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【最終章突入ッ!!】コピー使いの異世界探検記【28万PV突破!】  作者: 鍵宮ファング
第2章 不思議な僧侶と世紀末的砂けむり事件
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第26話 あの日の森と地獄的な食材探し

 またまた一方その頃、ノエル一行はというと。


「頑張ってくれたのに悪いけど、これ全部毒キノコだよ」

「こんなに赤くて白いぷつぷつのある奴もか!?」

「その白い斑点が毒の証拠ですよ、メアさん」


 メイジュ、メア、ノエルの三人は、キノコ探しのはずが“毒キノコ”探しをしている状態だった。

 そして、メイジュはその毒キノコを見てある事に気付き、鞄から分厚い本を取り出した。

 その本は表紙が掠れており、何の本かは分からない。随分と読み古しているようだ。するとメイジュは、その本をメア達に見せた。


「メイジュさん、それは何の本なんですか?」


 ノエルはメアと一緒にページをめくりながら訊いた。


「ちょうど毒キノコがあるから、君たちに調合について教える事ができると思ってね。これくらいの量だったら練習用として充分だし、明日には教えるよ」


 メイジュは優しい口ぶりで二人にそう言った。

 そして三人は、もう一度食料を探しを再開させた。



 それから時間が流れ、夕陽が森を照らす中、ノエルは急に足を止めた。


「ノエル?おーい、起きておるか~?」


 急に立ち止まった事に気付いたメアは、彼の目の前で手を振り、意識があるかどうか確かめた。

 しかし、目の前で手を振ったり手を叩いたりしても、ノエルはうんともすんとも言わない。


「メイジュ、ノエルが完全に固まってしもうた!こんな事もしてるのに全然動かぬぞ!」


 メアはメイジュに伝えながら、ノエルの両頬をつねった。

 しかしそれでもノエルは動かない。

 メアはだんだん怖くなり、ついにメイジュの後ろへと隠れてしまった。


「のうメイジュ、まさか彼奴死んだとか無いよな……」


 メアの震え声に、メイジュは頭を撫でながら「大丈夫」と言った。


「あれは魔法使いの特殊能力、共鳴レザナスの覚醒だよ」


 メイジュはノエルの異変を特に驚きもせず、メアに教えた。

 しかしメアは、その聞いたこともない言葉に、首を傾げることしかできなかった。


「簡単に言えばノエルちゃんは今、この森のどこかにある水と共鳴してるって事だよ。それも大きめのね」


 そう話していると、ノエルは急に動き出し、メア達の向かおうとしている左側を指さした。


「メイジュさん、あの先から水の波動を感じたのですが、これは一体……」


 ノエルはその初めて感じた波動について、メイジュに訊いた。


「ちょうどノエルちゃんも気が付いたようだし、そっちへ向かいながら詳しく話すとしよう」


 と、メイジュは言い、ノエルが指をさした方向へと進んだ。



 そしてメイジュは、ノエルの身に起こった《共鳴》についての説明を始めた。


「《共鳴》とは、特定の魔法適性を持つ者が、自然界に存在する魔法と関連する物を波動として感知できる能力だ。例を挙げるなら、国にそれぞれ居る陽の鐘を鳴らす人や予報士とかがそうだね」


