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クマとネズミと森の国

作者: 三輪 草舟

子供さんから、それなりの御年の方にも楽しんで頂ければ嬉しいです。

 むかし、むかし、


とある国の、とある森に一匹のクマがおった。

 そのクマはたいそう乱暴者で、毎日わるさをしておった。

 おとといはカワウソの魚を取り上げ、昨日はサルから木の実を奪い、今日はハチの巣を壊して幼虫を取って食べていた。

 力自慢のオオカミがクマに戦いを挑んだが、あっさり負けてしまった。

 そこでオオカミが森の動物たちを集めて、クマをやっつける作戦会議を開いた。

 集まったメンバーは、

 勇気があって利口なハチくん。

 巣を壊されて一人ぼっちになってしまい、クマをにくんでいた。

 そしてお調子者のサル、お人よしのカワウソ、体が小さく力の弱いねずみが集まった。


オオカミがこう言った。

「今日集まってもらったのは、あの乱暴者のクマのことだ。

 みんなも、あのクマにはひどい目に合わされているだろう。

 みんなでクマをやっつけにいこうじゃないか!!」


オオカミがそう言うと、みんなが賛成した。


「それじゃあハチくん。

 君には針がある。

 クマを針でさしてくれ。」


 すると、ハチは、


 「クマの毛皮は厚くて、針が届かない。さしてもダメ ブン。」

  

 と答えた。


 するとオオカミは、


 「じゃあ、クマの目を狙って刺せばいいじゃないか。

 いくらクマでも目を刺されたら、痛いだろう。」


 「そうか、さすがオオカミさんだ ブーン。」

 

 とハチが言ったので、みんなは、いっせいに、


 「おお~~」と感心した。

 

 みんなに褒められたオオカミは、とくいになって、

 

 「つぎに、サルくん。

 クマが、ハチくんに刺されて、いたがったら、爪でクマの顔をひっかくんだ。」


 すると、サルは、


 「わかった ウッキー。」と調子よく、答えた。


 オオカミはもっと、とくいになって、

 

 「そして、カワウソくん、きみには水かきがあるから、それでクマの顔をひっぱたいてやれ。」


 と言われたので、カワウソは、

 

 「う・う・う・うん。わ・わ・わ・わかった。」


 と、おどおどしながら答えました。


 その時、ねずみが、手を上げて言いました。


 「オオカミさん。僕は何をしたらいいの?」


 オオカミはねずみをチラッと見ると、


 「ねずみくんは体が小さいし、力も弱いから、後ろで俺たちが戦うところを見ていてくれよ。」


 と言ったので、心配だったけど、


 「わかったよ。後ろで見ているよ。」


 と、ねずみは答えました。


 オオカミは、みんなにむかって、

 

 それじゃあみんな、さっそくクマをやっつけに、いこう。えいえい、おー!!!」


 と言ったので、


 「えいえいおーーお!!!!!」

 

 とみんなも、言いました。


 ところが、その様子をクマのスパイのハムスターがこっそり見ていたのです。


 ハムスターは、急いでクマのところに行きました。


 クマはちょうど、ハチの幼虫を食べていました。


 「クマさん、たいへんです。

 森の連中がオオカミを大将にして、クマさんをやっつけにきます。」


 それを聞いたクマは、ほおばっていたハチの幼虫をごくりと飲み込むと、


 「なまいきな、全員かえりうちにしてくれるわ。!!!」


 と、大きな声で言いました。


 そこに、オオカミがハチとサルとカワウソを連れてやって来ました。

 

