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第191話 異常な惨状

【メルサバ】

 メルサバに到着するや否や、タクマ達は街の惨状を見て目を丸くした。滅ぼされたとまでは行かないが、木々は薙ぎ倒され、地面のタイルは剥がされ、所々に何かを強く打ちつけたような跡や斬撃の爪痕が残っている。

 アナザーの粛清説を考えたが、そもそもメルサバが悪事を働くなんて事はあり得ない。それに、もしそうだとしたらリオは生きていない。


「酷い、どうして」


 残酷な惨状を見たノエルは、受け止めきれないのか目を丸くしたまま膝から崩れ落ちる。

 一体、誰が何のためにこんな酷い事を……

 リオに訊こうにも、彼女はフラッシュの事で落ち着かないようで訊くに訊けない状態だ。


「決闘の跡、でありんすかね?」

「ド派手にやる馬鹿がいるモンだねぇ。今度はアタシが相手してもいいか?」

「ダメに決まっておるじゃろ。お主は一応賞金首なのじゃから、しょっ引かれたくなかったら大人しくせい」


 元気よく指の骨を鳴らしていると、メアが後ろからハリセンでツッコミを入れた。そしてアリーナは頭を押さえて「冗談冗談、普通に死ぬわ」と返した。

 彼女の言う通り、この深い爪痕はただ太いだけではなく、5センチほどの溝になっている。こんなものをまともに食らえば、きっと即死だろう。

 するとその時、奥の方からナノの悲鳴が聞こえてきた。


「どうしたでござるか!」

「見て見て!マグマみたいに赤くてあったかい石!ここに落ちとったで!」

「おっ、お前ら!ここにも金みてーな石あったぜー!」

「二人とも、綺麗なのは分からんでもないけど、現場荒らしはダメでしょ」


 タクマは二人の事を叱り、「元あった場所に戻してきなさい」と母親か!とツッコミを入れたくなるような事を言って返させようとした。

 しかし、その破片を見たリオは「待って!」と止め、二人から石を受け取った。


「やっぱり、まだあったんだ」

「やっぱり?て事は、他にも?」

「ええ。とりあえず、詳しい事はアイツの所に行って話すから、着いてきて」


【メルサバ城 医療室】

「フラッシュ、客よ」


 白い扉の前に立ったリオは、ゆっくりと3回ノックして言う。すると、奥から「どうぞ」と元気のない返事が返ってきた。

 もう声からして元気がない。やはり、国を荒らした何者かに負けたのが相当なショックだったのだろうか。とにかくフラッシュが危険である事に変わりない。

 リオは扉を開き、8人に入るよう目を向けた。


「お邪魔するの……じゃ!?」

「メアメア、なした……ん!?」


 扉を開けた先には、フラッシュとは似ても似つかないミイラ男がベッドの上で黄昏ていた。ただ、しょぼんのお面だけはブレずに被っていたため、彼がフラッシュである事はすぐに分かった。

 一応、アリーナ以外はリュウヤの一件で見たことがあったためそこまで驚きはしなかったが、初めて見たアリーナは吾朗に抱きつき色目を使った。


「ダーリン!何あれ怖い!」

「フラッシュさん、重症でありんすな……」

「おや?その声はまさか、おタツさんじゃあないですかぁ!いや〜、こんな情けない姿での再会とはお恥ずかしい!」


 おタツが心配そうに眺めていると、フラッシュはさっきまでの燃え尽きた状態から立ち直り、ワーハッハッハ!と高笑いした。

 しかし、無理したことが災いし、腹部から血が吹き出し、またクラリと倒れる。


「まあ見ての通り、重症でトラウマ与えそうな姿で、元気がない。けど、来てくれて嬉しいよ」

「そりゃあ、ちゃんリオっちが泣いて助けてくれなんて言ってんだもんよ。それに、俺ら歳や役職違えどダチだろ?」

「ちょ、やめてよリュウヤ!別に泣いてなんかないわよ。私」

「悪りぃ。そんで話変わっけど、例のデンジさんは何処なんだ?」


 リオに強く頭を殴られたリュウヤは、ケラケラしながら頭を掻き、もう一人の団員について訊く。

 するとリオは俯いたまま「国王会談の結果待ちで未だに部屋よ」と答えた。


「国王会談?って言うと、アルゴを始めとした連合国が重要な会議をするあの?」

「やはりこの件と、何か関係があるでござるか?」

「ああ。きっと全ての元凶である悪魔、オニキスの話だろう」


 フラッシュが呟くように答えた瞬間、周囲に背筋が凍るような風が吹いた。オニキス、確かに彼はそう言った。包帯で声がこもっていたにしても、奴の名前だけはしっかりと聞き取れた。いや、聞き取れていなければ背筋が凍るはずがない。

 勿論、一同皆耳を疑った。しかしその証拠を見せるように、フラッシュは引き出しから赤色の石と金が混ざり合った塊を取り出して見せた。そう、リュウヤとナノが見つけた例の石だ。


「これって、ウチらの見つけた……」

「コイツは斬撃を与えた際に飛び散った瓦礫が、奴の水晶によって姿を変えたものだ」

「奴の水晶?それってまさか、オーブではないのか!?」


 メアは驚きながら、二人に訊ねた。すると、リオとフラッシュは顔を見合わせた後、ゆっくりと頷き「間違い無いわ」と答えた。

 更に、「赤と、金のオーブだったわ」と付け加えた。それを聞いたタクマとアリーナは、互いに顔を見合わせて青ざめた。

 それもその筈。売ったオーブ二つが、解放目前まで来た状態で現れたのだから、驚くのも無理はない。


「ところで、オニキスはフラッシュさんと戦った後、どうしたんですかい?」

「奴は私をこんな姿にした後、『次はフォーデンだ』と言い残し、去っていったよ」

「ふぉでん?何それ、おでんか?」


 リュウヤは聞き慣れない言葉に首を傾げる。すると、「全然違うわい」とメアにツッコミを入れられた。

 

「フォーデンって確か、ここから北北西にある国ですよね?」

「そうみたいだ。ちゃんと北北西の位置にある」


 地図を広げたタクマは、机の上にそれを広げ、「フォーデン」と書かれた場所を指した。しかし、全く聞いたことのないおタツの吾朗はどんな国なのか想像がつかない様子で、考え込む。

 とその時、外の方から何やら騒がしい足音が聞こえてきた。


「おろ?足音?」

「まずいで!皆、扉から離れて!」


 野生の勘でここに来ると予想したナノは、叫んだ。いきなりのことでよく分からなかったが、タクマ達はナノの指示通りに扉から離れた。

 するとナノの勘通り、扉をぶち破る勢いで一人の男が部屋に押しかけてきた。しかも、よく見てみると、その男はデンジだった。


「デンジ殿!こんなに急いでどうしたでござる!?」

「はい、水でありんす。ゆっくり飲んでおくんなし」

「はぁ、はぁ。すまない」


 デンジはおタツの肩を借り、コップに注がれた水をゆっくりと飲み干した。息の切よう、ヒューヒューと笛のように響く喉の音から、相当急いでいたことがわかる。

 しかし一体、何をこんなに急いでいるのだろうか。いや、答えなんて例のアイツの件以外あり得ない。

 

「国王会談の結果、奴がアナザーと同一人物である可能性が濃厚化した。それにより、奴の賞金は過半数の国王の意見で言い値となった」

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