表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

リムバス王国記

元第2王子の婚約破棄の顛末

よくある婚約破棄ものを書こうとしたらこうなった(-_-;)





 「こ…コンニャク破棄だっ!」



 頭に蛆虫がわいて中のマシュマロを食い付くされたとしても出てこないだろう珍言を、会場中に響きわたる無駄な美声で宣言したのは、誠に残念なことにまだ我が国の第2王子殿下であるソシアード・リムバス王子殿下でしたわ。

 傍らに侍るというよりは引っ付いているのはルナージュ伯爵令嬢でしょうね。あんな派手な色の頭、他にはおりませんから。 

 

 私はリムバス王国始祖とともに建国に貢献したと云われるセルフィス侯爵家の令嬢ミルネバと申します。

 王立貴族学院、我がリムバス王国の王都にある貴族子弟の学舎において、今日は夏季の長期休暇前に開かれる全生徒出席の懇親会です。


 様々な行事を行うさい、問題なく運用出来るようにと設備を整えられ、広さもある大ホールには訳あって出席出来なかった者を除いて、現在の在校生の殆どと、教師陣に万が一のための衛士が控えております。


 先程の発言に在校生の皆様は笑い声が漏れるのを堪えておいでのようですが、目の前でそんなことを言われた私は頭痛で帰りたい気持ちを抑えて殿下へと言葉を返します。


 「コンニャクは大変な貴重品ですが棄てると仰有いますならご自由に、ですが救国の勇者様に唾吐く行為となりますわよ」


 全く、肝心な科白(セリフ)を言い間違えるとか。私の発言に堪えきれずに幾人かが吹いてしまいましたわ。

 こんにゃくは当世から三代は遡って、グラシード陛下治世の頃に大陸へと現れた魔王を討伐すべく、神聖国と共同して召喚された勇者様が作られたと聞いております。

 魔王を討伐した勇者様はあらゆる名誉も地位も望まずに各地に自由に出入り出来る権利だけを求めたそうで、そうしてご自身の出身である世界の料理の再現を続けられ、晩年には「ニホンシュ」というお酒を出して「デンガク」や「オデン」「シメノラーメン」なる料理をだす、「イザカヤ」なる店を始めたのですわ。

 

 現在では勇者様の子孫や弟子たちが広めた「イザカヤ」は各地にあるようですが、コンニャクの原料となる芋は我が国でも最難関として知られるヘード洞穴の下層階層まで降りなくては存在しないらしく、勇者様が発見して以降、替わりとなるものが見つかっていないために高級品なのですわ。


 目の前の殿下はお顔を真っ赤に染められて震えていらしたのですが、堪えきれなくなったのでしょうね、癇癪をおこした子供のように、また吠え猛ります。


 「コンニャクでは無いっ! こ・ん・や・く 破棄だっ!」


 噛まない為ですかしらね、わざわざと言葉を区切られて。

 それにしても、問題発言を冗句(ジョーク)として流して差し上げようと思いましたのに。


 「貴様はいつもそうだ。俺をバカにしてっ!」


 足りないとは思っておりますから、その点は否定出来ませんので、肝心なことを訊くことに致します。


 「殿下は誰と誰の婚約を破棄されるおつもりですか」


 私がそう訊ねると、殿下も傍らのルナージュ伯爵家令嬢もワーワーと騒ぎ立て始めました。


 「そんなもの、貴様と俺の婚約に決まっているだろっ! 貴様はまた、権力を笠にきて婚約を押し通すつもりかっ!」

 「ミルネバ様、どうか殿下を解放してあげてくださいっ!」


 何から突っ込めば良いのやら、横にいる侍女のアンヌに目線を送るも下を向かれてしまいました。面倒ですが、自分でどうにかしなくてはならないのね。


 「殿下、まずは前提としてですが、私と殿下の婚約は一週間ほど前に既に殿下有責で無かったことになっておりますわ。元より存在しない婚約を破棄など出来ません」


 私の言葉にギャラリーとなってしまった皆様が頷きますが、当の殿下本人は気付かれておられないようで、猪よりも視野が狭いのでしょうか。


 「私はそんなこと聞いていないぞっ! みっともなく破棄されたくないからと嘘をつくなっ!」


 「嘘ではありませんよ。王家と我が侯爵家、それにそこにおられるルナージュ伯爵家令嬢のご両親もおいでになって関係者一同での協議で決まりましたもの」


 「関係者一同だとっ、俺は呼ばれてないぞっ!」


 「王宮から使者が送られた筈ですが使者の方の弁では第2王子殿下は婚約の件だと告げて封書を渡すとその場で破り棄てたと、同席していた令嬢にも渡そうとしたが、それも一緒に破られたと」


