ブランデー
「はい、お待たせ」
カルロスがコーヒーをローズの前に置いた。次に、レオン。
「ありがとうございます」
「あぁ、ちょっと待って」
そう言って、カルロスは細長いスプーンに角砂糖を乗せた。
その角砂糖に琥珀色の液体の入ったボトルを傾ける。
ふわりとアルコールの香りがした。
「これは、ブランデーですか?」
「そうだよ。新しく仕入れた品だ」
角砂糖にブランデーが染み込んだのを確認して、カルロスは角砂糖に火をつけた。
ボッ、と、青白い炎が浮かぶ。
「! すごい!」
「面白いだろ? この前、仕入先の酒屋の若いのに教えて貰ったんだ」
角砂糖が溶け出し始めたのを見て、カルロスはコーヒーに入れた。
「最近、始めたんですか?」
「いや、昨日から始めるつもりだったんだけど、忙しくてな。ローズさんが一番目だよ」
同じようにレオンの前でも、ブランデー漬けの角砂糖に火を付け、入れる。
「面白いですね」
ローズはコーヒーを一口飲んだ。
横目で見ると、助手は言われた通りコーヒーに手を付けていない。魔術を込めた強制力のある命令ではなかったが、それでも良かったらしい。
「カルロスさん。今のは、このブランデーじゃないと出来ないんですか?」
「いや、そうじゃないよ。ただ、この酒を作ってる酒屋の新商品を仕入れるのなら、って教えてくれたんだ。陽気な良い奴だったな」
「そのブランデーは、昨日開けました?」
「うん? そうだけど?」
ローズはコーヒーカップを置いた。
「私、昨日初めてブランデー入りのコーヒーを飲んだんです」
「あぁ、うちの従業員が間違えたと聞いたよ。なんだか、調子が悪かったみたいでなぁ、あのあと厨房で転んで足を捻ったと帰ったんだ」
腕組をしながらカルロスは言った。
「すまなかったな、注文を間違えて。でも、気に入ってくれたのか?」
その質問に、ローズは小さく首を振った。
「とても苦くて、我慢して飲みました」
「苦い?」
カルロスが怪訝そうな顔になった。
「はい。初めて飲む味だから、そういうものかと思ってたんです。カルロスさん、このブランデー、カルロスさんは飲んだことありますか?」
「仕入れたときに、味は見てあるが…?」
ローズに言われたカルロスは、カウンターから小さいカップを持ってくると、瓶から注いだ。
口に含んだ瞬間、カルロスの顔に深い眉間のシワが寄ったのを見て、すかさずローズは忠告した。
「飲み込まないで!」
カルロスはすぐに流しに向かい吐き出した。
「なんだ、これ? 仕入れたときと味が違ってる!」
やっぱり、ローズは、肩を落とした。
「パルシェさんも昨日、このお店でお酒を飲みましたよね?」
「あぁ。一人だったから、控えめにすると言っていたが…?」
「飲んだのは、ブランデーですか?」
「あぁ、確か…。ローズさん、どう言うことだ?」
ローズは静かに言った。
「多分、何か薬が混ぜられているんだと思います」




