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第58話 逆境、おまえの罪

『喜羽丸……そうか、ならばこれは貴様らに感謝せねばなぁ!!』

「何の話だ……?」


喜羽丸、その名を聞いてエンヴォスは大きな声で言う。

その声はそこまで大きくはない筈なのに、何故か喋る際に暴風のようなものが吹き荒れる。

そして、その分かった事をリュウヤは、近くの柱に掴まりながら訊ねた。


『我が今ここに、罪源の仮面として復活を果たしたのは、貴様が過去に多くの兵士を斬り倒してくれたからだ!!』


エンヴォスは、まるで今目の前に居る吾郎もとい、喜羽丸を煽るように言う。


「そうか……殺された者の妬みも、アイツの糧に……」


すぐに意味を理解したタクマは、絶望したような表情で言った。

しかも、今度はどこからともなく、悲鳴まで聞こえてくる。


『おやおや、我が同胞共が大和の民と楽しいお遊戯をしているようだぞ?』

「おゆ……まさかっ!!」


嫌な予感を察知したノエルは、すぐに外の様子を見に行った。

そして、そこに広がっていた恐ろしい景色を見て目から光を失う。

そこに広がっていたのは、建物は焼け崩れ、骸骨兵士達から人々が逃げ惑う姿、真っ赤に染まった川と、まるで地獄を再現したような世界だったのだ。


『どうだ喜羽丸、これが貴様の犯した大きな過ちの代償だ!』


エンヴォスは、今起きている惨状をネタに、喜羽丸を低レベルな口調で煽る。


『さぁ魔王よ、貴様はどうするのだ?その老いぼれを殺すのは今のうちだぞ?』

「ノブナガ様、あんなのに耳を貸しちゃダメです」


リュウヤは、拳を強く握るノブナガに言う。

するとその時、喜羽丸が「すべては拙者のせいでござる」と言った。


「コイツが復活を遂げたのも、骸骨兵士が生まれたのも、大和がこんな惨状になっているのも、全ては拙者が斬ったからでござる」

「吾郎爺!何言ってんだよ!」


いきなりの発言に驚き、タクマは叫ぶ。

だが喜羽丸は話すのをやめなかった。


「それは全て大罪、ここで拙者の首を斬られても文句は言えぬ」

『そうだろう!魔王よ、早くその刀で奴を殺せ!』


するとノブナガは、エンヴォスに言われた通り、刀を握り直した。

まさか殺ってしまうのか。タクマ達は止めに入ろうとする。

だが、ノブナガはその二人を払い除け、ゆっくりと喜羽丸の前に近付く。


「だがそれは過去の話、今ならば拙者なりに罪は償える!」

「そうさ、だからワシは国をどうされようと喜羽丸……いや、吾郎を攻めない。むしろ応援するのだ」


ノブナガは、今手にしている刀をエンヴォスに向けながら、そう言う。

そして、それに心打たれたタクマ達も、そこに加わるようにして剣や杖、刀を構えた。


「そうさ、人斬りであろうがなかろうが、ちゃんとした人間であれば幾らでも罪は償える」


リュウヤはカッコつけながら、エンヴォスに言う。

するとエンヴォスは怒り狂い、文字では書き表せないような悲鳴を上げた。


『何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!聞いていた話と違うぞ魔王!何故殺さない!貴様が殺せば我は強くなれたと言うのに!!』


