表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/307

第186話 傲慢の「G」

『ゴルドの皇帝は仮の姿。影の一部でしか存在できなかったが、貴様らの傲慢のお陰でここまで復活できた』

「ウチらのごーまん?ねぇメアメア、傲慢って何や?」

「平気で人を見下したりする、偉そうな奴じゃ。って、誰が偉そうなのじゃーッ!」

「まあまあ落ち着きなされや。んで、俺達の何が傲慢なんだってんだい、皇帝サマ?」


 リュウヤは訊く。すると皇帝は「鈍い男よ」と大笑いした。

 そして、ゆっくりとリュウヤを指し、言った。


『我に勝てるという自信、その自信も傲慢の一つなのだ』

「じゃあ拙者が上空でやられたのは、拙者の太刀で勝つると自信を持った故!?」

『流石は最年長、ずばりそう言う事だ。貴様らが自信を持つ事により、我が傲慢の念は高まり、強くなる』


 そう言うと、証拠を見せるように翼を広げ、骨の翼から刀のような羽根を生やした。それと同時に、リュウヤ達から力が抜かれる。


『特にリュウヤ、貴様の傲慢さには感謝しかない。お陰で全盛期以上の力が溢れ出る』

「んだよ、つまりは全部俺のせいってーのか?」

「リューくん!今行ったらダメや!」

「何もお主だけの所為ではない!戻るのじゃ!」


 メアとナノは飛び出してしまったリュウヤを呼び戻す。しかしリュウヤは、笑ったままプラドに斬りかかる。

 だが、プラドは当たり前のように翼で刀を防ぎ、刀の羽根で斬り上げた。

 そして、目の前で倒れたリュウヤの背中を踏みつけた。すると、痛々しい音が聞こえてきた。


「リュウヤ殿!」

「アッハハ、いってーな。こりゃ骨折れたわ」

『ほぉ、こんな目に遭ってもなお笑うとは、おめでたい奴め!もっと痛めつけてやる!』


 プラドはリュウヤの態度が気に障り、刀を取って突き刺した。

 しかしリュウヤは、クルリと体を動かし、刀を避けた。そして、ポケットから取り出したレモンをプラドに投げつけ、一緒に斬った。

 辺りにレモンの酸っぱい香りが漂う。


「うっ、何やこの臭い!」

「唐揚げにしてやったらかけるつもりだったけど、人肉はごめんだからな。もうここで使ってやるよ」

『き、貴様!よくも我に変なものを!許さん!』

「リュウヤ、怒らせたけど、どうするつもりなのじゃ?」


 メアは呆れながら訊く。するとリュウヤは、ハチマキ用のタオルを取り出し、目隠しのように目を覆った。

 そして、全く違う方に刀を向けて「一丁あがり!」と叫んだ。


「わぁ、こっち向けるな!妾は味方じゃ!」

「悪い悪い。これ全く見えねぇのよ」

『笑わせる!死ねい!』


 リュウヤが何も見えないままブンブンと素振りしていると、プラドが襲いかかってきた。しかも、吾郎の後ろに隠れているナノを狙っている。

 その時なんと、リュウヤがプラドの刀を防いだ。


『何っ!?』

「ナノナノ、メアちゃん、今だ!」

「まかせい!〈メガ・ドゥンケル〉!」

「オーライ!〈マムート・プレス〉!」


 リュウヤの合図に合わせ、メアはプラドの頭上に闇魔法を放った。そして、小鳥に変身したナノは更にその上で変身を解除し、闇魔法と一緒に落下した。

 そして、辺りに砂煙が巻き起こる中で、リュウヤは斬りつけながら抜け出した。


「〈剣崎流・微塵切りの舞〉!」

『まだだ、まだ我には片方の翼が残っている!』


 プラドの右翼は、微塵切りの舞により斬り落とされてしまった。しかし、残っている傲慢の力で左翼を強化し、リュウヤの背中を狙う。

 その時、同時に砂煙が突然左右に避けた。そして、中から抜刀の構えをする吾郎が現れた。


「〈天照・陽炎の太刀〉!」

『させぬ!はぁっ!』

「そんな、ここまでやって、じぃじの太刀を防ぐなんて!」


 吾郎は抜刀して攻撃するが、プラドの羽根によって防がれる。

 しかし、リュウヤは目隠しをしているにも関わらず、後ろから奇襲を仕掛けた。そして、吾郎とリュウヤの刀がすれ違い、鍔迫り合いに勝利した。


