おまけ 砂漠の子守り歌
どこからか、歌が聴こえた。
今日売られてきた女が、少しばかりの慰めに歌っているのだろうか。
歌など縁のない人生だったはずなのに、なぜかその曲は聴いたことがあった。
ここから遠いところにある国の子守り歌だ。
砂漠に住む貧しい少年が、仕事中に落としたナイフを探す歌だ。
大きな サソリから身を隠し、時折巻き起こるつむじ風に跳ばされながら、一本の錆びたナイフを探して途方もないほど広い砂漠をさまよい歩く。やがて、三日月が登り夜となり、月光が作る光の道をたどり、着いた先には、世にも美しい一輪の花が咲いていた。
長い旅路の末、少年が見つけたその花の色は、赤だったか、白だったか。
何故だかそこだけが記憶から抜け落ちていた。
最後まで歌を聴けば、思い出せるだろうか。
しかし歌詞とは違い、見上げた空に浮かぶのは満月だった。
夜中まで明るい今夜は、市場も遅くまで開いている。
美しい歌声に誘われてやって来る客に、きっと女は歌を最後まで歌いきれずに買われていくだろう。
花の色はきっとわからない。
…と思ったら、割りと力強い鼻歌で、しかもどんどん近付いてきた…。




