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第84話 帰ってきた男In闘技場

【アコンダリア 闘技場前】

 タクマ達は、すぐにでもノエルを助けようと、急いで時計塔広場を抜け、武闘会会場の入り口前へと来た。

 周りには観光客達が寝泊りする用のレンガ作りのホテルのような宿屋が建っており、すぐにビーチへも遊びに行けるように、時計塔広場へと簡単に行く事ができる大きな道が、会場の入り口から伸びている。

 そして、そんな闘技場広場の中心には、ローマのコロッセオを模したような……いや、完全にそれと瓜二つの円形会場がイカれた闘いを求める人々を招き入れようと立ちつくす。


「ここがノエル殿の捕らえられている場所でござるな」

「いかにも、って感じだな。まんまコロッセオじゃんか」


 タクマは苦笑いし、頭を掻く。


「さーて、早い所突入して助けるのじゃ!」

「パパッと忍び込んでやるでありんす」


 メアとおタツは、目をメラメラと燃やし、コロッセオの大きな入り口から伸びた道を歩く。タクマとリュウヤ、吾郎は本気な目をする二人を見て笑い、二人について行く。


「にしてもデケーなこいつぁ。こんな所からノエちゃん探すと考えると骨折れるなぁ」

「そんな事言わないで、さっさと歩く!」


 思ったよりも大きな闘技場を見て、リュウヤは手を頭の後ろで組みながら言う。おタツは、苦笑いするリュウヤの襟を掴み、無理矢理連れて行く。

 

「5名様、チケットを拝借させていただきます」

「これでオッケー?」


 リュウヤは懐から5枚のチケットを取り出し、入り口を警備する黒服の男に見せた。

 男はそのチケットが偽物ではない事をしっかりと確認し、タクマ達一人ひとりに返す。


「それでは、お楽しみください」

「いざ行かん!なのじゃ!」


 メアは力強く右腕を上げ、闘技場の大きな入り口へ先陣を切って入ろうとした。

 だがその時、タクマだけ黒服に呼び止められる。


「君、ちょっと待ちたまえ」

「な、何すか?俺何も持ってないっすよ?」


 男は困惑するタクマの事は気にせず、ボディチェックをする。勿論、おかしな物は持ってきていないため、何も見つからない。

 そのためタクマは異常なしと判断され、黒服は離れていった。


「何だったんだ一体……」

「おーいタクマ、早う来ないと置いてくぞ〜!」

「ちょ、アンタらいつの間に!」



【闘技場 廊下】

「ほぉ、これはまた立派な構造でござるな」


 吾郎は初めて見る異国の建造物に興味を示し、黄色のレンガで作られた壁を触る。

 確かに、コロッセオの内装は見たことないが、しっかりとレンガが敷き詰められ、壊れるような心配性はない完璧な造りである事は、建築に対して無知であるタクマでも分かる。

 

「おっ、見ろよタクマ!飯屋まであるぞ!」

「この匂いはカレーじゃな。腹が減ってくるわい」


 メアは微かに感じるカレーの美味しそうな香りを感じ取り、腹を鳴らす。

 他にもカレー以外に、パン屋、ステーキ屋など、沢山の屋台が置いてある。

 そしてその奥には、寿司屋まで店を出していた。


「ん?寿司屋!?」


 タクマは中世っぽい屋台の中に、一つだけ寿司屋の屋台がある事に気付き、真っ先に声を上げた。

 するとその屋台から、女将姿のおタツが現れ「リュウヤさんならやりたいと言うかなと思いまして、先に準備しておりました」と小さくお辞儀をする。


「相変わらず仕事が早いのぅ」

「やはり夫婦、言葉を交わさなくても意思疎通が出来ると言うのは良い事でござるな」

「サンキューおタツ!俺も手伝うぜ!」


 リュウヤは首を鳴らし、右肩を回しながら屋台へ向かおうとした。

 だが、リュウヤは前を見ていなかったためか、誰かとぶつかる。


「イツツ……!?


 リュウヤはぶつかった人物の顔を見て、一瞬硬直する。何故なら、その目の前に、フランケンのような男が立っていたからだ。

 そのフランケンのような大男は、リュウヤの方に顔を近付ける。


「すまない……大丈夫か?」

「は、はい……」


 大男の質問に、リュウヤは震えながら答える。すると男は、次にタクマの方へ顔を向け、「久しぶり……だな」と、ゆっくり手を振った。


「ケンさん!久しぶり!」

「おぉ、ケンではないか!」


 メアは真っ先にケンのもとへ走っていき、丸太のように大きな腕に捕まる。その様子はまさに、木登りをして、大きな枝にぶら下がって遊ぶ無邪気な少女のよう。

 リュウヤは立ち上がり、楽しそうに再会を楽しむタクマに「知り合いか?」と小さく耳打ちした。


「紹介するよ。この人はアルゴの武器屋現店主のケンさんだ」

「コンゴトモ……ヨロシク」


 ケンは恐ろしい見た目からは考えもつかないほど、礼儀の正しい会釈をする。吾郎とおタツも、そんなケンに驚きつつも遅れて会釈する。

 

「拙者は吾郎、そしてこちらが……」

「ウチはおタツ、そしてこちらがウチの夫でもありタクマさんの親友のリュウヤさんでありんす」

「お前……親友居たのか……いい友……持ったな」


 ケンはぼんやりとだけ見えるリュウヤ達を見て、3人に親指を立てた。


「そういや、ケンさんはどうしてここに?」

「そうじゃ。もしかして、お主もトーナメント観戦か?」


 そう訊くと、ケンはフッフッフとゆっくり笑いながら、寿司屋の五つ右隣くらいに設けられた木の扉を指差した。

 そこをよく見てみると、『武器』と書かれた掛札が掛けられている。


「出場者の武器……直せって……チェイスに……招かれた」


 ケンはゆっくりと、タクマ達の質問に答えた。

 そして、ケンはタクマに「剣……見せてくれ」と頼み、背中からタクマの剣を引き抜く。


「これ……まだ使ってたのか……」

「師匠サンが最後に打った大事な剣なんでしょ?だったら死ぬまでずっと使わないと」


 タクマは照れくさそうにしながらも、そう言った。するとケンはタクマの両肩に手を乗せる。


「やっぱりお前……いい男だ。気に入った……強くしてやる!」

「マジで!?ありがとうケンさん!」


 ケンの話を聞き、タクマは喜び飛び上がる。するとケンは、嬉しそうに「友達も……タダで直す」と言った。


「では、お言葉に甘えて」

「ありがとねケンのおじさん」


 リュウヤ達は腰や背中にかけていた武器達を、一旦ケンに預けた。そしてタクマは、ついでに「チェイスって人、何処にいるか知ってる?」と訊く。


「チェイスさんは……ここ真っ直ぐ行って……突き当たり右の通路……だと思う」

「よし、そうと決まれば!ウチは先に向かっているでありんす」

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