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聖女の成れの果て。


「貴女のような魔女ごとき、ハインと釣り合うはずがありませんわ!」


依頼者が来たかと思えば、玄関扉を開くと男性二人を引き連れてやって来たのは自称〝聖女様〟であった。

私の想像の遥か遠くを通り越した上から目線で物言い。

魔女〝ごとき〟、私とて仕事にプライドを持ってやってきた。数々の依頼をこなして沢山の人々を救って来た自負もあった。

落ち着け、私。

彼女はハインさんに好意を持っているという話だ。

想像するにこれは紛う事なき嫉妬である。

恋愛関係ではないとハッキリ告げれば終わりだ。


「聖女様、何か誤解をされていらっしゃいます。」


「誤解!?ハインと貴女が深い中だというのはその右手の指輪が証拠ではありませんか!」


ギクリ、と右手をサッと隠した。が、もう遅い。聖女様からの罵倒が始まる。


「〝虹の欠片〟は元々、私が頂くものだったのです!魔女ごときが嵌めて良い指輪ではありませんわ!返してちょうだい!!」


キーンと響く金切声に耳を塞ぎたくなった。

聖女様は引き連れて来た男達を顎で使い抵抗虚しく私を拘束させた。

右手から指輪を引き抜こうとされたがどうやら抜けないらしい。後ろで縛られた手は見えないので様子は伺えない。


「…ちっ!取れません!そればかりか、触れているとどんどん魔力が吸い上げられます!」


男達は私から一旦離れると聖女様にどうするか指示を仰いでいるようだった。

その時、玄関扉が開く。


「…何事だ!メルリス様を捕縛するなんて信じられん!」


拘束されている私を見て直ぐに助けに入ったのはクラスラさんであった。いつもの騎士服に顔の隠れる兜を被っている。


「…騎士が聖女の私を邪魔しないでくださる?」


拘束を解かれる私の様子を見ながら聖女様はクラスラさんを睨みつけた。


「王国の法律で民間人を傷つける事は違法でありましょう。こんな手荒な真似よく出来ましたね。」


クラスラさんと聖女様は睨み合い。男達は今にも飛び掛かって来そうだ。一体何でこんな事に。

ハラハラとした気持ちを他所に再び扉が開かれた。


「何をしている!彼女に危害を加えるようならパーティは解散すると言ったはずだぞマリア!」


ハインさんの登場で空気が一気に重たいものに変わった。

聖女様は引き攣った笑顔で言い訳を始める。


「ち、違うのよハイン!ちょっとだけお話しをしようとしただけなの!信じてちょうだいハイン!」


慌ててハインさんの側に寄ろうとしたところで距離を取られる聖女様。一緒にやって来た男達は嫉妬するように眉間に皺を寄せている。


「誰が信じるか。〝虹の欠片〟に執心しているようだが持ち主から奪えないよう細工されている。どう足掻こうと無駄だぞ。」


それを聞いた聖女様はキィッと私を睨みつけ足早に家を出て行った。

引き連れていた男達も置いて行かれまいと急足で聖女様の後を追って行った。


暫しの静寂後、残された私達は溜息をそれぞれついた。

少しばかり痛めた手首を労るように私の手首に治癒魔法を施すハインさん。


「…すみません。まさか、あの女がここまで来るとは思わなかったんです。許してください。」


スゥっと痛みが取れた手首。右手の小指も無事だ。


「ハインさんが悪いわけじゃないですし、誤解だってハインさんから言ってもらえたら全て解決するのでは?」


言葉に詰まったハインさん。

少し考えて答えてくれる。


「誤解、ではないので。」


その先を口籠る。続きを聞く前にクラスラさんが口を開いた。


「此度の件、王国の法律に準じて少しの間王室で閉じ籠って頂きましょう。」


「そうだな。それが良い。クラスラ、この件はお前に任せる。」


慣れたように話す二人に私は驚いた。しかもハインさんは上司かのように話すのが新鮮だ。


「お二人って、お知り合いだったんですね。」


勝手に進む話についていけず口を挟む。

どんな用事があったのかはこれから聞くが折角なのでお茶の用意をすることにした。

魔術で炎を呼び出す。小さなケトルはすぐにお湯を作り出した。

お茶菓子と紅茶をテーブルに並べる。


「あの、黙っていたのは謝ります。ので、ハイン様のことはどうかお許しを願いたい。」


椅子に腰を掛けた瞬間に話し出したのはクラスラさん。

何か焦っている様子に私は笑った。


「許すも何も、こうしてお二人に助けて頂けたので心配ご無用ですよ。」


兜を脱いだクラスラさんはホッとした顔をした。

ハインさんもどこか安心した様子。


「もう二度と聖女がここへ来ないよう厳しく言っておきます。」


「そうしてもらえますと助かります。正直、彼女が聖女様だなんて思いたくないですもの。」


私の言葉に二人はうんうん、と深く頷いた。


「アレは勝手が過ぎる。俺も出来ることなら縁を切りたいと思ってますが国王が次の魔王が現れるのを恐れてそれを許さないのです。」


湯気の立つ紅茶を飲みながら話を聞く。


聖女様は召喚された女性であり治癒魔法に長けてるそうだ。

と、いう事はもしかすると私の転生前の世界と同じところから召喚された可能性もある。

やはり何があるかわからない世界だ、簡単に身の上を話すべきではないと悟った。


「パーティを組んだ当初からメンバー内で争いがよく起こった。それは聖女の取り合いから始まっていたのです。」



ハインさんは魔王討伐に組まれたパーティの話をし始めた。









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