コーヒー
店の奥で、コーヒー豆を挽く音がした。
今日は定休日なのに、嫌な顔一つせず丁寧にコーヒーを入れてくれる。
今日は従業員もいないようだから、二人分のコーヒーを入れるのにまだ時間は掛かるだろう。
「…レオンは、コーヒーは嫌い?」
さっきの複雑そうな顔は何だったのだろう、とローズは聞いた。
「嫌いじゃないよ」
「そう? ごめんね、悪いんだけど…」
「…俺に謝る必要はない」
厨房ではお湯が沸いた音が聞こえた。
この後、コーヒーを入れて…。
他の準備もしているのか、食器の当たる音や引き出しを開ける音。それらが、騒がしくこっちの声は聞こえないだろう。
「何度も言っただろう? 飲めと言われれば飲むし、食べろと言われれば食べる」
薄い水色の瞳がローズを映した。
「木に登ってって言ったら、木に登る?」
「それが、命令なら」
「そう…」
いつもは賑わっている店内に二人きり。カルロスの作るオムレツはとびきり美味しいし、デザートの種類も豊富だ。そしてコーヒーは豆を挽いて入れてくれる。
ローズは少し憂鬱な気分になったが、カルロスが来る前に、この話を終わらせなくてはならない。
「一つ言っておくね」




