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第188話 仲間の魂だけでも

 ──その頃。

「うぅぅぅ、イヨッシャー!俺らの大大大大、大勝利〜!」

「やったのじゃ!妾達、またやったのじゃな!」

「メアメア、お疲れ〜!」

「これにて一件落着、でござるな」


 勝利を掴んだリュウヤ達は、本当に勝利したと言う実感がまだ湧かないものの、大いに喜んだ。

 そして、リュウヤはボロボロになった刀を鞘に戻し、オーブの落ちた場所へと向かった。そこには、勝利を祝すように光る青い水晶玉が落ちていた。

 何度かタクマに見せてもらった事はあったが、このオーブは前に見せてもらった青のオーブとは何処か違って見えた。


「あれ?ねぇこのオーブ、ホンマにウチらの持ってたオーブ?」

「その筈じゃ。きっと中の悪ーい罪源の魂が浄化されて、本来の輝きを取り戻したんじゃろう」

「それにしても不思議でござるな。一体何故、魔王封印のオーブの中に、こんな禍々しき異形の怪物が封印されているのでござろうか……」


 吾郎はそういえば、と顎に手を当てて考えた。そして、その事に続いて気付いたメアも、確かにと腕を組んだ。


「エンヴォスの名前、確かタナカトス伝説に出ていた、とウォルの医者が言っておった。やはり何か関係が──」

「まーまー、深く考えなさんなってのお二人サン!」


 二人が険しい表情で考え込んでいる時、リュウヤは大きく背中を叩き、オーブを高く掲げた。すると、洞窟の壁が欠け、そこから日の出の光が差してきた。

 それにより、オーブは海よりも綺麗な青に輝いた。


「うわ〜、綺麗〜」

「だろ?その答えだって冒険してきゃいつか答えが分かるんだ。それよりも、まずはタクマ達探さんと」

「そうじゃな。にしても一体、おタツとノエルは何処に消えたのじゃ?」


 メアが呟いたその時、青い光がゲートのように広がり、そこから幽霊船が姿を現した。

 そして、船はゴゴゴ!と音を鳴らし、四人の立つ足場を破壊しながら突き進んでいく。


「そんな事ある!?」

「とにかく逃げるでござる!」

「メアメア!ならここはウチに乗り!」


 吾郎とリュウヤは互いに肩を組み合い、ニニ三脚の要領で助け合いながら逃走し、ナノは虎に変化してメアを乗せ、安全な場所へと逃げた。

 しかし、リュウヤは途中で足を止め、クルリと振り返った。


「リュウヤ殿、何してるでござるか!」

「あの船、もしかして」


 そう呟いたリュウヤは、船に近付き「おーい!」と大声を出して手を振った。すると、リュウヤの勘が当たり、タクマ達が顔を表した。

 そして、おタツのワイヤー型式紙を使って飛び降り、遂に全員集合を果たす事に成功した。しかも、それと同時に乗客を失った船は、先端で塞がれた出口を破壊した。そう、脱出も可能になったのだ。


「リュウヤ、吾郎爺!」

「ナノちゃ〜ん!」

「メアさん!」


 タクマは二人の肩に腕をかけ、おタツはナノに飛びつき、メアとノエルは抱きついた。一つは友情、また一つは愛情、そして一つも友情。


「見てみろよコレ、俺ら四人で傲慢のプラド倒したんだぜ!」

「私、また暴走してタクマさんを──」

「ちょ、タツ姐。ウチも嬉しいけど、撫で過ぎはアカンよ」


 そんな中、一人になったアリーナはブラストからぶん取った歪な手作り懐中時計を見て、静かに笑った。

 しかしそんな喜びも束の間、突然地震が発生した。


「ぐえっ!何だぁ?」

「リュウヤ殿!おろ、これは……」


 上を見上げると、そこから岩が降り注いできた。しかも、その岩は偽物達のように影となって消えていく。

 まさか、この監獄自体もプラドやンゴチガ、基ブラストが具現化した幻だというのだろうか。


「皆、早く逃げるで!」

「はい!皆さん、こっちです!」


 メアとノエルは手を繋ぎ、先を走った。ナノのハンマーとノエルの馬鹿力。少々危険であるのは承知の上だが、オニキスの居ない今、二人なら岩で道が塞がったとしても簡単に道を開く事ができる。

