11 査定
「うゎー。きれいな顔だなぁ。暇をもて余したマダムにかわいがられそう。じゃ、始めるな」
軽口をたたきながらも 店員の動きは早かった。
万が一暴れても対処できるようにだろう、足にも枷をつけると、少し歩くように命じた。
その後、中央に石がはめられた魔道具を瞳に向けた。
「うーん。大きな傷は見えるところにはないし、骨折もなし。魔力は中くらい?」
手元に用意していた荒い紙に羽ペンで書き込む。
「あとは、見た目と身長、金色の髪、目の色は…これはアイスブルー? 薄水色…、ざっくり査定だとこんな感じ…であってます?」
紙に数字を書き込んで、背後にいた店主に渡す。
「どれ」
店主は片手で受け取った紙を、目を細めて読んだ。
「…全然、駄目だな」
「あれ?」
「色々見落としてるぞ。…まぁ、いい。話はあとだ。お客さん、待たせて悪いね」
ローズに向き直り、店主は頭を掻きながら言った。他のことに気を取られていたローズは慌てて答えた。
「いいえ」
実際、それほど長い時間掛かっていない。
それほど広くない店内で、店主に勧められた木製の素朴な椅子に座った。
「この店で買い取るなら、大体これくらいだな」
店主がさらさらとペンを走らせ数字を書いた紙を渡される。
受け取った紙には、かなりの額の数字が書かれていた。
「……」
紙を見て無言になってしまったローズを見て、店主は困ったように続けた。
「…もう少し出せなくはないが…」
ただなぁ、と店主は続けた。
「査定してみて思ったんだが、この額に少し色をつけたぐらいじゃ、あいつが田舎に帰る決心をしないと思うんだよな」
腕を組みながら、ローズの持っている紙を指差す。
「この額じゃ、引っ越しの手配と故郷に帰る馬車代宿泊費、あとは新居の手付けで消えるだろ? せめてあとこの三倍なきゃ、あんなに浮かれないと思うんだが…お客さん、一体いくら払ったんだ?」
その質問に我に返ったローズは、うつむいた。
「それが、貰い物のブローチを渡したみたいで、価値がよくわからないんです。証明書もしわくちゃで…」
「あぁ、酔ってたんだったな…」
憐れみの視線が辛い。
ブローチは本当に貰い物で、手元から離れても何の未練もないが、こんなに高価なものだったのかと驚いた。
「プルートがこの男にどんな価値をつけたかは分からないからし、俺はブローチを見てないからなんとも言えないがな」
話が絡み合ってきた。
「あのブローチにそんな価値が…」
「流石にこの市場では売らないだろうから、どこか宝飾品を扱ってる店に行ってみな。運が良ければ、みつかるだろう。それで、どうする?」
どうする、と店主は訊いた。
「見たところお客さんは、今すぐ金が必要な訳じゃなさそうだ。それなら、こいつに稼がせるっていう手もあるが」
「それは…」
「二年ぐらいで、元は取れるんじゃないか?
手放すのはそれからでも遅くないだろう」




