ジャスミン薬局
「しみない消毒薬と包帯、ガーゼにあと痛み止めはありますか?」
出かける準備をしている間に雨は上がっていた。まだ雨雲はあるが、数時間はもつだろう。
ローズは当初の予定通り、薬局に来ていた。ジャスミン薬局は、その名の通りジャスミンがひらいた薬局だ。
「ローズさん、また木から落ちたの?」
ジャスミンではなく、彼女に雇われた店員に呆れたように言われた。
…助手の前で言ってほしくなかった…。
「違いますよ! ストックです!」
助手の背中の傷は、そう簡単には治らないだろう。毎日手当てをするとなると、今ある分では足りないのだ。それに、なるべくしみないものが欲しい。
「あら、じゃあ、軟膏はいらない? 塗っておくと、治りが早いけど」
「うっ…。ください」
軟膏は長期保存がきかない。
軟膏を必要としているということは、今、怪我をしているとばれたわけで…。
店員は笑いながら一番大きな薬の容器を取り出して、店の奥に消えた。
「ここの薬局の薬はよく効くんだよ」
気を取り直してローズはレオンに話しかけた。
「木から落ちたって?」
「一度だけね。大家さんの大事な鳥が…」
あれは不可抗力だった。
ローズが名誉のため、詳しく説明しようとしたとき、店員が戻ってきた。
「はい、お待たせ」
「早いですね!」
いつもはもっと時間がかかっていたはずだ。しかも、いつもよりも大きな容器だったと言うのに。
「なんだか今日は軟膏を買いに来るお客さんが多くてね。多めに作っていたから、容器に移し変えるだけだったんだよ」
「…怪我した人、多かったんですか?」
「あぁ。怪我って言っても、擦り傷とか小さな傷だけどね。雨だから、皆転んだのかね?」
いつもなら雨の日はお客が減るのにね、店員は首をかしげながら言った。




