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第190話 祝勝会は突然に

「さーて皆さま、アリちゃん加入を祝し、はいせーの」

「「「乾杯ッ!!」」」


 ゴルドの飲食店から、元気が良すぎて却ってうるさい声が響き渡る。言わずもがな、リュウヤの声だ。

 アリーナ加入、吾郎の妻が決まった事、無事帰って来れた事、そしてゴルドが生まれ変わった事全てに喜び、リュウヤの提案で「新生ゴルドでパーティーしよう!」という事になったのだ。勿論、司会はリュウヤが務めている。

 すると早速、アリーナはこのチャンスを逃すまいと目の前のピザに食いつき、美味しそうにチーズを糸引かせた。


「アリーナ、そんなに急いで食ってたら喉に詰まらすぞ?」

「(うっさい、美味いんだからいいだろ別に)」

「それにしても、この国は不思議じゃのぅ」

「言われてみれば、皇帝がいなくなったのに……」


 メアの発言で、一同は皇帝もといプラドの事を思い出した。絶対権力者的な立ち位置だったにも関わらず、あの一件から皇帝だの帝国だのと言った話を聞かなくなった。

 それに、あった気がする城もなくなり、ゴルドは素朴な感じの街に変わっている。まさか、あの城も影で作られた幻だったとでも言うのか?

 気になって仕方なかったノエルは、近くを通りかかったウェイターを呼んだ。


「あの、この国って皇帝が居ましたよね?」

「皇帝?あぁ、昨日まであったお城とその主人の事ですね。アレなら今朝、いきなり黒い煙になって消えてしまったんですよ」

「そうそう。それにね、そこの坊ちゃんに負けたユラも、城が消えてから人が変わっちゃって。ねぇ」


 ウェイターだけでなく、近くで食事をしていたマダムも話に入り、当時の不思議な出来事を語る。しかも、マダムの指した所では、体に良さそうな薬を露天販売する清々しい青年──ユラだった人物──が居た。

 やはり、“黒い煙”というワードから見ても、全てはプラドの幻だったようだ。しかし、皇帝が突然居なくなったというのに何故彼らはピンピンしているのか。


「差し支えなければ教えて欲しいでござるが、皆様皇帝の事は……」

「傲慢でアタシらの事なんも考えてない人だったからねぇ、アタシらのひいばあちゃんの代から嫌われてたわよ。何年経っても同じ姿のままだし、君悪がられてた時期もあったわ」


 吾郎が訊くと、マダムは真顔でキッパリと言い切った。しかしその後、不思議そうに頬を撫で「でも何故か、あの人が絶対正義だって、何故か思ってしまっていたのよねぇ」と付け加えた。

 

「なるほど(むぐむぐ)、つまりは(もぐもぐ)、洗脳だな(ごくり)」

「アリーナ、食べるか喋るかどっちかにするでありんす」

「まあでも、要はみんな自由になったって事やろ?ええ事やない」


 ナノは平和になった街を眺めながら、ピザにかじりつく。するとその時、急に窓がガタガタと揺れだした。

 何事かと外を見ると、そこでは異常なほどの風が吹き荒れているのが見えた。

 

「はぁ?こんな時に敵ですか!?」

「折角の食事会、邪魔さしてたまっかよ!」


 いきなりの来客に心を躍らせたリュウヤは、9個目の椅子に立て掛けた刀を取り、開いた窓から飛び出した。


 ──それからすぐ、タクマ達も急いで合流した。やはりまだ強風が続いている。そして、周りの野次馬達は空を見上げて騒ぎ出す。

 空を見上げてみると、なんとそこにはドラゴンが居た。急いでいるのか、翼が風を切る音がここまで聞こえて来る。


「うわ〜、おい見ろよダーリン!ドラゴンだ!ドラゴンだぜ!すげ〜初めて見たぜ!」

「しかし竜が何故、ゴルドに押しかけるでござるか」


 吾朗はアリーナに頭を叩かれながら呟く。確かに襲いかかるにしても、ドラゴンが国一つ滅ぼす為に急いでやってくる必要なんてない。まして、急いで壊さなきゃならないなんて使命感を持っているのか自体怪しい。

 タクマは念のために剣を構え、ドラゴンを睨みつけた。

 すると、ドラゴンはタクマの姿を見つけるや否や、その真上まで移動してゆっくりと降りてきた。


「な、何や?様子が変やで?」

「えーっと何々、どらんたくしぃ?」


 降りてきたドラゴンの首に掛けられた札に気が付いたおタツは、眼を細めて文字を読んだ。「ドランタクシー」と、そこには書いてある。

 

「何じゃそのサービス、初めて聞いたぞ」

「そりゃあそうさ、何せ5日前に始まった新サービスですからね!」

「だ、誰ですか!」

「もう、私の事忘れるなんて酷いじゃない。皆」


 ドラゴンが地面に足をつけると、背中から運転手の男と、リオが降りてきた。

 まさかの乗客に、親友のメアは嘘ォ!と驚いた。


「何だちゃんリオか、アコンダリアの一件あっからつい警戒しちまったぜ。アッハッハ!」

「えっと、誰だあの女?知り合いか?」

「彼女はメルサバのお姫様、リオさんです」

「へぇ……って、えええええ!?」

「まあ、驚くのも無理はないわね。急いでたから……」


 リオは自分の姿を見て、服についた砂埃を払う。よく見れば服はクシャクシャになっているし、髪型も乱れている。

 それに、落ち着いた声色にしては、どこか疲れているような顔をしているようにも見える。


「にしてもリオ、突然ドラゴンに乗って来るなんて、どうしたのじゃ?」

「まさかまた、罪源の仮面が現れたでござるか!?」

「いや、そう言う訳じゃないけど……うっ」


 事情を聞こうとした時、リオは突然泣き出し、崩れるように座り込んでしまった。

 相当怖い事があったようだ。安心させるため、おタツは彼女の背中を摩り、落ち着かせながら何があったのか訊いた。


「一体メルサバで、何が起きたでありんす?」

「実は、フラッシュが……フラッシュが……」

「フラッシュって、あのショボーン仮面の(自称)スーパーヒーロー!?」

「とにかく何かあるのは確実だ。皆、行こう!」


 タクマは早速腕に魔力を溜め込み、メルサバへのワープゲートを開いた。

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