 ハムスターはあわてて、隠れました。


 オオカミが、


 「やい、クマ!!、この前はよくもやってくれたな。

 今日はお前にひどい目にあわされたみんなで、仕返しにきたぞ。

 覚悟しろ。」


 するとクマが笑って言いました。


 「は、は、は、は、は、一人ではかなわないから、大勢でやってきたか。

 返り討ちにしてやる。

 かかってこい。」


 と言ったので、オオカミの、


 「かかれーっ!!!!」


 と言う号令を合図に、みんないっせいにクマに向かっていきました。


 ハチが作戦どおりにクマの目をねらって、ものすごいスピードで、飛んで行きました。


 「クマめ、覚悟しろ ブオーン!」


 ハチの針がクマの目に刺さったと誰もが思った瞬間、カチンと音がして、ハチの針が跳ね返されました。


 なんと、いつの間にか、クマは目にサングラスをしていたのです。


 作戦を聞いたハムスターがこっそりクマにわたしていたのです。


 「どうだ、これなら目はねらえないだろう。」


 クマが言いました。


 「さあ、かかって来いっ!!!!」


 オオカミが噛み付き、サルがひっかきますが、クマの毛皮は分厚くてキバもツメも効きません。


 カワウソは困って、クマのまわりを、グルグル回るだけです。


 サルは、戦うのをあきらめて、逃げてしまいました。


 「うおおおおおっ!!!!!」


 オオカミがさけびながら、クマの足に噛み付こうとしましたが、とクマに蹴飛ばされて、森の外まで飛んでいってしまいました。


 ねずみは、その様子を木の陰から見ていました。


 「ちからまかせに戦うだけで、みんなバラバラだ。これじゃあ、クマには勝てないよ。」


 そういって、オオカミを探して走って行きました。


 一方、オオカミは、

 

 「いててて、あのクマ野郎ぉ」


 森のはずれで、クマに蹴飛ばされた顔を抱えて痛がっていました。


 「もう、コリゴリだ。二度とクマとは戦わないぞ。」


 そう言いながら、薬草を傷口に当てているところへねずみがやってきました。


 「オオカミさん、大丈夫ですか?」


 ネズミが言うとオオカミが、


 「だいじょうぶじゃない。

 顔がへこんで、キバが折れちまった。

 ハチが目を刺す作戦もつうじなかった。

 悔しいが、クマにはどうやっても勝てそうにない。」


 と答えました。


 しかし、ネズミは、


 「それは、ちがいます。

 さっき見ていたけど、みんながバラバラに攻撃していました。

 あれじゃあ、みんなで戦う意味がありません。

 もう一度、戦いましょう。

 ボクに良い作戦があります。」


 オオカミは本当は戦いたくなかったけど、クマに負けたと思われるのがいやだったので、


 「わかった、ネズミくんがそう言うのなら、もう一度、戦ってやろう。

 さっそく、みんなを集めよう。」

 

 ネズミが、


 「オオカミさん、今度はボクがみんなに連絡します。

 作戦をほかの動物に聞かれて、クマに知られたらたいへんです。」


 そう言って、ネズミは、森のみんなを集めました。


 森の広場に、ハチとサルとカワウソ、そしてネズミが集まりました。


 オオカミは、いばって言いました。


 「みんな、この前の戦いではごくろうだった。

 残念ながら、クマに負けてしまった。

 だが、このままではクマに森をのっとられてしまう。

 そこで、もう一度作戦をたてて、クマと戦おうと思って、みんなに集まってもらった。」


 カワウソが、


 「そ・そ・そ それは、どんな、作戦なの?」


 と、おそるおそる聞きました。


 サルが、


 「もぅ、この前みたいに負けたりしないのか、キー。」


 自分はにげだしたくせに、ちょっぴり、怒っていいました。


 オオカミが、

 

 まかせておけ、今度の作戦はかんぺきだ。」


 

 「「「それは、どんな作戦なの?」」」

 

 他のみんなが、言いました。

 

