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第181話 影魔獣の大海賊

「はいはい、その辺にしなんし。来るでありんすよ」


 おタツが言うと同時に、カチンコは黒い塊に姿を変えて、男へと姿を変えた。

 そして、その姿を見たアリーナは、「嘘だろ」と呟き、口に手を当てた。


「お、親父!どうしてここに!」

『誰かと思えばアリーナ、久しぶりだな』

「え、お父さん!?」


 ノエルもまさかの真実に目を丸くする。しかしよく見れば、キャプテンハットに立派な黒髭、骸骨刺繍の眼帯、フック状の手と、イメージ図のような特徴がある。

 言われてから見ると、アリーナの父親だとしても違和感がない。


「まさか、ミコトさんと同じく、アリーナの記憶から生み出された影でありんすか?」

『いいや、我は本物だ。本物の大海賊、キャプテン・ブラスト。そして、我こそが第二の影魔獣ンゴチガだ』

「んごちが?何バカ言ってんだい親父!」


 アリーナはブラストと名乗る男の胸ぐらを掴んで言う。するとブラストは『黙れ!』と怒鳴り、アリーナの頬にビンタを与えた。

 アリーナは頬を抑え、何故叩かれたのか分からず硬直する。


「アリーナ!ブラスト、アンタ親父だろ!娘になんて事するんだ!」

『アリーナの言う通り、我はアリーナの父だ」

「じゃあ、何で殴ったりするんです!」


 ノエルは杖を構え、ブラストに向かって叫んだ。それに対しブラストは『愚問だ』と鼻で笑い、ノエルに風魔法を放った。

 呪文すら唱えてないのに飛び出した風は、最も簡単にノエルを吹き飛ばした。


「きゃあっ!」

「ノエルちゃん!〈網漁の術〉!」


 おタツはあやとりのように糸を絡め、ノエルをキャッチする為の網を作る。

 するとブラストは、顔をタクマとアリーナの方に向け、理由を教えた。


『それは邪魔だからだ。我にとって、他の海賊はゴミ同然。例えそれが娘だろうと、我よりも上に立とうとする海賊は皆粛清するまで』

「つまりは、常に1番であるために、ここに巣食っていた魔獣の力を得たというわけでありんすな?」

「そんな、親父は誰も超えられない最高最大の大海賊だって聞いたのに……だからアタシも海賊になったのに……」


 アリーナは真実を知ったショックで、自然と涙が零れ落ちる。憧れていた男に裏切られたのが、よっぽど応えたのだろう。

 タクマはそっと背中を撫でながら、ブラストを睨みつけた。


『我は常に頂点に立つ男だ。それを保ち続けるならば、手段は選ばない。例えそれが、汚いやり方だとしてもだ』

「だからって、実の娘を殴る理由にはならいだろ!」

「そんなの、父親失格です!」

『はぁ、実にくだらない。時間の無駄という言葉を知らない馬鹿はこれだから困る』


 ブラストは大きなため息を吐き、やれやれと頭を抑えた。

 すると、ブラストはサーベルを引き抜き、タクマを斬りつけた。


『海賊ではないが、あのお方のため。我が直々に貴様らを始末してくれる』

「そうはさせない!爆散手裏剣!」

「よし!アリーナ、今のうちに……」


 砂埃で前が見えなくなった隙に、タクマはアリーナの肩を担いでブラストから離れる。

 すると、アリーナはタクマと共に歩きつつ「なぁタクロー」と言った。


「何で助けんだ?」

「さぁ、何でかな」

「きっといつか、わかると思いますよ」


 ノエルは言いながらアリーナを寝かせ、頬に薬を塗った。

 するとその時、おタツを怯ませたブラストが、こちらに向けて闇魔法を放ってきた。タクマは剣に風の力を宿しつつ、闇魔法をコピーした。


『話は終わったか?この女だけでは物足りぬ。せめて、雑魚なりに足掻くがよい』

「タクロー、バエル、そこどきな」

「アリーナさん、まだじっとしてください。それと私はノエ──」

「アンタはもうアタシの知ってる親父じゃないらしいからな、だったら躊躇いなくやれるってもんだぜ」


 アリーナは右手にサーベル、左手に銃を構えてブラストに豪語した。

 それに続いて、タクマ、ノエル、そしておタツと並んで武器を構える。


『四人がかりとは、面白い。さあ、我を存分に楽しませてみせ──』


 ブラストが傲慢な態度で言っていると、話の途中で撃ち抜かれてしまった。驚いて振り返ると、アリーナが真顔で銃から出る煙をフッと吹いた。


「ちょ、アリーナさん?流石に話の途中で撃つのはダメですよ!」

「だってー、このおっさん話長いんだもん!」

「父親じゃないと割り切った途端、結構薄情なのでありんすな」

『ふざけるのも大概にしろ、このクソガキ共!大人を怒らせた事、後悔させてやる!』


 出鼻を挫かれたブラストは怒りに震え、アリーナに斬りかかった。

 しかしアリーナは、恐れる事なくサーベルで対抗し、ブラストを押し返す。

 

「爆散手裏剣!」

「せいやぁぁぁっ!たぁっ!」


 おタツの投げた爆散手裏剣はブラストに刺さると同時に爆発し、煙の奥からノエルの一撃が姿を表した。

 だが、ブラストは靴に仕込んだ銃の反動を利用して、ノエルの攻撃を避けた。そして、ノエルの一撃は地面に当たり、大きな亀裂を作った。

 しかも、亀裂からじわじわと海水が溢れてくる。後一発でも与えれば壊れてしまいそうだったが、今となってはもういつ壊れてしまうのか分からない状態にある。


「うわーッ!おいお前、何壊してくれてんのちょっとー!」

「ありゃりゃ、やっちゃいました」

「じゃないでしょ!てか手痛くないの?」


 タクマは慌てふためく隙を突いて攻撃してくるブラストと剣を交えつつ、ノエルの手を心配した。

 ブラストの一撃一撃が重いせいか、防ぐ度に溝が深くなっていく。それに、今立っている足場が不安定で、戦いづらい。

 とその時、ブラストが攻撃の手を止め、海面付近に撤退した。それと同じくして、タクマの足場が崩壊する。


「危ない!〈式紙・一旦木綿〉!」


 足が海水に落下した刹那、タクマの体に巻物のようなものが巻きついた。何とか助かった。

 そう思った矢先、一旦木綿は雑にノエル達の前に投げ捨て、炭に消えた。


「ごめんなさいねタクマさん、あの子可愛くないものには容赦がなくて」

「で、でも助かったから。サンキューです」


 タクマは鼻血の垂れる鼻を抑えながら礼を言った。


『フハハハハ!面白い、こんな境遇でもなお仲間を助けるとは。ならば第二のステージで、もっと楽しませてもらおうか!』

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