 「封書だとっ」


 思い当たることがあったのでしょう。流石の殿下もそれくらいは覚えていたようで安心しましたわ。使者の方曰く、『どうせ、あの女が婚約の継続をせがんでるんだろっ! 読む必要も無いっ!』と王家の封蝋ごと破ったそうで、それは普通に反逆の意図を疑われる行為ですのに。


 「それから、殿下。私との婚約が無かったことになりましたから、殿下は近くマイネル男爵家の養子になられます。そちらも連絡の使者が行っていた筈ですわ」


 「なぜ、俺が男爵家なんぞにっ! 貴様の嫌がらせかっ!」


 事の顛末を含めて全て我が国の貴族なら知っていることですのに。


 ソシアード王子殿下の母君は現陛下の公妾であるサーシャ様です。陛下が妃殿下との間にお子をなされて後、お忍びで行った「イザカヤ」の給仕の女性と火遊びの果てに妊娠させてしまい、やむを得ずに王宮に離れをつくり、公妾としたのがその時の給仕であるサーシャ様です。陛下は身分を偽っていたそうですし、サーシャ様は勇者様の直系のご子孫でありましたから、様々な配慮からの「公妾」だったわけですわ。

 

 とはいえサーシャ様は平民ですし、離れに入った「妾」ですから、お子であるソシアード様は庶子であり、王籍には入れない筈でした。

 サーシャ様自身もそれを望んでおられたのですが、勇者様の子孫を騙して蔑ろにしたと責められてはいけないと妃殿下が王籍に入れる方法は無いかと宰相閣下へと持ち掛けたそうですわ。


 陛下の裏切りに寛大さを見せる妃殿下の提案でしたし、何よりも勇者様に絶大な信仰を寄せながらも「故郷の味を再現するにはリムバスのが食材が揃う」という理由で勇者様に振られ。我が国に取られたと根に持っている神聖国から、難癖がましい抗議がくる可能性や、国内の勇者信仰に篤い貴族や平民からも非難される可能性はありましたので、ソシアード殿下を王籍に加えるための方策が取られたのです。


 その方策が幼少の頃より結ばれた私との婚約でした。

 

 「本来であれば、平民であり、妃でもないサーシャ様のお子である殿下は庶子として育てられ、元は成長したのちに王家直臣であるマイネル男爵家に入り婿として男爵位を授かる筈だったのですわ。それをアンネクラール妃殿下の温情で我が家との婚姻を結ぶことを前提に王籍を授けて王子として育て、いずれは我が家に臣籍降下し婿に入る約定だったのですわ」


 「そんな出任せを言ってっ!」


 「そうですっ! 嫉妬して手放したくないと見苦しいですっ!」


 本当に人の話を聞かない方ですわね。決して能力が無いわけではなくて、武芸には秀でているそうですが、きっと頭にも筋肉がつまってらっしゃるのかしら。

 それよりも問題なのはこの娘ですわね。


 「ルナージュ伯爵家令嬢、私は貴女の名前を存じ上げませんので、そう呼ばせていただきますが、貴女は平民であるのに殿下や侯爵家令嬢である私の会話に何の権限があって割り入っているのかしら」


 「何で私が平民なのよっ!」


 ルナージュ伯爵家令嬢は平民と呼ばれるのが気にくわないのかしらね。普段は権力を笠にきてなんて批判するくせに。

 ですが、ルナージュ伯爵家は元々、とある公爵家の借金の肩代わりをする見返りにと、公爵家の持っていた爵位を一代限りで譲渡したものですわ。

 その際に王家にも随分と寄付をなさったらしいですが、口さがない者からは「金で爵位を買った成金」と呼ばれてますのよ。当のルナージュ伯爵は爵位を得たことで様々な便宜を図らずとも商売を展開出来るために更に業績を伸ばしておられるようですが、とは言え一代限りの爵位ですから、当然にそのお子は皆様「平民」ですわ。

 