 「そ、それは、これからネズミ君がはなす。みんな、ちゃんと聞くように」


 みんなは、


 「なんだ、ネズミ君の作戦か。

 ほんとに、だいじょうぶなのかな。」


 と思いましたが、みんなクマを、やっつけたかったので、聞くことにしました。


 ネズミが、


 「まず、ハチ君、きみは、夕方クマが帰ってくる前に家に忍び込んで、窓のカーテンの裏にかくれていてくれ。

 クマは帰ってきたら、洗面台で顔をあらう。

 そのときにクマを怒らせるんだ。」


 ハチは、


 「なぜ、クマが帰ってきたら、顔を洗うのがわかるんだっ、ブン!!」


 と言ったので、ネズミが、


 「ぼくは、あの戦いのあと、ずっとクマの家に忍び込んで、クマの事を観察していたんだ。

 クマは用心深いけど、この時だけは油断している。

 そこを、狙うんだ。」


 みんなは、ネズミをちょっとバカにしていましたが、これを聞いて感心しました。


 ハチが、


 「どうやって、おこらせるんだ、ブンブン。」


 と聞いたので、


 「カーテンの裏からクマを呼んで、こちらを振り向かせるんだ。

 クマが振り向いたらクマの鼻を刺すんだ。

 鼻はやわらかいから、針でさせるだろう。」


 ハチが、


 「隠れるのはカーテンの裏じゃなきゃダメなの、ブンブブン。」


 と聞いたので、ネズミが、


 「カーテンの裏じゃなきゃだめなんだ。

 クマがおこったら、それ以上攻撃はしなくていいよ。

 クマを、家の外のカヤの草むらまでおびき出して。 

 この役目はハチ君じゃなきゃだめなんだ。」


 ハチは、


 「わかったブーン。」


 と答えました。


 次にネズミがサルに言いました。


 「サル君は草むらのそばの森に隠れて、クマが草むらの中に入ったら、いっせいに草に火をつけるんだ。

 でも、川の前だけは火をつけないで。」


 サルが、

 

 「なぜ、川の前だけ火をつけないんだ。

 クマが川の中に逃げちゃうだろう。」


 するとネズミが、


 「逃げ場がなくなったら、やけになったクマが君たちにおそいかかるかしれないよ。

 それに火をつけるのはクマを弱らせるためなんだ。

 川に誘いこんでやっつけるためなんだ。」


 と言ったので、サルは、

 

 「わかった!!キッキー」と答えました。


 ネズミが、


 「カワウソくんは、川の上流にダムを作って、水をせき止めて。

 クマが入れるように、川の水を少なくしておくんだ。」


 カワウソはちょっとおどおどしましたが、


 「うん。わかった。」とちゃんと、返事をしました。

 

 最後にネズミはオオカミに、


 「オオカミさんは、ぼくと一緒に川の土手でクマがあがってくるのを待ちましょう。

 クマが弱ってあがってきたところに、とどめをさすんです。」


 最後のかっこいい役なのでオオカミはよろこんで、


 「ようし、わかった。まかせとけ ワオーン。」と、はりきって言いました。


 「クマをやっつけに行くのは天気のいい明日の夕方だ。

 みんな、この作戦のことは、ほかの動物にしゃべったらダメだよ。

 自分の役割をきちんとはたせば、かならずクマに勝てるからね。」


 ネズミがそう言ってみんなを勇気ずけました。


 みんなは、「よーし、やるぞ。おー!!!!!!!!」


 みんな、前よりも、もっとやる気をだしてさけびました。


 ところが、どこで知ったのかこの作戦会議を、またまた、ハムスターが聞いていたのでした。

 でもなぜか、このことをクマに知らせないで、森の外に出て行ってしまいました。


 次の日、


 ハチはクマの家に忍び込んで、カーテンの裏に隠れました。

 サルは、種火を持って森に隠れました。

 カワウソは朝からダムを作り、川の水をせき止めました。


 夕方になって、クマが帰ってきました。

 用心深いクマはサングラスをかけています。

 家の中に入ってきたクマが窓の近くにやって来ました。

 ハチはこわかったけど、じっと動かずに、クマが行くまで我慢していました。

 クマは洗面台の前にいくと、サングラスをはずして、顔を洗いはじめました。

 

 そのときです、ハチがカーテンの裏から、クマに向かってさけびました。


 「おい、クマやろう!!」


 クマが窓の方に向かって振り向きましたが、夕日が窓からさしこんで何も見えません。


 「いまだ!」

 

 ハチが、すばやく飛んでいって、クマの鼻をブスッ!と刺しました。


 クマは、


 「いたたたたたたた!!!!!」

 鼻を押さえて痛がりました。


 ハチが


 「のろまのクマちゃん、ここまでおいで ブッブブーン」

 と言いながら、ドアを開けて家の外に出て行ったのでクマが、


「待てえー!」


 と、はれあがった鼻をおさえながら、家から走り出てきました。

 ハチがカヤの草むらの真ん中までクマをおびき出し、空高く飛び上がった瞬間、森から躍り出たサルたちがいっせいに、草に火をつけました。

 カラカラに乾いていたカヤは火がつくと、ものすごい勢いで燃え広がります。


「アッチー、アチチチチ、助けてくれえー。」


 クマは火に焼かれ、煙にまかれながら必死に逃げます。

 サルたちは火の外からクマに向かって石を投げます。

 それを遠くから見ていたオオカミは、


 「もう、我慢できない。俺も行って戦う。」


 クマの方に行こうとしました。

 ネズミは今、オオカミに行かれると作戦がぶち壊しになるので、


「オオカミさん、あなたはクマが上がってきた時にクマをたたきのめしてください。

 そうすれば、みんな、あなたのことをカッコいいと思いますよ。」


 と言ったので、


 「そうか、それじゃあそうしよう。」

 

