第2話 コピー使いへの使命
「もしもし、転生科です」
「え?デルガンダルに……?そうですか、分かりました。」
神は深刻そうな顔で誰かと話している。
そして電話を切り、顔をタクマに向けて「すまない、君に話がある」と真剣な目で言った。
「君にある使命が下された。デルガンダルにある国の王を倒して欲しい」
「それが……さっきの電話の?」
「そうだ。だが、タダでとは言わない。」
少年は、大金が入ってそうなアタッシュケースを出現させ、その中身をタクマに見せた。しかし、中身は金ではなく、さっき手にしていた筈の魔法カードだった。
「この依頼の前金として、無対価で力を与えたいところなんだけど、これはある事件をきっかけに禁止とされた。だから、君には『コピー』に関する魔法をあっちでの頑張りによって追加すると約束する、これで手を打ってくれるかい?」
「うーん、それ、神様のチートパワーで特定とかできない奴……?」
タクマは少し申し訳なさそうに訊いた。
神は目を瞑り「それが出来てれば君には頼まないさ……」と答えた。君にはって発言、正直腹が立つが、確かに右も左も分からない自分では、そんな事はできないだろう。
「一応、その国の王が魔王である事だけは分かっている。だが、転生時に魔王の道を選んだ者なのか、あっちの世界で生まれた本物の魔王なのか分からなくなっていて、我々はお手上げなのだ。」
神は「もうダメだ……と言わんばかりに首を横に振る。
「どうして、神も手が出せない程に?」
神は「まだ質問するの?」と少しキャラ崩壊的な発言をしつつも、タクマの質問に答えた。
「それが、何故かいきなり、神々の千里眼や全知全能等の能力が使えなくなっていたのだよ。しかも、犯人の事も、いつ使えなくなったのかも、我々全員覚えていないのだよ」
タクマは顎に手を当て考えた後「よしっ!」と手をパンと叩いた。
「その話乗った!」
その言葉を聞いた時、神はタクマの手を取り「ありがとう」と呟いた。
「そうだった、まだ君に対価を教えていなかったね。」
神はタクマの目の前に一本の剣を出現させた。
「君の対価は、剣以外の武器が使えなくなる。」
「もし仮に剣以外の武器を使ってしまえば、相手に与えた分のダメージが自分へ返ってくる。」
タクマは「たったそれだけで良いの?」と訊いた。
「与えられるコピーはオールマイティー、だから炎魔法にもなれば水魔法にもなる。つまり、使い方によれば強くもなるし弱くもなる微妙な存在。だからこそ、剣縛りにした。」
「剣縛りって……杖とかはどうなるんだ?」
「杖は、それで叩く、杖から魔法を使う。この二つの行動をすると、自分に帰ってくるよ」
「成る程……」
タクマは、どうなんだろうかとモヤモヤしていた部分が解消され、成る程と頷く。
すると、今いる白い空間に、木の扉が現れた。
「そろそろ時間か、それじゃあ行ってらっしゃい。」
「何か色々ありがとうございました」
タクマは神に向かって一礼をして扉から出て行った……
本作の主人公であるタクマ。母は生まれてすぐ亡くなり、博打好きの虐待親父に育てられてきた少年。
15歳の高一で、他の人と何ら変わりない普通の学生。
高校の帰りに殺害されたが、神の力であるものを対価として「敵の魔法をコピーして使える魔法」を授かり、デルガンダルへと旅に出た……
今作の主人公であるタクマ君ですが、彼のモデルや参考は本当に一切ありません。
ただ私が「なんとなく」で思いついて書いたって感じです。
と言うより、そもそもこの小説を作ろうと思ったきっかけも全部深い意味はなく、本当に「なんとなく」なんです。
ただ、彼が普通なのには理由があります。
「小説家になろう」系の異世界ラノベといえば、「最強」「ハーレム」「チート」がよくあるじゃないですか。
ですが、私はその異世界モノで良くある設定を極力入れないようにする為、あえて彼は身内が酷いだけの普通の学生として書きました。
「使い方によっては強いかもしれないけど、基本的に強い訳ではない能力」や「力を手にする代わりに何かを失う『対価』設定」もこれが理由です。
ハーレムについては、後にお話ししましょう。
では、私の「なんとなく」劇場をお楽しみください。