第52話 明かす計画、魔王直撃!
「ねぇリュウヤさん、本当に信じて良いんですよね……?」
なかなか帰ってこないおタツとメアを心配して、ノエルは訊く。
おタツが「任せろ」と言って出て行ってから、もう太陽は西へ沈み、燃えるように赤くなっている。
だが、リュウヤは心配するノエルの横に座り、笑顔で「俺の嫁サンだぜ、心配はいらねぇよ」と答えた。
「それにしてもリュウヤ殿、何か隠しているでござるな?」
「隠すって、何をですか?」
急に後ろから現れた吾郎に驚きながら、意味深な発言に疑問を持ったノエルは、何を隠しているのかリュウヤに訊いた。
だが、リュウヤは「そんな事、俺は何も知らんぞ?」と冷や汗をかき、目を逸らしながら答える。
「やっぱり何か私達に黙ってる事ありますね?」
「お、俺はおタツからは何も聞いてない。うん」
一瞬「ギクっ!?」と身体を震えさせたが、まだリュウヤはシラを切る。
そしてついに、ノエルは強硬手段に出る事にした。
「吾郎さん、ちょっと刀かーしーて」
「うむ、使いたまえ」
「おいおいノエルちゃん?そんな物騒な物借りてドウスルツモリナンダイ?」
リュウヤは片言日本語で喋りながら後ずさる。
そしてノエルも、抜刀の構えてをしながらジリジリと近付く。
しかも、よく見たら吾郎が消えている。
だが、気づいた時にはもう吾郎は後ろにおり、リュウヤを拘束した。
「さぁ吐くでござる!おタツ殿の作戦を吐くでござる!」
「痛い痛い!分かったから、腕もげる!」
こうして、リュウヤは観念して二人におタツの考えた、リュウヤとおタツだけの極秘作戦の内容を吐いた。
「えぇ!?メアさんを連れて!?」
「しーっ!声がデカい!」
リュウヤの話した作戦とは、メアとおタツの二人で城から抜け出し、今晩までに力を合わせて破壊された結界を治すと言う物だ。
勿論、初めて知ったノエルも吾郎も驚き、本当にそんな事が出来るのかと不安になった。
「確かに無謀な作戦だ。結界の外には骸骨兵士がうじゃうじゃ居るからな。もし大群に逢えばまず命はないだろう」
「命は……そんなのを女子二人で任せて良いのでござるか?」
吾郎は身を乗り出して、リュウヤに訊く。
そんな命がけの作戦、おタツはいくつか分からないけど、確かに女子二人に骸骨兵士の大群は対処しきれない。
第一タクマ、メア、ノエルの3人でさえ初めて大和竹林に来た時苦戦を強いられ、やっとの思いで一体倒せただけの存在。まともに戦って大群に敵うはずがない。
しかし、リュウヤは「相手が強いのは分かってる。だけど二人は絶対に死なない」と確信する様に言った。
「何でそこまで言えるんですか?」
「何でだろうかなぁ、けどおタツなら絶対メアちゃん連れて生きて帰ってきてくれる。俺にはそう思えるんだ」
リュウヤは天井を見つめながら、気楽な口調で言う。
「その台詞、何かタクマさんみたいですね」
「小1の頃からの大親友なんだ、そりゃ兄弟みたいに似るもんだ」
そうして全てを話し終えて、リュウヤは最後に「この話、タクマにだけは絶対に言うなよ」と釘を刺した。
そして、何故そう言ったのか、ノエルはすぐに理解して「分かりました」と答える。
「何故タクマ殿には……?」
「危険だなんて聞いたら、アイツは自分の命顧みずに飛んでいっちまうからだよ」
「まぁ、そんなお人好し精神が、タクマさんの悪い所でもあって良い所でもあるんですけどね」
そう話して3人でフフフと笑っていると、ノエルはある一つの違和感に気付いた。
「ねぇ、リュウヤさん。」
「何だい?ノエちゃん」
「タクマさん、何処行ったんですか?」
「あ、居ないね……居ない!?」
リュウヤの声が、静かな和室にこだまする。
【大和城 信長の部屋前】
一方その頃タクマはと言うと、あの時の骸骨兵士の話や、今朝聞いた謎の声がどうにも引っかかっていたため、真相をノブナガ本人から聞き出そうと言う暴挙に出ていた。
「ノブナガ様、タクマです」
周りの襖よりも、より赤みのある襖の前で、タクマは声をかける。
そして、部屋越しから「何用だ?」とノブナガが訊いてきた。
「ちょっとお話をしたくて……」
「そうか、まぁ入りたまえ」
そう言われ、タクマは「失礼します」と一礼し、赤い襖を開けた。全く同じ襖と言うのに、何故かこの襖だけは重く、そして冷たく感じる。
そして襖を開けると、そこにはどっしりと正座をして、じっとタクマを待ち構えるノブナガが居た。
「立ち話も難だ、とにかくそこに座りたまえ」
「は、はぁ……」
タクマは、ノブナガの前に置いてある座布団に正座した。何故だろうか、凄く緊張する。
全身の毛穴と言う毛穴から冷や汗が滴る。
けど聞くんだ、あの態度は絶対何か隠し事をしていた気がする。だから頑張れ!俺!
「それで、話したい事とは何だ?」
「ノブナガ様……玉について何かご存知ですか?」
タクマは緊張を振り払い、単刀直入に『玉』について聞いた。
玉の力、それはもしかしたらオーブかもしれない。そしてもし持っているとするならば、それが殺人事件の犯人だと。
けどノブナガが自ら家臣を殺すとは考えにくい。だとすれば玉に操られている?
発言した後に、タクマがそう考えていると、ノブナガはその問いに対して笑い出した。
「ガッハッハ!玉ならいつくか知っておるわい!それで、その玉がどうしたのだね?」
それを聞いて、タクマに戦慄が走った。
ノブナガが……?まさか……
でも、もし操られていたとすれば、ノブナガ様から受け取りさえすればまだ間に合う筈……!
「その玉を……俺に譲って欲しいんです」
「ほぉ、玉が欲しいとな?」
ノブナガの目が鋭くなる。
何か粗相になる事言っちゃったか?
分からない、緊張しすぎて頭が全然回らない。
「そんなに欲しいならば、くれてやらなくもないぞ」
そう言って、ノブナガは立ち上がった。