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第70話 新たな賞金首

【ガルキュイ 教会】

あれから一晩、どうせあの時間帯では薬屋も開いてないだろうと言う事で、馬車の中でタクマ達は夜を過ごした。

そして、リュウヤの 《ラピッド》で量産した薬草を使い、タクマの傷は痛まない程度にまでは回復した。

しかし、薬をミイラに飲ませても、彼が復活する事はなかった。


「ふーむ、これは亡くなって間もない人ですね」


見ても平気なタクマ、リュウヤ、吾郎の三人に、神父は調べた結果を話す。

性別は男、生命力を奪われた事で死亡。身体からは強力な魔力が検出された事から、死因は吸収型魔法(ソウルスティール等)による魔法殺人と考えられるらしい。


「けど、まだ完全に死んだ訳じゃあない。」

「完全に?どういう意味です?それは」


タクマは神父の言った「完全に死んだ訳ではない」の意味について詳しく訊ねる。

すると神父は「まぁ色々と面倒ではあるんだけどね」と前置きしてから話し始めた。


「生命力を奪われただけなら、特殊な薬を使う事で蘇生する事が可能だ」

「それつまり、蘇生薬と言う訳でござるな?」

「えぇ、ですけどその素材は高価で、自分で手に入れるにしても危険な物なのです」

「危険?どんな風に?」


深刻そうに話す神父にリュウヤは訊ねる。

時間としてはもう一日しかない。けど、だからと言って生き返させる事の出来る人を見捨てる事はできない。

タクマはじっと考えた。

すると神父は「岩石猪、その牙に効果がある」と答えた。


「けど、その牙は生きている時に折らなければ意味がない。それに、折ると激昂して強くなる。だからそう簡単に敵う相手じゃ……」


その事を聞いたリュウヤは、その話を遮るように「もしかしてコレの事?」と牙を取り出した。

それを見たタクマと神父は、もう既に用意されていた事に驚き口をあんぐりと開ける。


「コレならば生きているうちに取った物、ちゃんと拙者がこの目で見たでござる」

「使えますか……?」


リュウヤは牙をドンと机の上に置き、そう訊く。

すると神父は、自分に淹れていた茶のカップを思いっきり飲み干した後に「はい、こちらで薬をお作りします」と言い残し、奥の部屋へと入っていった。

そしてタクマ達は、その神父の背中に浅めのお辞儀をしてその場を後にした。



大きな扉を開いてすぐ、おタツ、メアの二人は大丈夫だったか?と訊ねながら近付いてきた。

ノエルに関しては、回復したのか普通にピンピンしている。


「岩石猪の牙を使った薬で生き返るらしい、だから大丈夫だ」


タクマは三人にそう答える。

薬の知識は無いけど、今はあの神父さんを信じる。それが今のやれる事だと信じよう。


「それにしても、どうしてあんな無残な姿で森の中に落ちてたのでありんすか?」

「何でも、吸収型魔法とやらで生命力を奪われたのが原因との事でござる」

「吸収型の魔物……となると、サキュバスとかその辺りが該当するな」


メアは顎に手を当てながら呟く。

確かにサキュバスは、人の生命力に近しい物を奪う悪魔だ。しかし、この辺にそんな感じの奴は居ない、それにクエストボードにもサキュバスのサの字すら無かった。

じゃあ誰がこんな事を……?

タクマもメアと同じく顎に手を当てて考えた。

すると、それを邪魔するように髭のおじさんが「どけ」とタクマを押し除けた。


「タクマさん、大丈夫ですか?」

「敵でござるか?」


倒れたタクマを庇うようにして、吾郎は刀に手を当てる。

まさに不審な動きをすればすぐに引き抜いて首を討ち取る、そのような勢いで構えた。

だが、マズイと思ったリュウヤに止められ、刀から手を離す。


「チッ、これだから異国の民は野蛮で嫌になる」


正直腹が立った。いや、誰でもあっち側から押し退けられて野蛮とか言われたら誰でも腹を立てる。

しかし危害を加えてはならない。タクマはあえて聞こえないフリをした。

だが、それでもやった事には変わりない。他の五人は「何だコイツ」というような目でその男がいなくなるのを待つ。

すると、居心地を悪くしたのか、男は嫌な顔をしながら、教会の壁にドンと力強く張り紙をして去っていった。


「別にタクマさんを押し退けてまで、やらなくてもいいじゃないでありんすか?」

「まぁまぁ、な?確かに腹立つけど、一般人に武器を取るのはマズイから、な?」


背中の方からクナイを取り出し、後ろに般若の守護神みたいな物を浮かび上がらせるおタツに対し、リュウヤは必死で宥める。


「それで、大丈夫かタクマ」

「ちょっと擦りむいたくらいかな、それよりあのおっさんが貼ったのって……」

「やっぱりタクマはそう簡単にはやられねぇな」


タクマは特に怒る様子もなく、ゆっくりと立ち上がって張り紙の方へと向かった。

そして、ピンピンするタクマを見てリュウヤは腕を組んで笑う。


「ふぅむ、お尋ね者のようでござるな」


吾郎はタクマの見ている張り紙を後ろの方から見ながら、そう呟く。


[海賊アリーナ・ロロネ 賞金:300万ゼルン]

[最強狩りの死神オニキス・キング 賞金:400万ゼルン]

[悪魔アナザー 賞金:30億ゼルン]


その張り紙には、その名前、懸賞金、賞金首の似顔絵の三点が載っていた。

やはりオニキスは、あの日会った姿と変わらず片目隠しの長髪、何かを常に恨んでいるようなしかめっ面、この二つの情報を主に用いた顔をしている。本人と会っていると、この世界の似顔絵スキルとやらには感心できるくらい似ている。

そして、悪魔と呼ばれているアナザーも、ヴァルガンナ跡で見た能面騎士のような機械的な姿をしていた。

まぁそれはさておいて、タクマは新たに出てきた謎の海賊「アリーナ・ロロネ」に注目していた。

他の二人は基本白と黒で表せられるから特別な色はなかったが、彼女だけは違ってフルカラーとなっている。

髪は青いボブ、目は青と紫のオッドアイ、その他の輪郭やら口元等は全て黒で描かれていた。


「死神に悪魔に海賊、最近物騒になりましたねぇ……」


気になったノエルは言う。

そして、そんな話をしていた時、教会の扉からタクマ達と話をした神父が出てきた。


「おっ、どうでした?」


それに気付いたリュウヤはすぐに駆け寄り、ミイラとなった男の安否を訊ねる。

すると神父は「新鮮な牙の中でも一番強力な牙だった事もあり、無事復活しました」と、リュウヤの手を握ってブンブンと上下に動かしながら感謝してきた。

まさにその強さは国語の小説に出てくるあの修道士のような、そんな強さで振られた。よく分からないが。


「それより、あなた方にお礼がしたいと申しておりました。」

「いえ、拙者達はただ当たり前の事をしただけ、そんなお礼なぞ……」


吾郎は断ろうとした。

しかし、神父にどうしてもと言われ、行く事にしたのだった。

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