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第182話 驕り高ぶる梟の罪源

「しまった!罪源の仮面が復活するでござる!」

「メアちゃん、ナノナノ、俺がOKするまで隠れてな」


 リュウヤは襲いかかる鳥の脚を刀で防ぎつつ、吾郎に合図を送りながら叫ぶ。

 吾郎は防いでいる間に爪を斬り落とし、続けて脚にも連撃を与えた。しかし、脚は鉄のように硬く、爪のように簡単には斬れなかった。


『我を気安く呼び出す者は誰ぞ、吾輩が影の魔術師であることを知ってか?』

「そんなの知る訳ないじゃろ!無名のくせに豪語してるの、正直寒いのじゃ!」

「せやせや!大人しくせいへんと、そのあんよ手羽先にしたるで!」

『てば?フン、やれるものならやってみるがいいわ』


 言うと、海面からゆっくりと巨大なフクロウが現れた。目にはコウモリのような仮面を付け、嘴は中世の鳥仮面のように鋭く尖っている。そして、背中にサンバ衣装のような孔雀の羽を携え、ナイフのような羽根を持つ。

 その全身凶器と言わんばかりの姿に、ナノは腰が抜けて倒れ込んでしまう。


『吾輩の名は傲慢のプラド、罪源の仮面にして影の魔術師であるぞ!』

「ソイツがどうした!もう嫉妬と色欲の野郎ぶっ飛ばした俺らにとっちゃ、テメェなんざ怖かねぇ!」

「リュウヤ殿、足震えてるでござるが……」

「うっさいうっさい!鶏肉はちゃんの中まで火ぃ通せば怖かねぇ!」


 リュウヤは刀を握りしめ、男前な表情で言うが、足は産まれたての子鹿のようにガクガクと震えている。

 やはり、鶏肉に当たったというトラウマが今も響いているようだ。


「仕方がない、ならばここは妾から一発行かせてもらうのじゃ!」


 男共には任せてられない。そう思ったメアは真っ先に動き、コウモリの面に向かってナイフを投げた。

 しかしプラドは、平気そうに鼻で笑い、ナイフを食べてしまった。すると、プラドの羽根が真っ黒に変色した。


『我が鋼鉄の羽根をくらえ!〈デビルスコール〉!』


 プラドは飛び上がり、空からナイフの羽根をぶち撒けた。それは雨のように絶え間なく降り注ぎ、リュウヤ達を傷つける。


「そんな、妾の攻撃が効かぬじゃと!?」

「きっと鉄を喰らう事で力を強くする能力を持っているみたいでござるな。ぐっ!」


 吾郎は降り注ぐナイフを刀で弾くが、女子達を守るのに必死になっていたために、ナイフが頬を切った。

 そして、ナイフの羽根が尽きたのか、雨が止んだ。しかし、プラドは一向に降りてこない。


「ウッソだろお前、降りてこいバカヤロー!」

『貴様らのようなトラッシュ共の言う事を聞くわけがなかろう!吾輩は出世のためなら、どんな汚い手段だろうと使ってやるのだ!』

「くーっ、一々腹立つ言い方しやがってー!許さへんで!」


 ナノは頬をぷくーっと膨らませ、天井スレスレを飛び回るプラドを睨みつけた。

 するとその時、リュウヤは「いい事思いついた!」と、ナノのハンマーを見て言った。


「リュウヤ、どんな作戦なのじゃ?」

「まあ見てなって。メアちゃん、この投げナイフ結構借りるぜ」

「こんな量、一体どうする気でござるか?」

「それは見てからのお楽しみってな。さあナノナノ、俺を思いっきりハンマーで殴り飛ばしてくれ!」


 メアから数十本のナイフを借りたと思いきや、リュウヤはいきなりナノに尻を向けてそう言い出した。

 一瞬場が凍りつく。だが、ナノはリュウヤを信じ、リュウヤの尻を思いっきり殴り飛ばした。それにより、リュウヤは高く飛び上がり、プラドが飛んでいる位置まで来た。


『なっ、貴様何故!』

「さあ覚悟しな鳥ちゃん!俺がチョチョイのチョイっと、調理してやらぁ!」


 リュウヤは近くの壁を蹴り、プラドと鍔迫り合いを始める。

 見上げると、当たり前だが暗い天井が広がっている。しかしその中に、凄まじい光が現れては消え、現れては消えを繰り返している。


「しかし一体、妾のナイフをどうするつもりなのじゃ?」

「……おろ?」


 とその時、上空から一枚の小さな紙が落ちてきた。そこには、殴り書きで「吾郎」と書かれている。

 

「手紙やな。なんて書いてあるん?」

「えーっと、ふむふむ。なんとっ!」

「で、要件は何だったのじゃ?」


 メアは訊いた。しかし吾郎は、なんと書いてあったのか教えず、刀を握り直して出口側の壁へと駆け出してしまった。

 その頃、鍔迫り合いをしているリュウヤはと言うと……


『ええいしつこい!まだ抵抗するか!』

「勿論、アンタが降参するまで、俺は斬るのをやめ……やめ……あり?」


 攻撃に没頭していたリュウヤは一瞬我に帰り、空中に居ることを確認した。その瞬間、それまで普通に空中で戦っていたリュウヤが落下した。

 アニメのように、クロールや平泳ぎのような動きで頑張って戻ろうとするが、呆気なく落ちてしまった。


「どわぁぁぁぁ!!」

「リューくん!」


 ナノの叫び声が洞窟の中に響く。しかしリュウヤは、まるでこの事を待っていたかのように無邪気な笑みを浮かべる。

 するとリュウヤは、回転しながら借りたナイフを投げた。一本一本均等な位置に、田植えをするように、ナイフを壁に刺していく。

 

『雑魚め、もう自暴自棄になったか』

「いや、それはまだ早いでござるよ、プラド殿」


 何事かと下を見ると、吾郎がナイフを階段代わりに登ってきていたのが見えた。

 そう、リュウヤが空中戦をしていたのは単なるフェイク。落下した際にナイフの道を作り出し、吾郎に叩かせるのが本来の作戦だったのだ。


「なるほど、よく考えついたものじゃ」

『小癪な真似を!これでもくらえ!』


 プラドはナイフの羽根を飛ばし、吾郎を撃ち落とそうとする。しかし吾郎は、逆に飛んでくるナイフを利用して、プラドの前まで行く。

 そして、プラドの右翼に刀を振った。


「……がはっ!」

「嘘、じぃじ!じぃじが!」


 なんと、吾郎はプラドにやられ、血に塗れた状態で落下してきた。

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