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第88話 開会!アコンダリア武闘会!

 あれからノエちんオープニングライブは終わり、タクマとメア、吾郎は楽屋へノエルを迎えに行った。その間、おタツとリュウヤは出店のちょっとした準備と、ライバル屋台の店主に挨拶をしに行っていた。


「スシ?よく分からんけど、お互い頑張ろうな」

「はい!よろしくです!」


 リュウヤはカレー屋の店主と握手を交わし、ちょっとした準備に入った。するとその時、目の前で暖簾がめくられ、奥からフードの男が現れた。


「おい兄ちゃん、ここは何を出してんだ?」

「へいらっしゃい!ウチではこんなの出してるよ!」


 リュウヤはそう言い、サーモン寿司が二つ乗った皿をやってきた男に出した。

 だが、そのフードの中から見えた艶の良い見覚えのある紙を見て、一瞬体が硬直する。


「どうした?俺が怖いか?」

「い、いえいえ。お客様は神様ですから、恐るだなんてあり得ません。アハハ……」


 心の底では耐え難いくらい怖がっているが、客を怖がっては飯屋は務まらない。そう自分に言い聞かせ、震えを我慢してサーモンを置いた。

 ヤツはあの時、大和に現れたあの男。そう気付いた以上、何をされる分からない。リュウヤは密かに警戒しながら、客席側から見えない位置で手を組んでは外してを繰り返す。

 そうしていると男は「なかなかやるじゃねぇか」と言い残し、目の前に1000ゼルン分の金貨を置いて、皿を持って消えていった。


「あの人、何か見覚えがあるでありんすなぁ……」

「だよな。やっぱり……」


 しかし、リュウヤが考えようとする時間を与える気が無いのか、悪いタイミングで「出場者は北ホール側の選手待合室にお急ぎください」とアナウンスが流れた。

 リュウヤはおタツに「急ぐぞ」と伝え、一緒に待合室へ向かっていった。


「さてと、俺も」


 そして、オニキスも2個目の寿司を口に入れ、リュウヤの跡を付いて行く。



【待合室】

 待合室の扉を開くと、そこには幼い獣人の少女や、髪がボサボサで目の下にクマのあるメア以上に近寄り難い男、虎の被り物やサメの被り物をした筋肉質な男が、大きなベンチの半分を占領していた。


「やっぱり、4年に一度の大きな大会なだけはありますね。」

「クセ強すぎな奴ばかりじゃな。居るだけで気分を害しそうじゃ」

「お前が言うかオカルト姫」

「誰がオカルト姫じゃ無礼者!」

「痛い痛い!耳だけは引っ張らんで!」


 メア達3人がいつものような事をしていると、タクマの左頬に冷たい何かが当たる。

 タクマはいきなりの感覚に驚き、変な声を出す。だが、よく見ればそれはキンキンに冷えた炭酸を持ったリュウヤである事に気付き、ホッと胸を撫で下ろした。


「ゲン担ぎに良さそうなの、買ってきたぜ」

「はいこれ、メアちゃんとノエちゃんの分でありんす」

「あ、ありがとうございます」

「サンキューなのじゃ」


 メアとノエルは、おタツの抱えた瓶を二本貰い、すぐにそれを飲んだ。

 戦う前だし、大会出場も今回が初めてと言うこともあり、喉がカラカラになっていた自分達にとっては最高に丁度いい。

 タクマはリュウヤと共に乾杯し、一気に飲んだ。喉の奥にシュワシュワとした痛みとひんやりした爽快感が駆け巡る。


「ふぃ~、スッキリしたでござる。おっ、おタツ殿、一本拙者にくださらぬか?」

「あまり飲み過ぎると、歯が溶けるでありんすよ?」

「それはただの迷信でござるよ、おタツ殿」


 吾郎はハンカチで濡れた手を拭いた後、おタツから貰った炭酸を腰に手を当てて飲んだ。まさに風呂上りの牛乳を飲むような、ワイルドな飲み方だ。

 そうしていると、今度は待合室入り口とは逆方向にあった扉が開き『さぁ!選手の入場です!』と、実況の声が響き渡った。


「おっ、そろそろだな。」

「さーてと、連勝してオーブも大金もガッポするのじゃ!」

「「「「「「オーっ!」」」」」」



【闘技場 戦場】

『さぁ皆さん4年間お待たせいたしました!これより第193回、最強を決めろ!アコンダリア武闘会を開催いたします!』


 辺りに、やかましいくらいの大音量で実況の声がする。そう思いながら、タクマは今戦場に出ている屈強な男や女、何か力を秘めていそうなライバル達に目をやる。

 そうしていると、沢山の黒服達が、タクマ達出場者にリーグ表を渡した。


『実況は私クララック・ギエンと』

『この大会の主催者、ドン・チェイスだ。よろしく』

「うっひょ~、あんな高い所から見れるたぁ、羨ましいなぁ」


 リュウヤはコロッセオ北側に位置する実況席の方を見て、羨ましそうに言う。おタツも「あそこで二人だけで、見たいでありんすな」と、こっそり手を繋いで言う。

 やはり和風の夫婦コンビ。邪魔は出来ない。逆にアンタらが羨ましいわコノヤロー。

 そう思いつつ、タクマは自分がどの辺りに入っているのか、リーグ表に目を通した。


『今回この大戦に挑戦する命知らずは総勢32名16組!それが誰だかは今配られたリーグ表に記載されてるから、要チェックだぜ!』

「なんとそんなに……勝てるか自信を無くすのじゃ……」

「まぁまぁ。私達は罪源の仮面もこう、ドッカーン!と吹き飛ばせたんですから。大丈夫ニャン」


 ノエルは心配しながらリーグ表を見るメアの後ろから抱きつき、猫のように頬擦りをする。やっぱり猫化が進んでいる。絶対洗脳的な事をされたな。

 タクマはそう思い、自分は何回戦目が出番なのか見た。


「おっ、俺は第10回戦か。タクマお前は?」

「俺は……第2回戦目だな」

「けど、もし俺達全員が勝ち進んでったら、どうしても仲間同士で戦うことになるよな……」

「ですけど、そん時はお前様でも容赦はしないでありんすよ?フフフ」


 おタツは笑顔でリュウヤの首元に苦無を突き付け、息をするように呟いた。

 その間にも、実況は「それでは第1回戦!が始まります!選手の皆様は、所定の位置へお付きくださいませ」とアナウンスをした。

 そんな中、タクマは二回戦目以外のライバルの名前に一通り目を通す。

 そして、16回戦目に出ていた名前を見て、タクマに戦慄が走った。


「おいメア、ノエル。コレを見てくれ」

「なんと……そんな馬鹿な……」

「にゃんですって……」


 そう、そこには……

 オニキス・キングの名があったのだ。

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