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第76話 師匠兄弟リターンズ

【旅客船 404号室】

 入り口とは反対側の壁に取り付けられた小さな窓から、黄金色をした日光が差す。

 その光に打たれ、眩しさからタクマは目を覚ました。

 だがおかしい、起き上がりたくても身体が起きない。


(ま、まさか金縛り!?)


 タクマは初めての金縛りらしき現象に驚き、体を何度か捻ろうとする。

 だが、それでも身体は動かなかった。


「あ、あ、声は異常なしか。にしても重いな……」


 タクマはついさっきの驚きを利用して、無理矢理寝ぼけた頭を起動させる。そして、それにより、何かがのしかかっている事に気が付いた。

 となれば、何かが潜んでいる事になる。

 タクマはどうにかして、自分の身体に乗っているモノの正体を探る方法を考えようとした。

 だが、それを考えようとしていた次の瞬間。


「行きましゅよ〜オニキシュさん。ノエちん連続パーンチ。ぐぅ」

「ぐっ!がっ!ぶっ!べっ!ふぐぅ!」


 ノエルの謎の寝言と共に、毛布から何故か小さな足がラッシュ状で飛んできた。

 そして、その蹴りラッシュによって、タクマは打ち飛ばされる。


「どんな……夢見てんのよ……」

「うーんむにゃむにゃ……ハッ!タ、タクマさん!?」


 起きて早々、ボロボロになったタクマを見て、ノエルは飛び起きる。

 その声を聞いて、他の4人も起きた。そして、朝からとんでもない姿になっているタクマを見て、全員目が飛び出るくらい驚いた。


「た、タクマ!?大丈夫か!?」

「誰にやられたのじゃ!?」


 そう訊かれ、タクマは最大の力を出して「ダ……ダイジョウ……ブ」と言い残し、バタリと倒れてしまった。



【カフェエリア】

「ごめんなさい!私の寝相が悪いばかりに!」

「大丈夫だって。顎割れるかと思ったけど……」


 頬の辺りに白いガーゼを貼り付けたタクマは、イテテと言いながらコーヒーを口に含む。

 

「ハハッ、朝から踏んだり蹴ったりだなぁ」

「笑い事じゃないでありんすよ、お前様」

「悪い悪い」


 リュウヤはタクマの悲劇を笑いながら、緑茶を飲む。

 

