手術後
「知らない天井だ、」
そう、知らない天井である。いつの間にか知らない部屋のベッドで寝ていたらしい。体を起こすと犬マスクが戸を開けて出ていくのが分かったので、あの地下帝国のどこかだということは分かった。
服がなんか変なのに変わっているし、この前後の記憶もあまりないので、状況が全く分からない。たしか、変な映像を見せられていた気がするんだが。
「ご気分いかがですか~?」
犬が知らせたのか、いつもと変わらず陽気なテンションで博士が部屋に入ってくる。
「気分は特に普通だけど、、、俺何でこんな所で寝てるの?」
「ほうほう、体調は安定、しかし施術前後の記憶があいまい、と。」
質問の答えは返ってこず、手に持っていたタブレットに何かを打ち込んでいるようだ。
「え、施術って言った?」
「覚えてない?『何もできないと諦めていた自分に、別れを告げる、、、!』とかノリノリで言ってたのに。」
ちょっと待ってくれ、そんな痛い中二病発言なんてした覚えは、、、あるな。変なビデオにたきつけられて勢いそのままにそんなこと言ってたような気がしなくもない。そしてそれに付随していろいろ記憶がよみがえってくる。
「もしかしてコレ、改造手術とかだったりする?」
「そうそう、だんだん記憶戻ってきたね~。生身じゃどうあっても勝てないから、怪物のコアそのものを取り込んで、こっちも怪物の能力を手に入れちゃおう!ってやつ。」
なるほど、つまり俺はあれか。その場の勢いにのまれて自分の体をこのマッドサイエンティストの好きにいじらせた挙句、怪物の一部を入れられて人間すら卒業してしまったと。自分に酔ったって言っても悪酔いのレベルじゃないだろコレ。
「まぁまぁ、そんなに落ち込まないでよ!見た目が怪物になったとかじゃないんだしさ!それよりもほら、そろそろ若菜くんも起きるころだろうから、自分がどんなに強くなったか確認してみない?」
「強くなってるの?そんな感じ全くしないけど。」
「なってるなってる!とりあえず、私は若菜くんを迎えに行ってくるから先に向かってて!すぐ行くから!」
そういうや否や博士は毎度ご苦労な犬スタッフを呼び出し、俺をお姫様抱っこさせる。自分で歩けると抵抗するものの、声が聞こえていないのか問答無用でそのまま担がれ続け、17歳の男子高校生をお姫様抱っこする犬の被り物をした大人という珍妙な光景が爆誕した。
そして、到着したのは真っ白で、ただ広いだけの何もない部屋。家具も機器も何もない。
「あっはっはっは!なんだそれお前、律!お姫様抱っこって!何歳だよ!www」
部屋に高らかな笑い声が響き渡る。首を回して笑い声がする方を見てみると、そこにはあぐらをかいて地べたに座り込む、大空の姿があった。
「あっはっは、いや、こんな笑ったの久しぶりだぜ。とりあえず、お前、絶対律を下ろすなよ。」
大空がそういうと、犬スタッフの俺を抱き込む力が少し強くなる。
「はっ?!おいやめろ下ろせ恥ずかしい!」
「無理無理、そいつらは俺と博士の言うことしか聞かないし、そいつは普段すっと筋トレばっかりやってるからな、力じゃかないっこねぇよ!」
そしてまた大空が高らかに笑う。最初は健気に抵抗していた俺だったが、結局若菜がお姫様で連れてこられるまでされるがままとなっていた。でももうそのころには大空も飽きて独り指相撲をしてました。それなら降ろしてほしかったです。
どのくらいの文章量が適切なんでしょうか。