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第183話 深き穴の幽霊船

『ならば第二のステージで、もっと楽しませてもらおうか!』


 ブラストが言うと、海面の底から巨大な船が現れた。帆や船体は今にも崩れてしまいそうなほどボロボロで、船首から船尾にかけて緑色の藻が生えている。

 更に、その船にはかつての仲間だったであろう人骨の残骸が張り付いていた。

 そして、ボロボロになった帆には、擦れて消えかかっているものの、子供の落書きのようなドクロマークが描かれていた。


「な、何なんですかあれは!」

「まさか、こんな洞窟の奥底に船が眠っていたなんて……」


 おタツは驚きが隠せず、口を押さえる。

 すると、ブラストは驚く様子に満足したのか、笑いながら船の中へと消えた。

 そして、タクマ達を誘うように、透明な階段が現れ、そこに朽ち果てたレッドカーペットが敷かれる。


『さぁ来い、どうせ戦うのなら相応しきフィールドで戦おう』

「う、うぅ。この雰囲気、あんまし好きじゃないんだけどなぁ」

「ったくじれったいねぇアンタら!男ならビシシッと動かんかーい!」

「へ?ど、どうして私までー!」


 アリーナは、怖気付いていたタクマとノエルの腕を掴み、強引に幽霊船へと乗り込んだ。そして、後を追うようにして、おタツも乗り込んだ。

 しかしその時、運悪く足を踏み外してしまい、忍者刀が腰から抜け落ちてしまった。更に、おタツが転んで船上に上がると、船の重みで地面が崩壊し、海の底へと沈んでしまった。


「ウチの忍者刀が……」

『ようこそ、我が船アリエルへ。どうせ死ぬなら、海の底より我が船の中で息絶える方が良いだろう』

「何が『良いだろう』だ!こんなボロっちい泥舟でおっ死ぬくらいなら真っ青な海の底でサメの餌になった方がマシだい!」

「そうですよ、せめて綺麗なら……って、死んでたまるもんですか!」


 ノエルとアリーナは、ブラストに反論する。すると、強い波が押し寄せ、船が強く揺れ出した。更に、洞窟内であるにも関わらず、凄まじい雨が降り注ぐ。

 まるで嵐の中に閉じ込められたような、そんな気分だ。そう思い空を見上げてみると、禍々しいダークグリーンの空が一面に広がっていた。


『さて、ムダ話はもう終わりだ。我がサーベルで、海の藻屑にしてくれる!』


 そう言うと、ブラストはサーベルの周りに水を纏わせ、ノエルに斬りかかった。ノエルは事前に《共鳴》で水の気配を察知していたため、軽い身のこなしで攻撃を避けた。

 しかし、避けた先の木が腐っていたせいで、ノエルは船内に落下してしまった。


「ノエルちゃん!」

『この期に及んで仲間の心配か。実に愚か!《リーフィ・マグナム》!』

「くっ、強い……」


 ブラストはフック状の手を木属性のマグナムに変えつつ、おタツに斬りかかる。

 おタツは二本の苦無でサーベルを防ぐが、ブラストの一撃が重く、押し負けそうになる。やはり忍者刀を落とした弊害か。

 

「今です、タクマさん!」


 勝てないと悟ったおタツは、諦めずに抵抗しつつ、タクマに合図を送った。


「はいよ!はっ、〈閃の剣〉!」

「アタシも忘れんな!アリーナビュート!」

『そこか。フッ!』


 タクマはメインマストを支えるロープを利用して突撃し、アリーナは敵が背中を向けたと同時に鞭を放った。

 しかしブラストは、おタツを力で延した後、予測していたように二人へ発砲した。


「ぐっ!」

「タクロー、お前肩……」

「平気平気、まだ利き手じゃない方の肩だからセーフだ!」

「前向きか。まあアタシも行けるってんだい!」


 タクマは左肩から流れ出る血をそのままに、襲いかかるブラストに対抗する。

 そして、アリーナもサーベルを取り出して同時攻撃を仕掛けた。それだけでなく、ノエルも甲板をぶち破り、二人が離れた所に拳をお見舞いした。


『フフフ、フハハハハ!いいぞ、久々に沸るわい!』

「させません!《疾風の術》」


 おタツは体制を整えつつ動き出し、ブラストに凄まじい風圧を浴びせた。それにより、ブラストは飛ばされる。

 だが、飛ばされたも束の間、メインマストの紐を利用して舞い戻り、サーベルに力を溜め込んだ。


「この気は!皆さん、避けてください!」

『食らえ、《メガ・ウォーター》!〈ウェーブ・クライシス〉!』


 ブラストは水魔法を放った後、その魔力をサーベルに乗せて大波のように素早く斬り上げた。動向的に、タクマやおタツの方へと行く、誰もがそう予想して防御態勢に入った。

 しかし、ブラストは急に軌道を変え、先に避難していたノエルを斬り上げた。


「あ……」


 ザバッ。やかましいくらいに雨音が響く船上に、柔らかい体が切り裂かれるような鈍い音が響いた。ノエルは宙を舞い、真っ赤な鮮血と共に、可愛い服だったものの断片を撒き散らした。

 幸いにも致命傷ではないようだが、タクマと一瞬目が合うと、安心したように口角を上げ、白目を剥いた。


「っ!ノエルー!」

「バエル、おいバエル。何寝てんだ」


 アリーナは顔を青ざめさせ、ノエルの頬を何度も叩いた。しかしノエルは、頭から血を流し、白目を向いたままで何も起きなかった。


「そんな、ノエルちゃんが……」

『その小娘、水属性の《共鳴》使いと見た。故に、まずその小娘から潰させてもらった』

「テメェ、よくもノエルを!」

「待てタクロー、今行ったら!」

『犬の分際で、諦めの悪い』


 言うとブラストは、タクマの攻撃を避けつつ、被弾した肩に手を当てた。

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