「俺が言うのもアレだけど、よそ見は厳禁だぜ?」

「〈王手〉!」


 吾郎はリュウヤに続いて叫び、納刀した。それにより、プラドの羽根は切り刻まれた写真のようにバラバラになる。


『いいやまだだ!貴様の傲慢を……!?』


 激昂したプラドは、もう一度力を溜めようと試みる。しかし何も起こらなかった。

 おかしいと思い、また試す。しかし何も起こらなかった。


『何故だ!何故力が出ない!』

「実は俺さ、暗所恐怖症なのよ。だから今、すげー怖い。チビっちゃうくらい怖いなう」

「唐突すぎる意外な事実!にしては、平気そうじゃのう」

「我慢してるだけよ。でも、これくらい自信無くしちゃえば、鳥ちゃんの言う傲慢も吸収できないと思ってさ」

「あえて心眼を使って自信を削ぐ事で、相手の強化も防ぐとは、流石はリュウヤ殿でござる!」

「あれ?でもでも、それならレモンは何だったん?アレ結構鼻に来るから嫌いなんに……」

「めんごめんご。でもそれは、どの辺に居るか知りたかったからなのねん」


 笑いながら言うと、リュウヤは後ろを振り返り、不意打ちを仕掛けてきたプラドの攻撃を弾いた。それと同時に、レモンの香りも漂う。

 そして、腹に隠し包丁の舞を食らわせ、弱点であるオーブを露出させた。


「オーブじゃ!皆、一気に畳みかけるぞ!」

「御意、行くでござる!」

「「「「おう!」」」」


 四人は声を揃えて言い、位置についた。

 まずはリュウヤが踏み台となり、ナノとメアが攻撃をしかける。投げナイフで周りに障害物を作り、動きづらくなった所にハンマーを落とし込んだ。

 だが、プラドは残る力を使い、象の足に抵抗する。


『その技はもう見切った!』

「それはどうかの?〈秘術・命取り〉!」


 メアはハンマーに気を取られている隙に短剣で心臓──オーブ──に傷をつけ、怯ませた。

 ここでメアとナノは一旦引き、バトンタッチでリュウヤと吾郎が飛び込む。


「そこに居るのは分かってまっせ!」

「覚悟ッ!」

『そう上手くはやらせぬ!』


 しかしプラドは、水魔法による水圧で飛び上がり、二人の攻撃を避けた。それを撃ち落とすため、引いたナノとメアは爆裂魔法とミサイルで攻撃した。

 だが、プラドには当たらず、周りの岩壁に被弾する。


『何処を狙っている!次は我から行くぞ!』

「しまった!妾の魔法から吸い取られる!」


 メアは絵に描いたように慌てふためく。その様子を見たプラドは勝利を確信し、全ての力を両手に集める。

 だがその時、地面の方から何かが近付いてくるような音が聞こえてきた。

 タンタン、シュタタッ、まるで忍者がやって来るような静かな風切り音が鳴る。


「なーんて、これも計算のうちでござる」

「さーておっさん、おまんの罪数えな」

『な、何ーーッ!』


 そう、ナノとメアが攻撃を外したのはわざと。欲しかったのは、その後に崩れてできる岩だったのだ。リュウヤ達はそれらに乗り継ぎ、プラドと同じ高さまで登ったのである。

 そして更に、メアも短剣を持って現れ、プラドの油断を突いて攻撃を開始した。

 一度攻撃しては壁を蹴り、誰かが攻撃してすぐにまた攻撃してを繰り返す。斬り方は適当だが、一撃一撃はしっかりと重い。


「のじゃーッ!」

「ぬおおおお!」

「そいやっさ!」

『くっ、ぐはぁっ!な、何故我が……こんな目に……』

「「「〈三重連撃奏・乱切り蘭舞〉」」」


 三人は偶然あった岩の出っ張りの上に乗り、気持ちよさそうに技名を言う。

 すると、プラドは無惨にも飛び散り、中央には傷ついたオーブだけが残った。


「ナノナノ、今じゃ!」

「おう!まっかせーい!」


 振り返ると、コウモリに変身していたナノが降下し、ハンマーのヘッド部分に乗りながらオーブと連結する。そして、そのまま隕石のように落下した。

 それによって、辺りに衝撃波が走り、粉々に飛び散ったオーブはプラドの閲覧注意級の残骸と共に集結し、綺麗なオーブへと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