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第68話 これが私のオリジナル魔法

【ガルキュイ平原 崖前】

「場所は確かここだよな」

「ですが、何もいませんね」


タクマ達3人は、白い腕の現れると言う崖の前に集まってみたものの、見た感じ何もないため困惑する。

辺りを回って見るも、そんな腕らしきものは見つからない。

じゃあ一体何処に……?

タクマは色々とあり得そうな事を考えた。

泥人形みたいな、某竜RPGでよく見る仲間を大量に呼ぶアイツ形式。それとも霊歌を使っていないから見えない幽霊的な……?

そう考えていると、その嫌な勘が当たり、ノエルが転んだ。


「ノエル、大丈夫か」

「はい、ですけど足に何か……」


タクマは転んだノエルの手を取って声をかける。しかし、タクマはノエルの足を見て冷や汗をかいた。

何故ならその足には、誰かの手の跡が付いていたからである。


「妾の仲間に何をする!」


ノエルの足に付いた物が見えるメアは、足に付いた物を蹴り飛ばした。

するとその跡は消えて無くなり、ノエルは足を振るう。


「この辺り、数え切れないくらいおるぞ……」

「一体どのくらい居るんだ?メア」

「言うよりは見せた方が早い、歌うぞ」


そう言うとメアは、短剣を取り出しながら霊歌を歌った。

するとその歌の効果で、足元にいた討伐対象、白い腕達が姿を現した。


「な、なんだこりゃ。見た感じもう既に30体以上居るぞ……」


タクマは、現れた白い腕の数を見て固唾を飲み込む。

しかもそれだけじゃない、もう既に白い腕はタクマ達を囲んでいた。それつまり、もう戦いは来た瞬間から始まっていたという事となる。


「とにかくやるしかない!行くぞ、タクマ!ノエル!」

「あぁ、後攻を受けた分お返ししてやらぁ!」


そう互いに声を掛け合いながら、タクマは剣を白い腕に突き刺した。

しかし、その白い腕は地面に潜る事でタクマの斬撃をかわす。

そして、その地面に刺さった剣を引き抜いたと同時に、別の白い腕が地面からタクマの足を引っ張り転げさせる。


「タクマさん、大丈夫ですか!」

「大丈夫、ちょっと足を引っ張られただけだ」


タクマはそう言いながら立ち上がり、足に付いた白い腕を斬る。

するとその白い腕は、手首を中心に分かれて撤退した。

しかし、このままこんなチマチマした事を続けていたら陽が登ってくる。

そんな事を考えていると、目の前から風のような弾が発射された。


「気を付けろ!こやつら、風魔法を使うぞ!」


メアはその風の弾を短剣で切り裂きながら、白い腕達を攻撃した。

だんだん姑息な攻撃もなくなり、白い腕達はタクマと同じくらいの高さまで伸びる。

それでも勿論、その手の持ち主らしきものは生えてこない。


「かくなる上は!《コピー》!」


タクマは飛び交う風の弾や白い腕を避けながら、風魔法ウィンドをコピーした。

そして、後ろから飛んでくる白い腕の拳をしゃがんで避けながら、殴りかかって来た腕に《コピー・ウィンド》を放つ。

するとその腕はブチリと劣化したゴムのように手と腕に分離し、灰のような粒となって消えた。


「これなら!メア、ノエル、コイツらには魔法が有効だ!」

「分かりました!やってみます!」


そう声を掛け合い、ノエルは新しい杖に魔力を込めた。あの時タクマから貰ったアドバイスを基に。

氷の槍、ノエルはそこから湧き出るイメージをはっきりとしたものにする。

そして浮かび上がったイメージを、特殊技「《フリズ・スピア》」として放つ。

すると、ノエルの周りから現れた魔法陣から、ノエルがイメージした通りの細長い氷の槍が飛び出し、白い腕を貫いていった。


「これがオリジナルな特殊技……」


ノエルは、白い腕を倒し終えてパリンパリンと破れていく氷の槍を見つめながら驚く。

そしてそれを見ていたメアも、《メガ・ドゥンケル》を放ちながら「何じゃそれ!」と驚いた。


「フリズを氷の槍みたいにイメージしたんですけど、何かすごい事できちゃったみたいで……」

「それは真か!?よーし、妾もやったるぞ!」


メアはノエルから簡潔に聞いたやり方を、そのままコピーするようにして右手に力を込めた。

メアの脳内、その中で「闇の爆弾」を思い浮かべる。

闇、ドゥンケルの爆弾、だとすれば 《メガ・ドゥンケル・ボム》か。

しかし、考えている間にも白い腕はメアを襲おうと手を伸ばす。

だが、伸ばした事が災いとなり、その手をタクマに斬られた。


「メアがまだ考えてる途中でしょうがぁ!!」

「だから邪魔すんなワレェ!!」


タクマとノエルは、腕を伸ばしてくる敵を物理的に殴り飛ばす。

しかし、それでもやっぱり相手の属性は幽霊、そのため一度消すことは出来ても、完全には倒せなかった。


「よし、なんとなくはイメージ出来た!離れるのじゃ!」

「了解!ドカンとやっちゃえっ!」


そう言い、タクマとノエルは安地であるメアの後ろへと回った。


「妾の新しい技を食らえ! メガ・ドゥンケル!ボォォォォム!!」


呪文を唱えたと同時に、メアの右手から大きな闇の弾が発射される。

そしてその弾が何も知らずに特攻してきた白い腕と激突した瞬間、ドーン!と耳がキーンとなるような轟音が鳴り響き、辺りに体重が軽い人ならば吹き飛ばされてもおかしくないような風が吹いた。

