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2人の能力

俺は文章が下手だということが分かった

「よし、じゃあ強化手術の効果を見ていこうか。」


俺と大空と若菜、それに犬スタッフ2人が並び、博士がその前で話し始める。


「基本的に律くんと若菜くん、大空は皆異なる能力だ。大空はすでに経験者だが、ほかの二人は今日が初めてで、うまくいかないこともあるだろう。しかし今その能力を使えるのは君たちしかいないため、我々やほかの人物に教えを乞うことはできない。少しばかり助言できることもあるだろうが、基本的には君たち自身だけが頼りだ。そこは理解しておいてくれ。」


大空は大きくうなずき、俺と若菜は突然の神妙な空気に息をのむ。先ほどまでのお姫様抱っこではしゃいでいた空気とはまるで別物で、冗談じみていた話が急に現実に近づいていくのを感じた。


「ということで、まずは見本の意味も込めて大空から行ってみようか!二人とも危ないから離れて!」


言われるがまま、大空とスタッフから離れるように博士についていく。スタッフはどうやら用意していたらしいボクシングのキックミットを、大空にむけて構えた。


「始まるよ、目をそらさないようにね。」


大空を見ると、どうやら準備体操をしているようだ。


「それじゃあいくぞ!」


そう叫んだ瞬間、大空の肉体の変化が始まった。全身の肌から茶色の体毛が生え、腕や足は筋肉が盛り上がるほど太く、足に至ってはネコ科動物の後ろ足のようになり、骨格ごと変わっているようにも見える。爪も長く鋭くなり、全身が獣のようになっていた。


「まだまだだ、みてろよ!」


そういいながらこちらを指さすと、来ていた上着を脱ぎだす。先ほどまでは服で隠れていた部分からも茶色の体毛が現れ、そこからさらに鳥の羽のようなものが出現した。


その翼を大きく羽ばたかせ、空中へと大きく舞い上がる。翼の羽ばたきによって起こった風で、俺たちも吹き飛ばされそうになった。


「そしてこれが、俺の必殺・ゴッドライオンサンダーバードアタックだ!!!」


翼を折りたたみ、急降下するすさまじい速度はそのままで、スタッフが2人がかりで固定するキックミットに蹴りを入れる。


おそらく変身?によって大幅に増えたであろう体重と純粋な速度によって生み出された極大の運動エネルギーが伝わり、あの力自慢のような2人が大きく吹き飛ばされていった。


大空はそれを満足げに眺めると、これ以上ないというくらいのどや顔を決め、こちらへゆっくりと飛んでくる。それでも起こる風圧に耐えながら待つと、


「俺様を崇め奉れ。」


そう一言だけ言い、その場にパタリと倒れ込んだ。


「ということで、大空の能力『獣化』でした~!基本は動物の肉体を再現して戦う能力だね!さっきみたいに飛べたりもするけど体力使いすぎてすぐこうなるのが欠点かな!では一同、拍手!」


「えぇぇぇぇ?!?!?!」


俺が叫び、若菜が口をポカンと開けて立ち尽くし、吹っ飛ばされたスタッフ二人は健気に拍手していた。


「手術ってこんな、その、ガチなやつなの?!もう人間じゃなくない?!大丈夫?!これ大丈夫なやつ?!」


「大丈夫だって。大空を見てみなさい、あんなに気持ちよさそうに眠って、、、というより、人間のままだったらあんな怪物ども相手に勝てるわけないでしょうよ!」


「いやたしかにそうだけど、、、いや、なんかもっと、こうさ、、、」


「そのうち慣れる慣れる!私はそれよりも二人の能力を見たいんだ!大空のは正直もう見慣れてたしね!ほら、次は若菜くん!」


「え、私?」


大空のを見て呆然していたが、名前を呼ばれてやっと帰ってきたようだ。


「そうそう、さっき大空がたってたところまで行ってみて!」


まだ訳が分からない、といった顔だったが、言われるがままに移動する。


「本当は大空にコツとか教えてもらおうって思ってたんだけど、、、 とりあえず、自分の力の源が心臓にあるって考えて、そこに意識を集中させてみて!」


「こ、こう、、、?」


「う~ん、ちがう!もっとこう、なんか、頑張るぞ!って感じ!」


「頑張るぞ、、、?こう、、、?」


「いやなんか違うんだよな、、、」


要領の得ないやり取りを繰り返す、博士と若菜。若菜なんていろいろやりすぎてめっちゃ重いものに押しつぶされそうになってる人みたいな体制になっている。なんだそれ。


「あぁ、もう!わかんない!!」


あまりに適当な博士の説明に我慢の限界を迎え、匙を投げだす若菜。


「そう、それ!」


へ?という間抜けな声とともに若菜の髪が銀髪へと染め上がっていく。なんだかんだ、若菜も変身を成功させたらしい。


「天才!若菜くん天才だね!正直今日1日はつぶれると思ってたよ!」


能力発言の成功を喜ぶ博士に対して、若菜はどこか安心したような表情を見せる。全身から毛が生えるとかじゃなくてよかったね。


「で、博士、私はなにができるの?」


「当然の質問だね。君の能力はズバリ、『治癒』!自分の傷も他人の傷も素早く治せる!サポート系のようにも思えるが、常時火事場の馬鹿力状態に加え、能力獲得による身体強化で、純粋な力勝負ならおそらくこの中でも一番上!かも!」


「まぁ俺様のゴッドライオンサンダーバードアタックには敵わないだろうがな!」


いつの間に目覚めていたのか、大空がヤジを飛ばしてくる。ただし体は横になったままだ。まだ体を起こすほどの体力は回復していないらしい。


「まぁまぁ、とりあえずその状態でミットを攻撃してごらん。」


すでに準備が完了している犬スタッフ二人を指す。異次元の力に吹っ飛ばされても起き上がり、トップのために忠実に働くまさに犬のような二人だ。


最初は少しうざいなんて思ったりもしたが、もう今はかわいいなんて思ったりもする。これから殴られるわけだが。そう思うと少しかわいそうだな、なんて職場環境か。


そんなことを考えているうちに、いつの間にか2人が若菜の蹴りによって吹き飛ばされていた。大空の必殺ナントカにはさすがに及ばないものの、明らかに人間業ではない。


しかも、若菜は2人を蹴飛ばした後にすぐ駆け寄り、謎の光で一人ずつ傷を治していった。


「イエェーイ!若菜くんも完璧な仕上がり、最高!!このパワーに加えて回復もするっていうんだからやっぱすごい、、、」 


博士ははしゃいでいたが、あの光はもう魔法とかそういう類だろ、と思った。この技術売ればいくらの値が付くんだ、というより生活が激変しそうである。


2人を直して戻ってきた若葉も、大空と同様にとても疲れているようだった。倒れることこそしなかったものの、戻って変身を解くや否やその場に座り込む。まぁあんな魔法使ったら疲れるか。


「あの治す奴すごい疲れる、、、一気に体力持ってかれる感じだった、、、」


「大きな力には大きな代償が、的なやつさ多分!私としてはそれが可能ということが分かっただけで全部OK!初回の成果としては十分すぎる出来だよ!」


そうして若菜から視線を外し、こちらへ向きなおす。


「最後は律君だよ。」


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