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第176話 偽タクマくんすっとばす!

『お尻ペンペンだと?』

『やれるものなら、やってもらおうではないか』

『そもそも、影である我を叩くなど、片腹痛い』


 3人は、タクマ、ナノ、メアの順で、リュウヤを罵倒する。相手は、こんな状況でもなおふざけているリュウヤをナメているようだ。

 

「リュウヤさん、覚悟はいいですか?」

「んなもん、とうの昔に出来てるっての。他二人も、大丈夫?」


 リュウヤは刀を構えながら、おタツと吾郎に訊く。二人は特に何も返す事なく、ゆっくりと頷いた。

 そして、武器を構えた両者は、地面を蹴り上げ、ぶつかり合った。

 リュウヤとおタツは共にタクマを、吾郎はナノを、そしてノエルはメアとの勝負に出た。


「はぁっ!ふっ!テメェ、影ながらやるじゃねぇか」

『敵に向かって褒め言葉か。黙ってないと舌を切るぞ?』

「お前こそ、敵にアドバイスしてんじゃないか!」


 タクマの刀とリュウヤの剣が合わさり、凄まじい火花が飛び散る。リュウヤが刀を振り下ろした時、タクマが剣を平にして防ぐ。そして、一度刀を離した隙を突いて斬りつける。しかしリュウヤはそれを刀で防ぎ、タクマの腹を蹴りつける。

 まさに、カウンターをカウンターで返す戦い。リュウヤはまだ戦い始めてすぐにも関わらず、疲れを表し始めた。

 ──やっぱり肩の傷が痛む。それに、洞窟に居るせいか、空気が薄くていつもみたいに大暴れできない。


「すまんタツ!交代だ!」

「はいよ、お前様!」


 リュウヤは一旦後ろに回り、おタツに託した。おタツは待ってましたと言わんばかりに二本の忍者刀を抜き、タクマの首を斬りつけた。それにより、首から真っ黒な血が吹き上がる。

 

『ちっ、この体は素早い動きに不慣れのようだな。しかし影である我に痛みはない』

「首の傷が治るくらいで驚くもんでありんすか!《火吹きの術》」

『全く熱くもないわ。《コピー》』


 タクマはおタツの放った炎をコピーし、おタツの膝に火炎剣で攻撃をした。


「きゃぁっ!」

「タツ!コイツ、アイツしか使えない技までコピーしやがんのか!コイツ使って治しとけ!」


 リュウヤは裏で作った傷薬をおタツに渡しながら、交代した。そして、こんなやり方ではダメだと、おタツに「援護射撃頼む!」と伝えた。

 その頃、ノエルとメアは魔法を駆使した戦闘を行っていた。


『喰らうが良い。《フレア》!』

「なんのこれしき、《ウォーター》!そんでもって《フリズ》!」

『魔法連携か。だが甘いな』


 メアは投げナイフを使い、ノエルから杖を弾き飛ばした。手の甲に奥まで刺さったのか、右手が使えない。

 ──このままでは杖も使えない。かと言って、殴るにしても短剣と格闘は相性が悪いし、利き手じゃない左手では思い通りの威力は出ない。


『どうした小娘、もうお終いなのか?』

「いいえ、やります!やってやります!」


 ノエルは叫んだ。己を鼓舞する為、痛みを和らげる為、そして別次元に行ってしまった仲間の為。

 そして、ノエルは拳を握り、勢いよくメアの顔面に切り込んだ。


『良いのか?貴様の仲間を殴っても』

「……テメェみたいな偽物、躊躇いなく殴れるわ」

『き、貴様!』

「残念ながら、泣いても許す気はないので。さような、らッ!」


 ノエルはマジトーンで言葉を返し、メアの顔面に本気のパンチを加えた。

 

「偽物とはいえ、ここで忖度無しの戦ができるとは。皮肉なものでござるよ」

『安心しろ。貴様のような死に損ない、すぐにアッチへ送ってやる』

「言っておくが、拙者はうぬの考える以上、かなり強いでござるよ?」


 吾郎とナノは、楽しそうな笑みを浮かべつつ、ハンマーと刀を打ち合った。

 一度アコンダリアで戦った際は、勝利させる為わざと負けたこの戦い。今度こそは本気で勝つ。

 その為に、吾郎は刀を強く握りしめ、雄叫びを上げながらナノのハンマーを断ち切った。


『なっ、我の武器が!しかしまだまだ!たぁっ!』

「そのような玩具で拙者と戦うなど……」


 吾郎に向け、数多のヤマアラシミサイルがロックオンする。だが吾郎は、ミサイルを前にして納刀した。

 そして、目を見開くと同時に刀を抜き、ミサイルを全て真っ二つにした。

 

『フッ、交代した所で貴様はあの女諸共この火炎剣に焼き滅ぼされるのみ。はぁっ!』

「おいおいタクマ、炎ってのは人を焼き殺す為のモンじゃねぇぜ?」


 その頃、リュウヤはおタツの代わりにタクマの相手となり、陽気なまま鍔迫り合いを繰り広げた。

 火花が飛び散る。そして、両者とも弾き返され、双方の腕に傷ができる。


「確かに火葬とかで焼く事はあるけど、火ってーのは」

「「フライパンを!熱する為にあり!」」


 しかしリュウヤは、おタツの手を借りて立ち上がり、二人一緒に決め台詞を決めた。

 するとその時、タクマの剣に力を与えていた炎がかき消されてしまった。と思うと、その炎はおタツとリュウヤの背中で龍の姿に変化した。


「オラオラオラオラァ!私をただの可愛い男の娘だと思ったら大間違いです!」

『くっ!コイツ、斬りつけているというのに何故ここまでやれる!』

「痛いですよ、泣きたいくらい。けど、再会した時に泣きたいから、我慢してるんです!」


 その時、四人の強い意志が合わさり、一瞬凄まじい光を放った。

 その光により、影のタクマ達は目が眩んだ。


「今だ!行こうぜタツ!」

「はい、お前様!」


 リュウヤとおタツは体制を低くし、タクマを斬りつけた。ツバメのように飛び上がり、タカのように撃ちつける。

 そして、最後にタクマの腹部を同時に斬りつけた。


「「長篠の舞・双星乱舞」」


「よし!捕まえました!」

『なっ、しまった!』


 ノエルは隙を突いてメアの腰に両腕を巻きつけた。メアは何度もナイフで腕を刺すが、ノエルは全く動じなかった。

 そして、メアを軽々と持ち上げ、グニンと仰け反る。


「ノエちん必殺!スープレックス!」


『うっ!何だこの光は!』

「良いかね?行くでござるよ!《天照・陽炎の太刀》」


 吾郎は気を刀に集中させ、薄く息を吸い込んだ。すると、周りの気がざわめき合い、砂埃が立ち込めた。

 

『戦中に眠りおって、愚かな奴め!死ぬが良い!』


 ナノは腕を鋭い針状に変形させ、微動だにしない吾郎に襲いかかった。しかし、吾郎の腹部を貫こうとした刹那、吾郎の姿が消えた。

 そして、鬼のような気配を感じて振り返ると、そこには刀を抜いた吾郎が立っていた。

 ──いつの間に移動した?一体何が起きた?

 ナノは戸惑いを見せた。すると吾郎は、スーッと納刀した。


『き、貴様!』

「〈王手〉!」


 吾郎は強く渋い声で叫びながら、鞘に戻した。すると、ハサミで切り裂かれた写真のように周りの風景がパラパラと落ち、ナノの影は悲鳴を上げながらバラバラになった。

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