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薔薇と鷹の二年間(仮)  作者: 飴屋


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22/35

傘の持ち主

レオンが歩き出したため、ローズも仕方なくそのまま市場に向かうことにした。


無理しなくていいのに…。


少しは気が紛れるかな、とローズはおしゃべりを続けた。


「パルシェさんは、食堂で誰かの傘を間違って持って帰ったって言ってたけど、それは違うと思う」


そっと、傘を撫でる。


「昨日の天気は晴れ。パルシェさんが夕飯を食べた六時ごろも、もちろん雨なんて降ってなかった」

「あぁ。覚えてる。…満月が綺麗な夜だった」


朝から晩まで、雨の気配は全くなかったのだ。


「だから、夕飯を食べるのに傘を持って行く人なんていないはずでしょ?」

「でも、誰かの贈り物だったとしたら?」


この傘は新しい。

留め具も固く、布の部分も雨で濡れた形跡はなかった。その事に、助手も気付いていたようだ。


「その線もなくはないけど、大事な贈り物を食堂の机にかけておくかな? しかも、無くしたことに気付かないのも少し不自然」


パルシェは食堂に行ったけど、誰も取りに来ていないと言っていた。


「だから、この傘は食堂にはなかった」

「それは、その後にその依頼人が手にしたと?」

「うん。そうだと思う」


多分、パルシェの妻のマリサもそう考えたのだろう。

だから、浮気を疑った。


「でも、私はパルシェさんは無実だと知ってる…、というよりは私もパルシェさんと、同じだった…?」


市場に近づいてきたからか、喧騒が聞こえてきた。


「?」


そっとレオンの顔を伺う。

あまりにも顔色が悪かったら家に連れて帰って、もう一度一人で来ようかと考えていたローズだったが、そこまで悪くはなさそうだ。


「目が覚めたら、買った覚えのないものが家にあった」


つまりパルシェにとっての傘は、ローズにとってのレオンだ。


「…つまり、酔って記憶を無くしただけだと?」

「私の場合はレオンが説明してくれたし、証明書もあったから、謎ではなかったけどね」

「…」

「だから、この依頼がすぐ解決出来たのはレオンのお陰だよ」

「それでどうしてここに?」

「夕方以降に開いてるお店って、食堂や飲み屋さん以外はないの。ここの市場以外は」


始めて来たときに驚いた。

裏市場と呼ばれていたから、もっと怪しげな店ばかりがあるのだとばかり思っていた。

でも、市場の手前付近は異国の装飾品や果物が売っていた。探せば、傘を売る店もあるだろう。


「ここで昨夜この傘を売った人を探して、買った人がパルシェさんだったら、この推理は正しいと、裏付けになるから」


もし見つからなかったら、この推理は間違っていることになる。


…本当は間違っていてほしいんだけど…。


ローズの願いはむなしくも叶わなかった。

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