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第180話 奪い奪われ

【最下層】


「くそっ、行き止まり!ツいてねぇぜ畜生!」

「さっさと観念しやがりください!もう逃げられませんよ!」

「さぁ、盗んだものを返すでありんす」

「誰が返すかバーカ!」


 ノエルとおタツは強く言い、アリーナに飛びかかる。だがアリーナは、バレエを踊るように緩やかな動きで2人を避ける。

 更に続けて、ナノとメアが奪い取ろうと動くが、メアの奪い取ったオーブはそこら辺の石とすり替えられ、ナノは頭を押さえられた。


「クーッ!けどタクマ、今じゃ!」

「おう!ハイヤーっ!」


 メアの掛け声に合わせ、タクマはアリーナの隙を突いてオーブを奪い返した。


「やるじゃねぇかタクマ!さっすが主人公!」

「さあタクマ殿、こっちに渡すでござる!」


 最深部の出口付近で、リュウヤと吾郎は両手を挙げて待っている。タクマは2人の手に目掛けてオーブを投げ渡そうとした。

 しかしその時、アリーナがタクマの足を踏みつけた。


「あだーっ!」

「隙だらけだぜタクロー!」

「そんな、オーブが飛んじゃいましたよ!」


 青のオーブはタクマの手から離れ、天井へ真っ直ぐと飛んでいく。とその時、絶対に譲らないため、おタツが飛び上がった。それと同時に、アリーナもヒールの仕込み銃を利用して飛び上がる。

 そして、2人がオーブの中心でぶつかり合った瞬間、青の閃光が走る。


「うっ、ウチもここまででありんす……」

「タツ姐!無理したらいかんで」

「オーッホッホッホ!これでこの石っころはアタシの……石っころ!?」


 アリーナは奪い取ったオーブ、もといただの石を見て驚く。おタツはその様子を横から見て、静かにガッツポーズを取りながらナノにオーブを託した。

 そして、アリーナが探しているうちに、抜き足差し足で持ち逃げを試みた。

 

「そろりそろり……ウチはニンジャ、ウチはニンジャ……」

「あ!待てこらガキ!そいつはアタシのだ!」

「げっ!逃げるが勝ちやー!」


 だが、見つかった。ナノは自慢の足で逃げようとしたが、アリーナに追いつかれそうになった。アリーナも、足が速かったのだ。

 それでもナノは必死になって走り、盗られる寸での所でノエルに投げ渡した。


「ノエちん!後頼んだで!」

「よし!ノエル、次はこっちじゃ!」

「そ、そんな事言われてもあんな……」


 ノエルは走りながら言い、後ろを振り返る。そこには、鬼のような形相で追いかけてくるアリーナの姿があった。

 別に怖くはない。しかし、何かが凄まじい勢いで追いかけてくるとなれば、誰でも恐怖心を抱いてしまう。そのためノエルはついには泣き出してしまった。


「うわぁぁぁ!メアざんだずげでぐだざい!」


 ノエルは前が見えないまオーブを放り投げた。それは殺人級のデッドボールのように飛び、メアを通り越してリュウヤ顔面にクリーンヒットした。


「ぶへぇっ!」

「しまった!届かぬでござる」


 リュウヤの顔面を直撃したオーブは、吾郎を避けて上空に飛び上がり、またタクマのもとに戻った。

 しかし、同時にアリーナもオーブを掴んだため、激しい取り合いとなった。


「アタシのオーブだ!返せー!」

「違うわ俺らのだ!」

「あーたーしーのーだー!」

「おー!やったれやったれ!頑張れタっくん!」


 2人はお互い譲らない闘いを繰り広げた。

 するとその時、黒い影が入り口から現れた。よく見るとそれは、オニキスだった。


「オニキ……ぐわぁっ!」

「きゃっ!んもうエッチ!」

「ならば間をとって、この俺が貰い受けてやる!」


 オニキスは剣を引き抜き、2人の間にあるオーブを斬りつけた。するとオーブは勢いよく地面に叩きつけられ、元気よく飛び跳ね、近くの海面にチャッポー!と音を立てながら沈んでしまった。


「「あーーーーー!」」

「うむむ、この深さでは取れないでござるな……」


 吾郎は取り戻そうと我先に飛び出したが、深い青に染まっている水辺を見て呟いた。

 不幸にもオーブも青、電気すらないためどの辺にあるのか、どの程度の深さなのかも分からない。その状態で飛び込むのは、自殺行為に等しい。

 そして、肝心の戦犯であるオニキスは、何も見てないフリをして顔を背けた。


「ちょっとアンタ!なんて事してくれたんだい!」

「オーブが海に落ちたじゃあないか!どう責任取るつもりなんだ?」

「知るか。それより、お前からあの石の匂いがする。よこせ」


 オニキスは反省する素振りも見せず、アリーナの大きな胸に触れた。オーブで胸の傘増しをしていると勘違いしているらしい。

 勿論アリーナは怒り、オニキスの首に鞭を回し、力一杯締めた。しかし、オニキスは影に身を潜めて鞭の呪縛から逃げ出した。


「うわ女もどき、女になりたいからってそんな真似するのか?」

「サイテー!女の敵でありんす!」


 メアとおタツは仲良く抱き合いながらオニキスを睨んだ。オニキスは一瞬ぐぅの音を漏らしたが、首を左右に振って「タヌキ、トカゲ、その顔やめろ!」と逆ギレした。

 するとその時、洞窟内が大きく揺れた。


「どわぁ、何じゃあ!?あ、皆おはよーさん」

「何呑気なこと言ってるんですか!早く逃げないと──」

「悪いがここは通行止めだ!ざまぁみろ!」


 振り返ると、出口が封鎖されていた。しかも、奥からオニキスの声が聞こえてくる。

 普段はどうでもいいものを盗んだり、人の顔に落書きしたりと地味な迷惑ばかりしていたが、今回はいい迷惑だ。


「コラー!さっさと出さんかい!」

「出せと言われて出す奴があるか!このウサギ娘!そこのニワトリ女と一緒にここで過ごしてやがれ!」


 だんだんと声が小さくなっていく。逃げられてしまったようだ。

 更に、海面が大きく揺れ出し、そこからフクロウのような鋭い爪とカチンコが現れた。


「しまった、罪源の仮面が──」


 吾郎が鋭い爪を見ながら言っていると、無常にカチンとカチンコが鳴らされ、別の次元へと飛ばされてしまった。

 辺りを見回してみると、タクマの所にはノエル、おタツ、アリーナの三人だけが取り残されており、目の前には巨大なカチンコが佇んでいる。


「おいタクロー、こいつは一体どう言うことなんだい?アタシに分かるよう、30文字以内に教えな!」

「難しくて無理だわそんなの!てか、俺はタクマだ」

「はいはいその辺にしなんし。来るでありんすよ」

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