 と言って、そこから動くのをやめました。


 クマは、火と煙から逃げ回っていましたが、


「こうなったら、やけくそだ。

 焼かれてもいいから火に突っ込んで行って、サルどもをやっつけてやる。」


 そう思って、サルの方をみると火が燃えていない所があります。

 クマは火がついていない方に必死に走って行きました。


 その向こうには、川が見えます。

 水は少なく、川の底が見えています。


 「しめた。」


 クマは川に飛び込みました。

 ジュッジューと音がしてクマの毛についていた火がやっと消えました。


 「ふうー。」


 クマが一息ついて、安心した瞬間、


 「ワオーン」


 オオカミの声がひびきました。

 ネズミがカワウソに送った合図だったのです。


「合図だ、それー!」


 カワウソがありったけの力をふりしぼって、ダムを壊しました。

 ダムにたまっていた水が、ものすごい勢いでクマに向かって流れ出します。


 「うわっ、わー アップアップ。」


 クマは、おぼれそうになりながら、水に流されていきます。

 火に焼かれ、水に流され、さんざんな目にあったクマは、やっとの思い、川の岸にはいあがりました。


そこに、


 「よく、あがってきたなあぁ、ふっふっふっふっふ。」


 オオカミが指をボキボキならしながらクマの前に立っていました。


 「よくも今までやってくれたな。たっぷりしかえしをしてやる。」


 クマは、


 「ひえええええええ、たすけてー」


 と言いながらにげまわりました。

 戦う気がなくなったクマをオオカミはさんざんにうちのめしました。

 そこに、みんなが集まってきました。


 オオカミが、


 「みんな、勝ったぞ。俺たちの勝利だっ!!!」


みんなは、


 「ばんざーい、ばんざーい」


 と喜びました。


 オオカミが、


 「みんな、このクマをどうする。」


 と聞いたので、ハチくんが、


 「こんな悪いクマは殺してしまえばいいんだ。」


 と言ましいたが、ネズミが、


 「みんな、ゆるしてあげようよ。

 もう悪いことをしても、みんなで戦えば勝てることがわかっただろう。

 クマさんを殺しても、なんにもならないよ。

 クマさん、もう悪いことはしないよね。」


と言ったのでクマは、


 「ごめんなさい。もう悪いことはしないからゆるして。」


 とみんなに、あやまりました。


 みんなは、


「クマさんもあやまっているし、ネズミくんがゆるしてあげようって言ってるから許してあげよう。」


とクマをゆるしました。


 クマは、


 「みんな、ありがとう。」


 と言ってみんなにお礼を言いました。


 それから、クマはすっかり改心してみんなの仕事を手伝いました。

 ハチの巣を直して、サルに木の実を採ってあげて、カワウソには魚を取るワナを作ってあげました。

 ネズミはみんなから、すっかり信用されて、森の相談役になりました。

 オオカミは森の警察官になって、まいにち森を見回りました。

 森は、他の動物たちもいっぱいやってきて、大きな森の国になりました。

 森の国のみんなは、仲良く、助け合って幸せに暮らしました。

 めでたし、めでたし。


 でも、東の魔法の国に行ったハムスターが、森の国をのっとろうと悪巧みをしていたのです。

 この後、森の国は、どうなっていくのでしょうか・・・。


 

 


 


 

 


 



 


 


 


 

 

 


 


 

 

 


 


 

 

 


 


 

 

 


 



 


 

 

 


 



 


 

 


 


 

 


 


 

 


 


 

 


 


 

 


 


 

 

 



 


 

 

 

 



 


 

 


 



 

 

 


 



 

 

 

 



 

 


 

 

 



 



 


 



 



 


 

 

 


 


 

 

 

 


 


 



 



 


 


 


 

 

 



 


 


 

 

 

 

 

 


 

 

 

 


 


 

 



 

 

 

 










 

 

 

楽しんで頂けましたか?

初投稿で緊張しました。

機会があれば、また、投稿したいです。

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