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第185話 蝕む蔦と業火の中

『《リーフィ》』

「ぐっ、うぁぁ!」


 タクマの肩から、無数の蔦が皮膚を破って生えてきた。更にそれは、柵に絡みつき、宿主の体を拘束した。

 だが、それでは終わらず、段々と腕の感覚も無くなっていく。このままでは左腕が完全に機能しなくなってしまう。

 焦りを覚えたタクマは、剣で腕の蔦を切除しようと試みた。しかし、切っても切っても再生し続け、一向に収まる気配が見えない。


「な、何が起きてんだ!?」

『鈍感な奴め、まだ気付かぬのか』

「っ!アリーナ、危ない!」


 おタツはアリーナを押し倒し、ブラストの攻撃を避けた。続けて第二撃も、体を反対側に寝返らせて回避した。

 

「肩の弾を発芽させようなんて、そんな真似させないでありんす!《氷結の術》!」

「冷たっ!テメェ、何すんだ!」


 アリーナは肩に当てられたおタツの手を弾き、冷えた肩を温めた。しかし、その行動が災いし、ブラストのリーフィを食らってしまった。

 ──もうダメだ、アタシもタクローみたいに腕が……

 と思いきや、何も起きなかった。薄々覚悟はついていたが、一体何が?


「おいアンタ、こりゃどう言った魔法なんだ?」

「魔法じゃなく、植物は急激な気温の変化に弱いでありんす。だから、こうする事で……はぁっ!」


 おタツは再度氷結の魔力を溜め込み、今度はタクマの蔦を凍らせた。すると、タクマを苦しめていた蔦は温度の変化に耐えきれず、そのまま衰弱して消滅した。

 そして、タクマは復帰と共にブラストに反撃し、ノエルを守るように武器を構え直した。


『チッ、こうなれば仕方あるまい!』

「コイツ、一体何する気だ!」

「危ない、避けろ!」

『船と共に黒焦げになれ!《ギガ・フレア》!』


 ブラストは轟々と燃え盛る火炎弾を生み出し、船に放った。タクマ達は、ノエルを背負って何とか避け切る事が出来たが、すぐに炎が後を追ってきた。

 暴風雨が降り注ごうとも、炎が消える気配はない。火力が強すぎるためか、雨水が蒸発してしまっているのだ。


【船内】

「うわわわわわわ!どうすんだよコレ!このままじゃアタシら皆マジで焼け死ぬぞオイ!」

「落ち着いてくれアリーナ!そんなに騒がれたら、俺も落ち着かなくなるじゃねぇかよぉ!」

「あーもう、二人とも落ち着くでありんす!」


 熱気に包まれ、落ち着きを無くしてしまった二人に対し、おタツはゲンコツで頭を冷やさせた。

 

「こうまで大胆になったと言うことは、罪源の仮面も弱りつつある証拠。あと少しの辛抱でありんす」

「けどコレ見ろよ!もう時間ねぇぞ!」


 アリーナは叫んだ。船内に隠れていても、ブラストがここにやってくるのも時間の問題。いや、それ以前に炎が追いついて火の海の中に閉じ込められるのが先か。

 それにしても、自分の船もお構いなしに焼き払うなんて、大胆にも程がある。

 ん?お構いなし……?

 その時、タクマに閃光走る。


「おタツさん、アリーナ、ちょっと避けてて」

「タクマさん?何するつもりでありんす?」


 タクマは二人を極限まで離し、ノエルの耳元に顔を近付けた。そして、呪文を唱えるように、何かを囁いた。

 耳を傾けてみても、タクマの声が小さすぎてよく聞こえない。

 するとその時、タクマの囁きでノエルが目を覚まし、タクマの顔面に痛恨のパンチをお見舞いした。更に、滝登りをする龍のようなアッパーをお見舞いし、一緒に船上へと飛び上がった。


「何がどうなってんだ?なぁ、教えてくれよ!」

「さ、さぁ。ウチにも分からない。けど好機、早く来るでありんす」


【船上】

『船内に居てはもう死は免れまい。さて、我もそろそろ……』

「だ〜れ〜が〜、【自主規制】じゃゴラァーッ!!」

『む?うおぁっ!』


 勝利を確信していたその時、ブラストの立つ床が破られ、そこから凄まじい何かが下から落ちるように、飛び出した。

 そして、いきなりの出来事に対応できなかったブラストは、ついサーベルを放り投げてしまった。

 しかも、破られた穴からアリーナとおタツが現れた。


「アチチッ!おい、もっと安全に運べねぇのかよ!アタシのシクヨロマントが燃えたじゃねぇか!」

「知らないでありんす。焼け死ぬよりはマシでありんしょう?」

『動くな!動いたら撃つ!」


 ブラストは残った魔力で魔導銃を生み出し、2人に向ける。もう後がないとはいえ、ここまで来てはもう小物のようにしか見えない。

 しかし、今の彼は自暴自棄と言っても過言ではない。きっと動けば本当に撃つし、動かなくても船と一緒に焼け死ぬ為の時間稼ぎに利用される。

 

「親父、もうやめてくれよ」

『何?』

「ここまでして、本当に1番になる気あるのか?こんなの、ただの姑息な奴のやり方だぜ?」

『黙れ!我は1番だ!依然変わりなく!』


 アリーナに指摘され、怒ったブラストはアリーナの膝に銃を撃った。だが、放たれた弾はおタツの式紙に防がれ、逆に一撃を受ける。


「貴方が今ここで足掻いても、既に死んでいるという現状は変わらないでありんす」

「ここまで来ちまったら、ただ虚しいだけだ。終わりにしよう」

『ええい黙れ!貴様のような奴に、我の何がわかる!死ね!』


 そう言うと、ブラストは炎の弾を乱射した。アリーナとおタツは防御体制に入ろうとする。

 しかしその時、空から彗星の如くノエルが落ちてきた。


「テメェか!【自主規制】出しやがれ!ちょん切ってやるぞコラァ!」

「どわはっ!」

『ぐおっ!』


 ノエルは落ちてくると、ボロボロになったタクマを投げ捨て、ブラストに殴りかかった。

 そして、ブラストを振り回し、その風で燃え盛る炎を消化した。


「お、おい!折角お涙頂戴ムードでトドメ刺そうとしてたのに、なんて事すんだい!」

「アリーナ、それ以上言うのはやめといた方がいいぞ……」

「タクマさん、貴方一体ノエルちゃんになんて言ったでありんす?」

「あぁ、実は……」


 おタツに訊かれたタクマは、口の血反吐を吐いてから、上空で起きた事を話した。

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