 ですが、裕福なルナージュ伯爵家と繋がりを持ちたい者は多いですから、目の前の令嬢を除けばご兄弟姉妹の皆様は無難に資金繰りの苦しい公爵家や伯爵家へと嫁いだり婿入りしましたわ。

 我が国では王家直臣の男爵、子爵家や同じく古い家柄の侯爵家の寄り子である男爵、子爵家のほうが、王家より臣籍降下で作られては消える公爵家や、報奨として与えられる名誉称号のような伯爵家よりも、爵位は下でも家格は上なのですわ。

 勿論のこと、王家の血筋である公爵家を軽んじることはありませんが、それでも家としての古さ、直臣として国に貢献した業績は一朝一夕で覆るものではありませんから、裕福で経済、物流の要となりつつあるルナージュを取り込み、経済的な安定を図り、国内での発言力を強めたい新興貴族家なら、引く手あまただったのですわ。


 ですのに、なぜか政略で結ばれた婚約者のいる殿下を狙うとは。

 我が家としては勇者様に連なる血が入るというメリットと、王家に恩が売れるというメリットがありましたが、殿下の振る舞いの酷さゆえに「次期当主」として迎え入れることは難しくなってしまったのです。

 王家としても、温情をかけて王子として育てた恩を仇で返された形ですからね。

 そして、ルナージュ伯爵家は王家と我が家から莫大な賠償を命じられ、兄弟姉妹方の決まっていた婚姻も全てご破算になったようですわ。

 巨額とは言え賠償だけでは破滅まではしませんが、王家と古参の侯爵家を敵にしたのです。この先の商売は難しいでしょうから、当然に利に敏い方々からは切られますわね。


 「言ってもわからないでしょうから、連れて行きなさい」


 私がそう言うと、ルナージュ伯爵家令嬢は衛士に両脇を抑えられて連れていかれます。

 無駄に実力のあるソシアード殿下を抑えるために複数の衛士が奮闘しているのはどうしたものですかしらね。

 

 「離しなさいよっ! 私は伯爵令嬢よっ!」


 まだ諦めていない彼女に事実を告げてあげましょう。


 「ルナージュ伯爵家令嬢とお呼びしていましたが、お名前を知らないからですの。ルナージュ伯爵閣下は先日の協議の場で爵位を返上されましたわ。賠償額の減額の条件としてですが。そして、貴女とは親子の縁を切るそうですわ」


 そう言われた彼女は顔面を蒼白にして喚いていたが、口を押さえられて引き摺られていかれましたわ。


 「おい、離せっ! 俺は王子だぞっ!」

 

 まだ見苦しく怒鳴り散らして騒ぐ殿下にいい加減に頭にきてしまいますわ。


 「殿下、先ほども言いましたが、殿下は近くマイネル男爵家に養子入りすることが決まっておりますし、便宜上、殿下とお呼びしておりますが、既に王籍は外されておりますのよ」

 

 「ふざけるなっ! なぜ俺が王籍を外されなくてはならんのだ。愚鈍な兄上にかわり、立太子するのは俺だとルナージュ伯爵にもラドバ公爵にも言われていたのだぞっ!」


 あー、そんな暴露までしていただかなくて良かったものを。いえ、我が家でも王家でも調べてはおりましたが、これでラドバ公爵家もルナージュ元伯爵家もその家族も連座で処罰は免れませんね。


 「いい加減になさいっ! 貴方の我が儘でどれだけの人間を死なすつもりですか」


 突然に響いた声はサーシャ様のものでした。


 歳を召されて尚、その美貌に陰りもないサーシャ様は身分こそ無いに等しいものの、勇者様の子孫であり、何よりもその思慮深さと慈悲深さゆえに慕われておいでなのです。

 ですから周りにいた者たちが自然、跪くのも仕方ないことだと思いましたの。


 「母上っ! 助けてくださいっ!」


 そんなふうに臆面もなく叫ぶソシアード殿下にサーシャ様は悲し気な顔をされたあと、ホール全体へと魔法で声を響かせて仰有いました。


 「元より、あの方との間の不義の子です。皆様の温情に甘え、私の罪を罰されることも無く過ごしたことが間違いだったのでしょう」


 次の瞬間、サーシャ様はテーブルの上におかれていたのだと思われる肉斬り用の小ぶりなナイフを深々と胸に刺してしまわれました。


 ホール中に悲鳴や怒号が飛び交う中でサーシャ様はソシアード殿下に語りかけられたのです。


 「これでも勇者の末裔ですからね。魔力でナイフを強化するなんて容易いの、並みの人間よりは死ににくいけれど、心臓に達してるわ、もう助からない。ねぇ、私のかわいいソシアード、もう一度、ちゃんとやり直しなさい。罪ならお母さんが持って行ってあげるから、男爵家の従者から、ちゃんとやり直して」