「そういや吾郎爺、大食いピザはどうなったのじゃ?」

「む?あぁ、昨日のアレでござるか」


 吾郎はそう言うと、ニッと笑いながら懐から「アイズキューラ号 第21回1.5m級ピザ大食い選手権 優勝 吾郎」とこの世界の文字で書かれた賞状を見せた。

 それを見て、他の5人は驚き立ち上がる。


「ゆゆゆ、優勝ですって!?」

「1.5mって、人一人の平均的身長くらいの大きさじゃねえか!凄いなぁ」

「そんなに褒められると照れるでござるな。カッカッカ」


 吾郎は頭の後ろをかきながら笑う。

 そしてまた一つ話が終わった所で、誰かの話し声が聞こえてきた。


「ねぇ兄さん、もしかして……」

「もしかしなくとも、そうだろ?」


 聞き覚えのある声がする。後ろを振り向くと、そこではフードを被った二人の人物がこちらを見ながら食事をしていた。


「どったのタクマ、何か居た?」

「知り合いが居る気がする」


 タクマはそう言い残し、こちらを見つめてくる謎の人物の方へと向かう。

 そして、二人の居る席に座り「お久しぶりです」と声をかけた。

 するとその人達はフードを外し、タクマに顔を見せた。

 赤髪に左目の傷、右目の周りに紋章を持つ男、二人の男の正体は、なんとロード兄弟だったのだ。


「メイジュさん!?」

「ブレイクまで、どうしてここに!」


 二人の顔を見たメアとノエルは、ブレイクの方に駆け寄る。

 そして、吾郎達はその場から「知り合いでござるか?」と訊いた。


「俺たちにバトルのいろはどころか、ゑひもせすんまでを教えてくれた俺達の師匠だ」

「ほぉ、アイツらがお前が寝言で言ってたシンユウって奴か。なかなか良い面構えしてんじゃあねぇか!」

「にしても、あれからすっかりたくましくなったものだね。タクマ君」


 先日教えてもらった時とは変わらず、ブレイクはブレイクのまま、メイジュはメイジュのままでタクマ達に接する。


「どうも、俺は剣崎龍弥。和食を広める為にタクマと旅をしている者です。」

「ウチはそのリュウヤさんの妻、おタツと申すでありんす」

「拙者は吾郎、気軽に爺と呼んで欲しいでござる」


 3人は礼儀正しく頭を下げながら自己紹介をした。そんな3人の礼儀の正しさを見て、ブレイクは驚きつつも「ど、どうもっす」と小さく頭を下げた。


「それにしても、見た事もない民族衣装だ。君達は一体何処からやって来たんだい?」


 着物姿の吾郎とおタツを見て、メイジュは訊く。それに吾郎は「拙者達は大和国から来たでござる」と正直に答えた。

 するとメイジュは、えええ!!とオーバーな反応をして一瞬椅子から落ちそうになる。

 それもそうだ。何せ大和国の名だけは知れ渡っているとしても、そこは秘境なのだ。そんな場所から来たなんて聞いたら、誰でも驚く。むしろ驚かない方が難しい。


「な、なら!是非その、大和という国の話を僕に聞かせてくれ!」

「お、おぅ……」


 大和の話を聞いて燃え上がったメイジュは、目をギラギラと輝かせながら、リュウヤや吾郎、おタツの手を握った。

 そして、ブレイクは暴走したメイジュを後ろから小突き「追い求めすぎは迷惑に変わるから程々にしろ」と叱る。


「すまねぇな、コイツはガキの頃から知らない物にとんでもねぇくらい興味を示すタチでよぉ」

「教えたとて減る物ではございんせん、ウチらで良ければ知りたい事は何でも話すでありんすよ」

「本当!?流石は秘境の美人だ!ヤッター!!」


 メイジュはもうあの時の冷静沈着で大人しかった人とは打って変わり、まるで子供のようにはしゃぐ。

 そして、美人と言われたおタツは、微かにポッと顔を赤くし、左手で顔を隠した。


「……とまぁ、メイジュはよしとして。何故お主らロード兄弟がこの船に居るのじゃ?」


 それはさておいて、メアは優雅にコーヒーを飲むメイジュに訊ねる。

 メイジュはその答えを言う前に、ある一枚のポスターを取り出し、メア達に見せた。


「最強を決めろ、アコンダリア武闘会?」

「そっ、丁度今年やるって言うから、休暇貰って行くことにしたんだ」

「もしかして出場を……?」


 タクマは訊く。

 するとブレイクはハッハッハと笑い「だったら面白かったんだがなぁ」と呟くように答えた。


「気合で治すって豪語したのは良いけどさ、やっぱ気合じゃどうにもならんかったのよ」

「オニキスにやられた時の傷……ですか」


 ノエルは残念そうな顔で、ブレイクが優しくさする胸を見る。

 確かに、どんな超人でも、戦いの基本は呼吸からなるとも言われている。ブレイクみたいに気合でどうにかするタイプの人も同様だ。


「心配はいらねぇよ。そもそも俺達は見る専だからさ」

「無理も程々するのじゃぞ、ブレイク」


 メアはブレイクの身体を心配しながら言う。それにブレイクは「へいよ〜」と適当に返事を返す。


「どれどれ、どんな内容なんだ……ッ!?」


 タクマはポスターに書かれていた賞品の内容を見て目を丸くする。


「どうしたんですか?そんな変な声出して」

「……コイツを見てくれ」


 タクマは真剣な表情で、メアとノエルに景品が書かれている場所を指しながら見せた。

 そして、それを見たメアとノエルは、タクマと同じように目を丸くして驚く。

 その賞品が書かれている欄。そこにはなんと、金のオーブと書かれていた。

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