曲がり角とおた男子
澄んだ空、きらめく太陽。いつも通りの日々を過ごしていく。
だがこの男は違う。
クラスで"やばきもおた"と呼ばれているほどアニメオタクの霧山雅紀。雅紀の頭の中は毎日妄想を繰り広げている。俺が魔法を使えたら…俺が剣で世界を救ったら…。現実では有り得ないことばかりだ。
そんな雅紀が想いを寄せている人物がいる。雅紀の幼なじみで運動神経抜群の明星梨花。やばきもおたの雅紀は愛を伝える勇気がある。だが毎回避けられる。
雅紀が考えた愛の伝え方は…。
「アニメによくあるシチュエーションを再現すればいいんだ!」
おた男子の奮闘が始まる。
------------------------------------------------
今日のシチュエーションは…
(アイツが学校行く時の道に塀が高くついている曲がり角があったはず…。)
なんとなく予想はついただろうか?
ラブコメによくある曲がり角で曲がろうとした時相手に気づかず相手とぶつかるを再現しようとしている。
筆者が言うのもなんだが
"怪我しても知らないぞ"
「アイツはいつも8時~8時10分のうちに曲がり角を曲がる。その時間帯を狙えば…きっといけるぞ…!」
学校が始まる時間は8時半。時間には余裕を持つタイプだ。
きっと会えると信じ塀の高い曲がり角に向かう。
曲がり角到着。鞄をグッと持ち曲がり角から梨花が来る方向を除いてみると…。
「いた!!今日は走ってやがる…。」
ジョギング程度にこちらに向かって走っている梨花の姿が見えた。もうすぐ曲がり角に到着する。
「アイツがちょうど曲がるタイミングで出よう。そうすれば絶対にあのシチュエーションを再現できる!!」
もう1回除くとすぐそこまで来ていた。やばいと慌てて雅紀が前へ出ると…。
タンッ
(は!?!?)
梨花は雅紀を避けるように飛んだ。
(こいつ…!俺の上を背面跳びで超えやがった…!!)
背面跳びとは走り高跳びで使われる技の1種だ。雅紀が出てきたことを瞬時に確認し背面跳び飛びで飛び側転をしてまた走り出した。急なことに驚いた雅紀。思わず声が溢れ出てしまった。
「おまっ!?!?」
わかっていたことだがやはり避けられてしまう。読者のみなさんはわかっていることだろう。これがこの小説のやり方なのだ。
「雅紀、まだシチュエーションの再現ごっこ続けてたんだね。雅紀の鞄少しだけ見えてたけど?」
「はーーーー!?!?!?おまっふざけんなっ!?」
「ふざけてるのは雅紀の方でしょー?んもー!ちゃんと真正面から告りなさいよ!」
梨花は雅紀が自分に想いを寄せていることを知っていながらこのシチュエーションゲームを楽しんでいた。
「これもいいけどちゃんと勉強しなさいよ?それじゃ私急いでるから、じゃね〜!遅刻!しないようにね✩」
「は?遅刻?」
そう言って時計を見てみるとまだ8時5分だった。
「まだ8時5分なのに遅刻って何言ってんだお前?」
「え!?うっそぉ!!」
驚いた表情をしながら雅紀の方へ近づいてきた。そして自分の時計と雅紀の時計を見比べて
「あれ!?20分もズレてる!?」
「いや、何言ってんだよ?15分だろ?ほら今は8時5分だけどお前の時計は8時20分。お前ほんとバカだよな?」
言わなくても分かるだろうが見ての通り梨花は頭が悪い。九九もまともに覚えていない。天然と言った方が良いのか頭が悪いと言った方が良いのかもわからないほどに頭が悪い。毎回テストは赤点だ。
「あはは!!いっけなぁい!!」
「笑い事じゃねぇよ。ちゃんとそんぐらいはわかれよな。お前ほんとに義務教育受けてきたのかよ…。」
「まぁいいじゃんいいじゃん!!あ、学校行かなきゃ…!ほら!雅紀行くよ!!」
呆れた。さすがに頭が悪すぎる。天然すぎる。ポジティブすぎる。
「はいはい。」
自分で書いててなんだが
"この小説って小説と言っていいのだろうか…"
まだ雅紀の戦いは続く。