで、頭はすっきりしていた。
「頭は、ということは、他は…」
二杯目のハーブティーも一気に飲んだ。
体が暖まり、家にいるという安心感からかどっと疲れが押し寄せてきた。
「ちょっと、ここのところ忙しかったから…。
それで、ソファで寝たから体が少し痛かったかな? 」
「…あとは?」
「あとは…」
しどろもどろになりながら、今日感じた不調を思い出す。ごまかす気力すら、実はもうなかった。
あぁ、疲れた。
もう、ベッドで寝たい…。
でも、その前に今日こそはちゃんと寝間着に着替えなきゃ…。
大事な服をしわくちゃにしてしまった今朝の反省を生かすべく、ローズは上着を脱いだ。
「あとは…」
何の話しをしてたっけ。
今日の不調…。おかしかったこと。
ローズは考えながら、脱いだ上着を椅子の背もたれに掛けた。
次にシャツのボタンに手を掛け、二つ程外したところで気付く。
一人じゃなかった!
ついいつもの癖で服を着替えようとしたが、ちゃんと部屋で着替えなければ。今日から、同居人が出来たのだから。
同居人…。
ローズは同居人の顔を見て、やっとおかしかったことを思い出した。
「ちょっと、いい?」
ふらふらと、ローズはレオンに近付いた。
身長差があったのもちゃんと覚えているから、ソファに乗ってレオンと目線を合わせる。
「ん?」
しかしソファは思った以上に、台としては役に立たないようだ。
足が沈んで、上手く立てない。
結果、膝立ちになってしまう。これではソファに乗った意味がないと思ったが、その分、ローズの意図を察してくれたらしい優秀な助手が屈んでくれた。
薬の影響なのか体勢がどうも安定しないので、ローズはレオンの顔を両手で挟んだ。
顔を近付けて覗き込んだ瞳は、やはり紫色。
「レオンの目…、やっぱり、紫色に見える…」
「?」
そこで限界が来た。
ローズは、レオンから手を離しソファに寝転んだ。仰向けのまま、レオンを見上げる。
「この薬、目の神経がおかしくなるみたいで、今日、いろのみえかたがおかしかったみたい…」
市場で査定をしてもらったとき、あの青年はレオンの瞳の色を薄い水色だと言っていた。そこで、何かがおかしいと気付けたのだ。
それからローズは何度もレオンの目を見た。そして、やっと夕方に水色に見えた。
また、戻っちゃったけど…。
「色がね…、こう…すごく濃いって言うか鮮やかに見えるって言うか…。とにかくいつもと違って見えるの」
レオンとは薬を飲んだ後に出会ったため、自分一人では気付かなかった。その後に会ったのも初対面の人が続き、パルシェに会った時は傘に意識が向いていて、きちんと顔を見ていなかった。
「たぶん、パルシェさんも同じ症状だったんだと思う」
だから夜の暗いなか、あの傘がとても美しく見えて、マリサに贈り物をと考えたのだろう。
あれ、それじゃあやっぱり、酔いが覚めたら色褪せて見えるのだろうか?
考えようとしたけれど、上手く考えがまとまらない。
「…ごめん、もうだめ。寝るね。ハーブティーの入れ方はまた明日…」