 「は…母上ーっ!」


 私は衛士たちに指示を出し、教師の方々は急ぎ救命のための魔法を紡ぎますが、その全てが術式を構成出来ずほどけて行きます。

 

 「無駄よ。このナイフには咒をかけているの。必ず私を殺す咒よ。まさか、こんな愚かなことをするとは思って無かったの。どうか許してあげてね」


 それでも私はサーシャ様の胸からナイフを抜き取り、魔力の限り回復魔法をと手を当てたのです。


 「ありがとうございます、ミルネバ様。でも、咒のかかったこの傷は癒えることは無いの。貴女に迷惑をかけて、その誇りを傷つけてしまったお詫びになるかしら」


 「サーシャ様がお詫びなどする必要ありません」


 「いいえ、私一人の命であの子の愚かさで死なねばならない方を助命できるのなら、それが一番よ。私とあの人の罪なら、私が償えば丸く収まるわ。陛下を処するわけにはまいりませんもの」


 「サーシャ様っ!」

 

 大ホールに駆け付けた多くの者の前でサーシャ様はお言葉通りに身罷られてしまいました。

 


 民の多くにも愛されていて、妃殿下や立太子された第1王子とも仲の良かったサーシャ様の死は衝撃を与えましたが、助命嘆願をしての最期でありましたから。ソシアード様も、そして関係した方々も処罰はされても「死罪」だけは免れました。


 ですが、平民となり、男爵家従者見習いとなったソシアード様も、あの元伯爵令嬢も激昂した民に襲われて亡くなったようですわ。

 武芸に秀でたソシアード様が何故か無抵抗だったと聞き及んださいには複雑な気持ちになりましたわ。

 その時、手を差し伸べる者は居なかったそうです。

 

 ルナージュの家は取引が困難になったばかりか、激しい迫害を受けるようになり、国外へと転居を図ったようですが、国境を出る前に野盗に襲われて一家諸ともに亡くなったようです。

 ラドバ公爵家は護衛を固め、屋敷に籠るようになった後、病死されたと聞きましたわ。



 「サーシャ様、申し訳ありません」



 私は来月には修道院へと入ります。 

 我が家に子供は私一人でしたが、跡取りならば血縁から養子をとれば良いのです。問題ありません。

 なぜ、私はあの時、面白がって殿下を早々にお諌めしなかったのでしょう。

 もっと早く衛士を動かさなかったのでしょう。

 ラドバ公爵閣下を内々に始末することになっておりましたのに、あのような場で殿下が口走るのを私は期待していたのです。

 私を蔑ろにし、恥をかかせた殿下を殺すために。


 サーシャ様、私は殿下を赦せなかったのです。


 

 その後、我が国は急速に衰退していったのです。

 台頭する平民を抑えることが出来なくなっていきましたわ。売り買いや報奨品として爵位をやり取りするようになり、爵位は形骸化したのです。

 そもそもとして、経営の成り立たなくなった貴族家が平民から支援を受けてはその見返りに「名誉」と称して爵位を授けるなど、有名無実化するのは当たり前ですわ。ですのに中身の無い名誉称号だけで支援を受けられると高位貴族ほど行っていたのですから。自ら、その身分に正当な価値はないと喧伝していると気付かなかったのかしらね。


 そのように国内が混乱する中、神聖国が攻めてまいりました。


 「勇者様の血筋にあたる者を不当に虐げ自害させた」


 大義名分はそんなところですわ。

 愛する女性を失った陛下や領民の反乱などで手の回らない貴族たちは更に浮き足だったのです。


 国境沿いに位並ぶ神聖国軍に国境を守護する方伯閣下の軍が相対している中、私は父を通して願い出た和平の使者として向き合う両軍の中央におりました。


 神聖国からすれば、私の立場は扱い辛いことでしょう。サーシャ様の自害の原因のようでもありますが、それもサーシャ様の実子であるソシアード様の所業が原因なのです。

 勿論のこと、神聖国は私を悪女として喧伝しているようですが。

 恐らくはこの戦争を回避したところで、我が国の王家は国内の革命勢力に倒れるでしょう。それでも、国が残る可能性があるなら、より被害が少なく出来るのなら。



 「神聖国の皆様、これはサーシャ様が身罷られたさいにご自身の胸を貫かれた刃物にございます」


 そう言って掲げたのはあの日の咒をかけられたナイフですわ。

 

