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序章
友人を待っている
校門についてからリュックを忘れたことに気づく、ちょっと抜けた友人を。
「ひおり遅いね。先に駅着きそう」
「連絡入れて待とう。そのうち来るでしょ」
「言ってたクレープって駅向こうの?」
「たしかそう。ジェラートもあるって言ってたやつでしょ」
メッセージを送る。既読はつかない。
どちらも少し上の空でたわいない話を繰り返す。真ん中にひおりがいない会話は、やっぱりどこか空回り物足りない。
じりじりと照る陽は少しずつ沈んでいく。ぽつぽつと放たれる言葉の応酬はまだ続いていた。同じ制服でごった返していたはずの駅が少し静まって今はもうスーツが目立つ。明かりがひとつふたつと灯って、電車がまたホームから滑っていく。
友人を待っている。
私たちはその日、暖かい陽だまりのようなあの子をずっと待っていた。