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第61話 死神、αの野望

「オニキス、どうしてここに!」


タクマは身構えながら、オニキスに訊ねた。

相変わらず魔力を吸い取られるような、自然と足が竦む嫌な風が吹く。

それも、いつものとは何かが違う。

強くなっている?まるで意識すらも吸い取ろうとしているかのような、ゾッとする風が吹く。


「何だコイツ……知り合いか……?」


リュウヤもこの気を感じているのか、身構えながらタクマに訊く。

それに対してタクマは「ただのお尋ね者だ」と言葉を返した。


「面白いモン見れるらしいから来てみたが、随分と仲間が増えたモンだなタクマ」


オニキスはいつものしかめっ面で、タクマを睨みつけながら言う。

そして剣を抜いたかと思うと、すごい速さでタクマに襲いかかってきた。

タクマは咄嗟にしまおうとしていた剣を構え直し、オニキスの見えない攻撃を防御する。


「ほぉ、なかなか腕上げたじゃんか」


オニキスは嬉しそうに言う。

タクマはオニキスの攻撃を、必死で食い止める。

だが、タクマの右手から血が流れているのを見て、すぐ攻撃を中止した。


「あ……あなた、一体何をしにきたでありんすか!!」


おタツは忍者刀をオニキスの首に向けて訊ねる。

しかし、おタツが瞬きをした瞬間、持っていたはずの忍者刀が消えた。

それだけでなく、苦無や手裏剣、撒菱と言った武器も全て無くなっていた。


「こやつ……気をつけるでござる、この男は只者でないぞ」

「そのトカゲ娘、なかなか面白いモン持ってんじゃねぇか」

「と、トカ!?」


ふとオニキスを見ると、彼は無くなった筈の手裏剣などを床にバラバラと落とし、ニヤリと笑っていた。

そして更に、トカゲと言われた事で、おタツの胸に何かが刺さる。


「オレはただ、面白いモン見損ねた腹いせにちょっかいかけに来ただけ、そもそめ弱ったお前らと戦ってもつまらん」

「だが忘れるな、次会った時は本気で行かせてもらうからな」


そう言い残し、オニキスは夜明けの太陽から逃げるように、微かに残る闇の中へと消えていった。

そして居なくなると同時に、体に掛かっていた嫌な風の負荷がなくなり、タクマ達の体は軽くなる。

けどまだ、頭に違和感みたいなものが渦巻く。

ーーー頭が痛い。

それだけでなく、さっきまで痛いとも思わなかった筈の刀傷達が一斉に開き、血がダラダラと垂れる。


「タクマ殿!!」


頭では処理しきれない量の痛みが、全身へと走る。

とめどなく流れる血が、まだ綺麗な畳を赤く染める。

それに、心臓の鼓動と、血が川のように流れているような音が、いつもより大きく聞こえて来る。

そんな気持ちの悪い感覚を、タクマはだんだん小さくなりつつある呼吸をしながら耐えた。

けど駄目だ、「動こう」と思って体を動かすイメージがあったとしても、現実で身体は言う事を聞かない。

リュウヤにおタツ、駆けつけてくれたメアとノエル、そしてノブナガまでもが声を掛けてくる。

けど鼓動音が大きすぎるのか、悲鳴すら出ないあまりの激痛のせいか、はたまた疲れているせいかは分からないが、誰の声も聞こえない。

皆必死で呼びかけてくれている。

口の動きから察するに「タクマ」「しっかりしろ」大体この2パターンくらいか。

ーーー分からない。

一体何が正しくて、何が違うのか、全くわからない。

そうしているうちに、タクマは目の前が真っ暗になってしまった。



それから何時間が経過した?

1時間?2時間?それとも、丸一日?いや流石にそこまで経過していないだろ。

目を覚ましたタクマは、行き着いた黒い空間の中で、自問自答する。

けど不思議な事に、体にあった筈の痛みが、苦しみがない。

何が起きたのかとタクマは、自分の刀傷があった場所を服の上から摩る。

刀傷はまだあるが、かさぶたのような小さな出っ張りは触るとやはり痛む。


「何なんだ……ここ……」


タクマは自分の声が出るかどうか試すために、独り言を呟いた。

だが、返事は返ってなかった。

するとその時、後ろから気配を感じ、タクマは振り向く。

しかし、そこには誰も居らず、ただ何もない真っ暗な空間が続いていた。


「俺、また死んだ……?まさかな」


タクマはまた一つと独り言を呟きながら、前に顔を戻し、とにかく何かを見つけるために、歩き出した。

それにしても、あの神少年の居る白い部屋と違い、先が見えない上に何もない、ただ黒いだけの空間。

それはまるでSNSアプリのダークモードよりも暗い、黒い空間。

そんな空間を歩いていると、タクマは何かにぶつかった。


「イテテ……何だ?」


タクマはゆっくりと立ち上がりながら、目の前にある物を見る。

……いや、正確に言えば物じゃなく、人だ。人と思いたい。

そう思っていると、その人らしきものは、タクマに手を差し伸べた。

暗闇から、禍々しい機械ガントレットのような腕が現れる。


「大丈夫かい?タクマ君」

「あぁ、ありが……何で俺の名前を!?」


タクマはその腕を取り、驚くようにそう訊いた。


「嫌だなぁ、私が君のことを忘れる訳ないじゃないか」


謎の男は穏やかな男の声を加工したような、機械音でそう言う。

そして、その人が指を鳴らすと同時に、タクマとその人らしきものだけに、スポットライトのようなものが当たる。


「あ、アンタ……一体……」


タクマは照らされた謎の存在を見て、驚く。

その目の前に居た者、その姿は機械の鎧を纏っており、顔もゴツゴツの、まさに「魔王」と思えるような姿をしていた。

そんなものとこんな暗い世界で出会って、驚かない人な居ないだろう。


「申し遅れたね、私はアルファ・オブ・ジーメンス、ただの鎧のおじさんだよ」

「α……じゃあ、まさかお前が!」

「まぁまぁ、そう怖い顔をするものじゃない」


α、エンヴォスが「ボス」と呼んでいたあの男の名。

それを聞いて睨むタクマに、αは穏やかな声で言う。


「私はむしろ、君を助けにきたんだ」

「助けに?」

「あぁ、このまま放置してしまえば、君は死んでしまうからね」


だがその時、ふと疑問が過った。

オーブを集め、彼からする仲間を倒している俺を、どうしてボスと思しき人物が助けにきてくれたのか。

彼からすれば自分は迷惑な存在、邪魔ならばここで殺すのが良いはず。


「何故助けた……?」


タクマはαに訊ねる。

するとαは、タクマの肩に手をポンと置いて「ここで死なれると困る」と答えた。


「オニキス君だって、力の才能が花開くと睨んでいる君を、今ここで失いたくはないさ」

「オニキスの事を知っているのか!?」

「彼もまた、私と同じモノを抱えた存在だからね、知らないはずはない。」

「じゃあ今回はこれくらいにしようか。くれぐれも、親友であるリュウヤ君を困らせるんじゃないぞ?」


αはそう言い残して、タクマの目の前から姿を消した。

そして、その消えた場所に、不自然な襖が現れる。

一体彼は何だったのか、何のために俺を助けたのだろうか……

そんな事を考えながら、タクマはその襖を開けた。

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