エンヴォスは地団駄を踏んでいるのか、城がグラグラと揺れる。

そしてその振動で、今にも落ちてきそうだった屋根の骨組みが落ちてきた。

しかし、それはすぐに小さな木のブロックと化し、地面に転がる。


「やはりそう言う事か、どれほど大きかろうが、やり口はガキ臭い小物でござるな」

「ダサいですね」


喜羽丸とノエルにそう言われ、エンヴォスはさらに激昂した。


『ならばもう良い!この一撃で闇の中に消し飛ばしてくれようぞ!!』


そう言い、エンヴォスは大きな骨の手を上げ、闇の魔力を溜め始めた。



………

……

それと同時刻、メアとおタツ達も、結界解放の為に動いていた。


「ちぃ、あの骸骨野郎強すぎるぞ、タクマ達で敵うのかのぅ……」

「とにかく早めに結界解放は、この麒麟の結界岩だけ、パパパっとやって加勢するでありんすよ!」


メアとおタツは、あと一つの結界岩を解放する為に、色々と準備をした。

しかし、それを邪魔するかのように、骸骨兵士達が竹林から大量に現れる。


「わぁっ!!こやつら、何故急に!!」


メアは骸骨兵士の攻撃を避ける事に精一杯で、なかなか開いた麒麟の口に《メガ・ドゥンケル》を発動できない。

だがそんな時、おタツはどこからか天狗の面を取り出し、それを被った。


「さぁ骸骨!貴方様の狙いはこっちでありんすよ!」

「なるほど、敵を引きつける為のテングか……」


そう呟き、今のうちにメアは《メガ・ドゥンケル》を放とうとする。

だが、あと少しで放てると言う時、目の前から、おタツと交戦中の骸骨兵士とは別の敵が現れた。

そのせいで不完全な《メガ・ドゥンケル》が発動してしまい、結界解放はできなくなりかける。


「このっ、邪魔しおって!」


メアは太ももから投げナイフを取り出し、それを使って邪魔してきた骸骨兵士と戦う。

そしてそれと同時に、エンヴォスの方も力を溜め、形成された気弾はもう既に即死は免れないくらい強く、大きく成長していた。


「もはやここまでか……」

「爺ちゃん……」


必死で止めようと尽力してはいたが、近付けば触手が邪魔をしてくるから向かえない。

そのためノブナガ達は、とにかく祈った。

するとその時、不思議な事が起こった!なんと、結界岩から紫に光る柱が立ったのだ。


「な、なんじゃこれは!」


しかも、よく見ると麒麟の結界岩は、エンヴォスの闇魔力を吸い取り、メアから受けた不完全な《メガ・ドゥンケル》の足りない力を補っていた。


「やった!これで結界復活でありんすよ!」

『ば、馬鹿な!我の力が……ぐわぁぁぁぁ!!』


そして、タクマが肩へ打ち付けた札からも光の柱が立ち、エンヴォスの骨に亀裂を入れていく。

それをエンヴォスは押さえ、メアとおタツの居る場所にまで聞こえる悲鳴を上げた。


「よし!後はタクマ達に加勢するのみじゃ!」

「えぇ、急ぐでありんすよ!」



………

……


『くそう!何故復活したのだ!あそこの気は全て奪い取った筈だぞ!!』

「ソイツはアンタが濡れ衣を着せたメアちゃんからのプレゼントだ」


リュウヤは口を少しにやつかせながら、エンヴォスに言う。

そして、タクマに一つ耳打ちをした。


「あぁ、アレやってみっか!」


そう言うと、タクマとリュウヤはノブナガ達の前に出た。

そしてタクマは右手、リュウヤは左手で手銃のような構えをし、それをエンヴォスに向ける。


「「さあ、おまんの罪を数えるぜよ!」」


二人は声を合わせて、決め台詞を放った。

だが、それを言った瞬間、辺りに寒い空気が吹く。


「……なんですかソレ」


ノエルの鋭く冷静なツッコミが二人に刺さる。

そして、気を持ち直したエンヴォスは『ふざけるなぁ!!』と当たり前だが激怒した。

しかしその時、目の前に二つの影が飛び交う。


『な、何だこれは!小賢しい!!』

「この身なり、帰ってきたのか!」

「えぇ、お待たせして申し訳ないでありんす」

「ふぃ〜、結界復活で少しは楽になるかの?」


月明かりが照らしたその先には、メアとおタツの二人が立っていた。


「メア!無事だったのか!!」

「てっきりおタツさんにやられてしまったのかと……」

「その話は後じゃ、それよりまずは下の兵士共を倒す奴らを即急で決めるぞ!」


メアに言われ、タクマは「俺が行く!」と言い何処かへ行こうとする。

しかし、行こうとした矢先、触手が襲いかかってきた。


『こうなりゃもうヤケだ!とにかく貴様だけでも殺してオーブを奪ってやる!!』

「邪魔すんなこの野郎!!」


タクマは沢山の触手や、新たに現れた骨の槍の雨を剣で対処する事に手を取られ、骸骨兵士討伐へ向かえないでいた。


「ならばワシが行く」

「ノブナガ様!?」

「ここはワシの国だ、王として民を守るのがワシの仕事であるぞ!」


そう言って、ノブナガはメアとノエルの手を取り、言葉を交わさずに来てくれるかどうか目を合わせた。

メアとノエルは、それに対し静かに肯く。


「と言う事で後は任せた!そんでもってこの二人は借りてくぞ〜!!」


ノブナガはそう言い残し、メアとノエルを連れて城から飛び降りるように雑魚の暴れる城下町へと消えていった。


「拙者は今もこれからも、吾郎として友を護る為に剣を振る!行くぞリュウヤ殿!」

「よっしゃ来た!マジでアイツには罪数えてもらうからなぁ!!」

「ウチも行くでありんすよ」

「リュウヤ、吾郎爺、おタツさん……ありがとうございます!」

「おう!行くぜ行くぜ行くぜぇ!」


タクマは剣を振ってエンヴォスに攻撃を与えながら、3人に礼を言い、エンヴォスへの本格的な反撃へと出たのであった。

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