 「両国の安寧のためにどうか争いをお止めになってくださりますよう」


 私はそう言うとナイフを胸に突き立てました。


 両国の指揮官が慌てたようにこちらへと来ますが、間抜けですわね。

 神聖国は大義を失いますし、我が国も二人もの女性が国の安寧のために命を散らしたのです。

 武力による革命やその鎮圧はやりにくくなるでしょうと期待したいですわね。是非とも対話を尽くして新たな国つくりをして欲しいですわ。




 目が覚めたのは幕舎の中のようでしたわ。


 「私は死んだのではなくて」


 それに答えたのは立太子された第1王子のバドルアード殿下でしたわ。


 「死なれては困る。貴女にはこれから我が国を導いて貰うのだ」


 意味が解らずに硬直しておりますとバドルアード殿下は全てを説明して下さいました。


 奇跡的に一命をとり止めた私はこの幕舎にて魔法医療士の手により一週間ほど処置を続けて戴いたのだというのです。

 バドルアード殿下は国内の混乱の原因であると陛下を隠居させ幽閉し、簡易の戴冠式もそこそこに神聖国の挙兵を知り、段取りを組んで戦地へと赴いて和平交渉を執り行う為の移動中に私の暴挙を知ったそうですわ。

 ですが、この私の行動を内外に広く利用しつつも、王命として「絶対に死なせるな」と発したそうで。


 「なぜ、死なせるなと」


 「当たり前でしょう。両国の平和を願い命を犠牲にしようとした聖女です。今や貴女の人気は我が国だけでなく、神聖国でも高まっていますよ。反対に事実と異なる悪女の風評を流した神聖国教会や法皇への批判は高まっているようで、無事に停戦交渉が出来そうですし、革命勢力とも話がつきそうです」


 どうやら、バドルアード殿下は既にバドルアード陛下となっていらしたようですわね。


 悪女と呼んでいた女性が自ら自害してまで、和平を願った姿は神聖国軍の兵士たちに強い疑心を生んだようで、バドルアード陛下腹心の間諜たちにより、神聖国内でもこの出来事を触れ回ったそう。


 国内でも、「聖女を死に追いやるほどに対立を深めていてはいけない」と同じく触れ回ったそうで。


 「なぜ、聖女なのですか」


 「それはプロパガンダする上で肩書きは仰々しい方が良いですし、そもそも、貴女は聖女のような素晴らしい女性ですから」


 何とも返せずに気まずい感じとなったのですわ。


 


 その後、神聖国とは停戦合意し、また勇者様関連に加えて聖女関連も合わせ再度同盟が組まれましたが、聖女って何すればいいんですの。


 バドルアード陛下は交渉を巧みにこなして、無事に革命派を纏めあげて市民議会を作りあげ、権威として君臨し、外交交渉は行うけれど、国内政治に関しては議会に任せることにされたとか。



 「私とこの国のために歩んで欲しい」


 そう仰有いました陛下に妃として迎えられ、私はまだこの国に尽くして行きますわ。






 

感想お待ちしてますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 なるほど、そういうことだったのですね。  戦場でヒロインが自決を図ると知らされた上で読みに来ましたが、まさかこんな展開だったとは…。  正直、ナメてました。将軍かなんかとして出陣して窮地に陥った末に…
[気になる点] 『シメノラーメン』 ――いや、『締めの』は種類じゃないよ!? [一言] ――話外の話になってしまいますが、諸々考えると、サーシャ様って確かに「勇者の子孫(ひ孫)」ですけど、別に「唯…
[一言] 最初は恋に狂った王子がよく考えずに暴走して怒られる話かと思ったら、一人の女性の深い後悔と奮起の話になるとは。 なぜ王子は立派な母親がいたのにこんな考えなしに育ってしまったのか……考えなしに下…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