 メイジュはそう言って一旦目を閉じ、太陽がある方向に手を伸ばした。

 するとその手から、ビー玉サイズの光の玉が現れた。

 その玉は夕焼けのようなオレンジ色をしており、それはだんだんと小さくなっていく。


「これは光魔法を持つ僕が《共鳴》で感じた波動を可視化させた陽の粒、陽の鐘を鳴らす人はこれを見て鐘を鳴らすんだ」

「つまり、こんなに小さいって事は、そろそろ陽が落ちる。と言うわけじゃな?」


 メアがその光の玉を見てそう言うと、メイジュは肯いて、「そう。だから、早歩きで目的地まで向かおう」と答え、早めに歩き出した。


 そうして歩いてゆくと、奥の方から川の音が聞こえてきた。

 これこそがノエルの感じた波動の正体。ノエルは本当に感じ取れたと、ただただ驚いていた。


「初めてであの距離から強い波動を感じ取れる人はなかなか居ない。メアのドゥンケルといい、二人は磨き甲斐があるよ」

「まずは川の方へ出て、兄さん達と合流しよう」


 メイジュは二人に笑顔で言う。しかし、メアが何か物言いたそうにしているのに気付き足を遅くする。

 メイジュは何故そう感じているのかを察して、「心配ない、メアもいつか覚醒する時が来るさ」と笑顔で言った。

 するとその時、辺りに魚を焼く匂いが漂ってきた。

 その匂いを辿って森を抜けると、そこには焚火の前で、焼き魚を食べるタクマとブレイクの二人が居た。


「遅かったじゃねぇかメイジュ!でも、無事で良かったぜ!」


 ブレイクは合流したメイジュの背中を叩きながら言った。


「ちょうど全員分焼けたし、冷める前にほら」


 タクマも、メアとノエルに焼き魚を差し出して無事帰ってきた二人を歓迎した。

 しかし、何故二人が先にここへ来ていたのか疑問に感じたメアは、「それより何故、お主らが此処に居るのじゃ?」と訊く。


「まぁ立ち話も難だ、まずは座れ座れ」


 ブレイクは三人を岩に座らせ、事の顛末を聞かせた。




【数時間前】

「やっぱり、どこ探しても見つからねぇ~!」


 タクマは食料探しを諦めかけ、木の下に倒れ込んだ。

 今頃メアやノエル達も、食料探しに苦戦しているだろう。これはもう断食を受け入れるしかない。

 しかし、ここで甘んじてはゴーレム討伐なんて夢のまた夢。

 そう葛藤している時、ブレイクが少量ではあるが二本のゼンマイを持ってきた。


「そう弱気になるな、これちょっと口に入れたら再開だ!」


 ブレイクはそう言いつつ、一本のゼンマイを口へ放り込んだ。


「お、これ生でも行けるな~!」


 ブレイクは後ろを向きながら独り言を呟く。

 そして、タクマもちょっとした腹の足しにするために口へ放り込んだ。

 すると口の中に、インスタントコーヒーの原粒を食べた時のような恐ろしい苦味が舌を伝ってきた。


「があっ!だ、騙しましたね……」

「これで俺もお前も元気になったんだ!」


 ブレイクは、何とか苦味を我慢してゼンマイを飲み込んだタクマの背中を叩きながら言った。だが、言い終えた後、急に黙り込んでしまった。

 そして数秒の沈黙の後、ブレイクは「……ダメだ、水探そう」と涙目になりながらボソリと呟いた。

 タクマも、涙目になっているブレイクを見て、静かに「……っすね」と反応する。

 しかし、水を探すと言ったって、この辺りにあるなんて話は聞いたことがないし、初クエの時だって見かけなかった。

 二人は少し離れて周辺を捜索し、口に残る苦味に耐えながらも涙を拭った。

 だがその時、タクマの足元が崩れ落ち、坂へ転がり落ちる。


「おいタクマ!大丈夫か!?」


 ブレイクはその音に気付き、タクマの方へと急いだ。

 しかし、ブレイクが気付いた時はもう遅く、タクマは急な坂の下まで落ちていた。


「大丈夫かタクマ!怪我はしてねぇみたいだが……」


 ブレイクはその坂を飛び降り、タクマの方へ駆け寄った。


「はい、何とか……それよりやっと……」


 タクマは、弱りきった口調で崖の反対側を指した。

 そこには川、つまりタクマ達の探していた水があった。


「坂の事は良くねぇが、コイツは良いモン見つけたじゃねぇか!」


 川を見たブレイクは、タクマの肩を激しく揺らしながら言う。

 それから続けて「これさえ見つけりゃ魚祭りだぁ!」と叫ぶと、ブレイクは川へと飛び込み、素手で川魚を大量に捕まえた。



「……って感じで、コイツがドジ踏んでくれたお陰でここまでたどり着けたってワケだ!」


 ブレイクが話し終えると、メア達三人はどっと大笑いした。


「だから、父上から貰った服がちょっと濡れておるのか」

「ゼンマイをそのまま食べるだなんて、大胆な事やりますね」

「タクマ君の方も大変だったようだね」

「や、やめてくれよ……まぁ今となっちゃ笑い話だけど、あの時はマジで死ぬと思ったんだぞ?」


 五人はそう雑談をしながら、魚を満腹になるまで食べた。

 そうして食べ終えた時、タクマはアルゴであった矢文の話を思い出す。


「そういえば、俺達がロード兄弟の隠れ家に来る前、アルゴでこんなのが矢文で飛んできたんですよ」


 タクマは、アルゴで手にした雑な地図を広げて見せた。

 するとメイジュはそれを手に取り「あ、これ僕の書いた奴だ」と言った。


「えぇ!?じゃあもしかして矢文を送ったのも……」

「それは兄さんだね、副適正武器として使おうと思ってた弓の練習がてらに送ってみたんだ」


 メイジュはそう説明し、背中に背負っていた小さな鞄から折りたたみ式の弓を取り出した。


「簡単に言うと、掃除や洗濯は僕、買い出しや料理とかは兄さんって感じで分担しているんだ。」

「だから、たまたまロード兄弟を探してる俺らを見つけて、ヒントを渡したってことか……」


 タクマは掌に拳をポンと当てて納得した。

 そうしていると、後ろの方からブレイクが「テント張り終わったぞ~!」と、四人に言った。


「兄さんお疲れ~!それじゃあ、そろそろ寝ようか」

「そうじゃな、そろそろ眠くなってきた頃じゃからな~」


 メアは途中であくびをし、ウトウトし始める。

 大変っちゃあ大変ではあったが、何だか楽しい生活だと思いながら、タクマはテントに入った。


 その日の夜、タクマはまた夢を見た。

 鹿羽根のお通夜なのか、タクマとリュウヤは喪服代わりに学ランを着ている。


「……ラの野郎!何で俺らより先に逝っちまったんだ……!」


 タクマはテーブルを叩き、泣いた。

 相変わらず鹿羽根の下の名前らしきものは、最後の文字意外ノイズがかかっていて分からない。

 そこへリュウヤは、タクマの背中をさすり、「気持ちは分かるが、一旦落ち着こう」と慰めた。


「アイツだって、若くして死んで悔しいだろうさ。でもアイツも言ってただろ?………る夢を持つ者が、理不尽な現状を甘んじてなるものか!ってよ。……ラみたいな奴は、そう簡単にデカイ夢は諦めねぇ。だから、俺らも負けずにアホほどデカイ夢を掴もうぜ!それが俺らの手向だ」


 リュウヤは目に涙を浮かべながらも、笑顔でタクマに言う。

 タクマはリュウヤの言葉で立ち直り、涙を拭った。


「そう……だよな。俺達がこんなとこでクヨクヨしてちゃ駄目だよな」

「そうさよく言った!俺達もアイツに負けないくらい頑張ろうぜ!」


 リュウヤは笑いながら言う。すると、またあの時のように辺りがゲームのバグのように崩れていった。


「何で肝心なところだけいつもいつも……」


 タクマは呟き、データの海のような空間に飛び込んだ。

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