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薔薇と鷹の二年間(仮)  作者: 飴屋


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赤いホーロー鍋

ローズは密かに浮かれていた。


この大きな鍋が役に立つ日が来るなんて!


ここで暮らしていくと決めたとき思わず買ってしまった、赤い色がかわいいホーロー鍋。だが実際に料理してみると、一人分の食事を作るには大きすぎて使いにくかった。

結局、棚の奥に入れたまま。今度町でフリーマーケットをやるそうなので、それに参加して処分しようと思っていた。

でも、二人分なら!

久しぶりに取り出してみると記憶よりも濃い赤色の鍋に水を溜めて、火にかける。

お昼ごはんはパスタだ。

お湯を沸かしている間に、プリンを先に作る。

ローズは卵を割って砂糖と牛乳を入れて良く混ぜた。漉し器はないのでザルで代用して、お客さん用のカップに注ぐ。

蒸し器ももちろんない。

スキレットにカップを置いて、まわりに水を張ると蓋をして火にかけた。


二口焜炉だと、これで限界…。


カラメルは後回しにして、パスタに混ぜられそうな具材を探していると、 ふと視線を感じたので助手を見た。


「手伝う?」


ずっとこちらを見ていたらしい助手と目があった。


「ううん。今日はゆっくりしてて」


鼻歌歌ってなくて良かった!

プリンを作っているスキレットの蓋についた水滴が落ちないように気を付けながら、そっと開けた。

余熱でさらに蒸らしている間に、カラメルをつくる。

砂糖二杯と水。

焦げる直前まで待って、最後にまた水。

ジュッと、水蒸気が上がれば成功だ。


…久しぶりに作ったけど、うまくできたかな。


トロリとしたカラメルを出来上がったばかりのプリンに垂らす。

パスタも手早く作ってしまう。

沸いた湯にパスタを入れ、砂時計をひっくり返す。なんとか残っていたベーコンのはしとレタスを炒め、湯であがったパスタとあえる。


最小限の材料と時間で出来るパスタを作ると、仕上げに胡椒を振った。


「出来たっ!」


何だか色々あって、お昼の時間は過ぎている。朝ごはんを食べていないローズは、空腹だった。

いつもは洗い物も済ませてから食べるのだが、今日は早く食べたい気持ちが勝った。


「ご飯出来たよ」


鍋は水に浸け置いて、助手を呼ぶ。

やはりずっとこちらを見ていたらしく、目があった。

それなのに、動きは遅い。


「お腹空いてない?」

「…」


戸惑いの表情の助手の顔を見て、そう言えばと思い出した。明日も消毒するのが、昼食にプリンをつける条件だった。


「プリンは食べなくても、明日も消毒はするつもりなんどけど…」


そんなに嫌なのかな、と湯気をたてるパスタを食べたいのをこらえて説得にかかる。


「…本気なのか」


ローズに向けて言ったにしては小さな呟きだった。


「うん。だって、早く治った方がいいでしょう?」


あとでしみない消毒薬を探してこようか、近所の薬局を思い浮かべる。


「違う。…今まで、昼食を用意する主なんて、いなかったから」


どうやら、明日も消毒はしていいらしい。


「うん。お手伝いさんとかいないから、自分で作るよ。背中の傷が良くなったら、レオンも手伝ってね」


ローズの答えに、助手はさらに呆れ顔になった。ただ自分が座らないと、ローズがご飯を食べられないと気付いたようだ。ゆっくりとローズの向かいに座った。


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