 タクマ達は自然と彼らの事を信じ、出口へ直行した。


【クロフル監獄 二層】

 それからタクマ一行は、来た道を戻る形で逃げ続けた。しかし、監獄の崩壊は待ってくれず、段々と床が崩れ落ちていく。

 それも、最下層の時よりも早く崩れていく。


「アッハハ。なんかコレ、インディーズ・ジョージみてぇだな」

「それを言うならインディ……って、言ってる場合か!どわっ!」

「皆さん、一層の階段が見えてきましたよ!早く!」

「言われなくても、分かっておるのじゃ〜!!」


 メアはノエルの差し伸べた手を取り、二人の次に階段へ到達した。そこから続いて、リュウヤとタツ、吾郎、タクマとゴールインした。

 そして最後に、アリーナが入ろうとしたその時、運悪く踏み入れた足場が崩れてしまった。


「あっ……」


 落下したその瞬間、時間がゆっくりと進むように感じた。まさかこんな所で死んじまうなんて、これも盗み働いた罰なのかね。

 アリーナはゆっくりと目を瞑り、重力に身を委ねた。

 ──親父、やっぱアタシも……


「アリーナ!」

 

 しかしその時、何者かに腕を引き上げられた。まさかと思い見てみると、なんとタクマが彼女の手を掴み、引き上げようとしていたのだ。

 どうして盗み働いたアタシに、迷惑かけたアタシにこんな事を?


「離せ!何のつもりだ!」

「馬鹿野郎!勝手にこんな所で終わらせねぇぞ!まだ聞きたい事が山程……」

「そうかアンタ、アタシ捕まえて賞金貰うつもりだな!そうはさせねぇ!それくらいなら死んでやらぁ!」


 アリーナは銃を向け、タクマを脅した。だが、タクマは銃などお構いなしに本気で引き上げる。

 しかし、力を込めた際の重圧により、タクマの足場も崩れ、一緒に落ちてしまった。


「タクマ殿!」

「ご、吾郎爺!」


 なんと、今度は吾郎が手を掴んだ。更に、奥を見てみると、大きなカブのように吾郎の後ろでリュウヤ達が手伝っていた。


「よく聞けアリーナ!タクマは金なんて興味なぞない!」

「せや!タっくんは、タっくんは相手が誰やろうと助ける、いい人なんや!」

「ま、時折そのせいで馬鹿見ちゃうんだけど。俺は、そんな所が好きでよぉ」

「だから死ぬなんて言わないで、ウチらと生きるでありんす!」

「お願いです、信じてください!」

「皆も、アリーナ殿も、拙者の孫!絶対に、救うでござる!ぬぉぉぉぉ!!」


 掛け声を上げると、吾郎は腕に凄まじい力を込めた。すると、吾郎の筋肉が膨張し、腕の布を破った。

 そして、他の5人の力も含め、タクマとアリーナは無事に引き上げられた。


「ふぅ、なんとか助かりましたね」

「アリーナ殿、怪我はないでござるか?」

「いや、そいつに関しちゃ無事……うっ!」


 アリーナが立ち上がろうとした時、彼女はガクリと左脚から体勢を崩した。やはり怪我をしていた。逃げる際か引き上げる際に岩に擦れてしまったのだろう。

 すると、その事に気付いた吾朗は破れた裾をハンカチ代わりに巻き、アリーナを背負った。


「よし、アリりんもタっくんも救出したし!」

「総員!生きて帰るでありんすよ!」

「「「「おーっ!」」」」


 おタツの掛け声に合わせ、8人は階段を登りつつカチドキを挙げ、一層へと到達した。

 そして、迷う事なく右側へと抜けた。

 しかしその先は、倒れた格子や岩が邪魔をする修羅の道だった。


「立ち止まらず進むのじゃ!そんでもって、美味い飯を食うのじゃー!」

「だってさリュウヤ、俺も何か手伝うぜ?」


 メアの叫びに続いて、タクマは並走するリュウヤに言った。だが、同時に曲がり角から首のないデビルベアが顔を表した。

 そう、序盤でリュウヤが首を斬り落としてから忘れられていた存在。

 とその時、リュウヤはガントレットの宝玉を風の宝玉に取り替え、風の力を解放した。


「承りましたぁ!必殺、今夜は寿司パーティーだ斬りーッ!」


 リュウヤは天井につく程の跳躍力を見せ、そこを蹴ってから縦の大回転斬りを放った。

 すると、衝撃波のような風が巻き起こり、デビルベアだけでなく周りの残骸も粉砕した。


「安直な名前でござるな」

「一々技名考えるのも、楽じゃないですからね」

「でもクマも倒したし道も開けたし、突き進むで!」


 そうだった。こうしちゃいられない!

 タクマ達は、止まらずに走った。角を曲がり、鉄製の扉の前まで行く。

 そして、ノエルの馬鹿力でこじ開け、そこから8人全員、某拡大家族アニメのエンディングのように、脱出した。

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