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8 一人
よろしくお願いします。
暖炉の灯りと何本もの蝋燭が照らす、ほんのり明るい部屋で私達は椅子に座り、それぞれが好きなものを飲んでいた。
私は、続けてカンパリソーダを飲んでいたが、グラスの底が見えてきた頃に、いつもの老紳士がやって来て、お代わりは如何でしょうか? と聞いてきてくれたので、もう一杯お願いすることにした。
老紳士が新しいカンパリソーダを手渡してくれ、それから少しの時間が経つと、私の次に店へ入ってきた中年の男性が喋り出した。何処となく寂しげな表情をした男性は、痩せていて背の高い人物だった。
しっかりと折り目正しくアイロンのかけられた濃紺のスーツに真白なシャツ、ネクタイこそしていなかったが、彼もそれ相応の暮らしをしている人物であることが伺われた。
彼は、
「今夜は、私が話をしましょう」
そう言うと、持っていたグラスに唇を当てて、ウイスキー・ウィズ・ウオーターで少し喉を潤わせ、語り始めた。
ありがとうございました。