その弾の中では、集団で蠢いていた白い腕達が大量に消え、その上から禍々しい紫の雲が立ち上がる。


「駄目です……もう、飛ばされ……あぁっ!!」

「ノエルっ!!……うあっ!!」


メアは無事だったようだが、風圧に耐えきれなかったタクマ達は、後ろにあった小さな林へと飛ばされた。

そしてそんな中、タクマは思った。

「これ、アイツ一人で全部片付いたわ」と。そう思いながら、タクマは光ったクエストを見ながら、飛んでいく方向に身を委ねる。


「おーい、大丈夫か〜?」


白い腕を爆殺したメアは、自慢のサイドテールをブンブンと振り回しながら飛んでいくタクマとノエルを追いかける。

しかしタクマとノエルは声を掛ける暇もなく、そのまま林の前に落下した。


「ぐへっ!」「きゃんっ!」

「いや〜すまんすまん、つい出たもんだからお主達の事忘れていたのじゃ」

「おいおい、俺達を忘れないでくれよ……」


タクマはテヘペロっとした態度で軽く謝るメアに、服についた土を落としながら言う。

そして三人で「まぁでも、今回はメアのお手柄だからな。ありがと」と、仲良く右拳をぶつけ合った。


「さてと、こっちは片付いた事だし、リュウヤの所に加勢するのじゃ」

「だな、あっちは名前からして固そうな感じだしね」


タクマとメアは、共に加勢する事を話した。しかしそこにノエルの姿はない。

その事に気付いたタクマは、ノエルが居ないか無言で周りを見回す。

すると、タクマが丁度向いた方向から、涙目のノエルが飛び込んできた。


「おうおう、何だ」

「えぐっ、ミイ……ミイラが、干からび……」

「とにかく落ち着いて、何があった……ん?」


飛び込んできたノエルの背中をさすっていたタクマは、ノエルが走ってきた方向に靴のような何かがある事に気づいた。

タクマは「ノエルを頼む」と、メアにノエルを預けて向かう。

そしてノエルが言っていた通り、その場所には血を完全に抜かれて真っ白になったミイラが、まるで壊れたおもちゃのように朽ち果てていた。

罰当たりである事を承知で近くの木の棒で突くが、特に動く気配もない。骸骨兵士みたいな魔物でもなく、ただ単に死んでいる。

そして、そのミイラの横に、サファイヤのような青い宝石がいくつか転がっている事に、タクマは気付いた。


「何だこれ、魔法石か?」


拾って見てみると、案の定その宝石には、風のように渦を巻いた絵が彫られていた。


「タクマ〜、何があったのじゃ〜?」

「とりあえずノエルには見せないようにして来てくれ、この人は何か訳がありそうだ」


タクマは遠くから声を掛けてきたメアを呼びながら、後で話そうといくつか転がっていた魔法石を証拠品としてポケットに入れる。

そして、メアがやってきたのか、ダダダダっとこちらに近付いてくる。……ん?ダダダダ?

違う、メアじゃない。こんなに野生的な走り方をメアがする筈ない。それに、微かに獣臭までする。


「まさか……」


タクマは嫌な予感がして振り返る。

すると、夜の林に出来た闇の中から、岩が走ってきているのが見えた。

そう、あの岩、突進してくる岩は……


「メア、避けろ!岩石猪だ!」

「何じゃと!?」


しかし、タクマがメアに警告した時にはもう遅かった。

タクマは、目の前から突進してくる岩石猪に跳ね飛ばされてしまう。

ふわぁっと宙に舞う感覚が全身に染み渡る。不思議と痛みは感じない。

そしてドン!と林の落ち葉の中へと落ちる。そして、さっきまで感じなかった痛みが全身を刺激した。それなのに悲鳴は出なかった。

しかもそれだけではない、まだ何かがこっちに走ってくる。今度の足音は人のようで、軽やかな音がしている。


「待ちやがれ豚肉がぁっ!!」

「最初の1匹、逃しはしまへんえ!」

「其の甲冑と拙者の刀、どちらが上か勝負するでござる!」


この和風な喋り方と聞き覚えのある声、リュウヤ達だ。

けど待てよ、この声が聞こえる方向……間違いない、今自分が倒れている所だ!

タクマはマズいと感じ、とにかく起き上がろうとした。

しかし運がなく、立ち上がろうと手をついたと同時に、リュウヤ達の足が背中や頭に乗る。


「ぐへぇ!んぎっ!ぎにぁっ!」

「待ちやがれ〜!!」


それからリュウヤ達の上げた土煙が過ぎていった跡、そこからボロボロになったタクマが顔を現した。


「あー、大丈夫……ではないようじゃな」

「踏んだり……蹴ったり……」


そう言い残し、タクマは倒れてしまった。

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