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第175話 偽物の仲間

「嘘!ウチの影がない!」


 ナノは驚きのあまり、口をあんぐりと開けたままフリーズしてしまった。

 そして、先程まで驚いていたタクマは、気を取り直して剣を取った。


「メア、この現象って……」

「そんな事妾が知るか!とにかく気を引くでないぞ!ナノ、妾のそばから離れるなよ?」


 メアはそっとナノを近くに引き戻し、投げナイフを構える。すると、どこかでザザッと何かが動き出す音が聞こえてきた。目を瞑ってみると、生き物の気配を感じた。いや、生き物にしては正気がない。

 ナノはハンマーを手に持ちつつ、メアの袖をぐっと引っ張った。


「そこじゃ!はぁっ!」


 メアは感じ取った音の方向にナイフを投げる。すると、暗闇の奥でガキン と鉄の音が鳴り響き、同時に火花が暗闇を一瞬照らした。


「タクマ、後ろ9時の方向!」

「えっ!?のわっ!」


 タクマはいきなりの指示に動く事が出来ず、何者かの攻撃を受ける。

 するとその時、そこにノエルの顔が浮かび上がった。


「タッくん!大丈夫!?」

「あ、あぁ。けどこれは……」


 頬にまだ拳の痛みが残っている。今にも歯が取れそうな強さ、今まで感じた痛みの中で、この痛みを出すのはノエルの馬鹿力くらいだ。

 しかしノエルは今この場に居ない。一体、何がどうなっているんだ?

 その時、奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


『〈剣崎流・賽の目切り〉!』

「っ!二人、危ない!」


 タクマは二人を押し倒し、代わりに攻撃を受けた。背中に勢いよく賽の目を思わせるようなカクカクの斬撃が飛んでくる。

 

『この程度か。笑わせるな』


 また奥の方から聞き覚えのある声が聞こえる。すると、近くの壁に備えられた燭台に火が灯り始めた。

 そして、部屋の奥に居た何かが姿を表した。四体居る何かは、ゆっくりと顔を上げた。


「何故、お主らがここに!」

 

 なんとそれは、離れ離れになっていたリュウヤ達だったのだ。

 

 ✳︎

 

 それと同時刻、もう一つの空間でも、リュウヤ達は同じ部屋に閉じ込められていた。しかし、ここはタクマの部屋とは違い、部屋の明かりは既に付いていた。

 そして、目の前に立ち尽くす謎の影を見て、慄いた。


「タクマ……タクマじゃあないか!」

「メアさんにナノナノまで!心配したんですよ?」


 再会を喜んだ二人は、タクマに近付く。しかしすぐ、彼らの異変に気付いた。

 比較的に体が透け、全体的に黒い。そして、本人達からは絶対に感じないような、暗い気を放っている。


「タクマ?」


 リュウヤは肩に手を回した。すると、タクマは振り返り、リュウヤを斬りつけた。

 

「お前様!」

「リュウヤ殿!しっかり!」

「おいおい、俺もしかして、タクマの気に触ることした?ぐっ!」


 リュウヤは何かの間違いだと信じ、肩の傷を抑える。

 ──おかしい。いつもならこの程度の痛み、すぐ引くのに。今回は全く引かねえ!

 するとタクマは3人揃って笑い出した。


『やはり貴様、情報通りだな』

「情報?タクマさん、一体どうしちゃったんですか?」


 訊くと、タクマは『タクマ?』と首を傾げる。すると、メアが後ろから『貴様のその身体の名だ。鈍い奴め』と返した。

 そして、ナノもひょこっと現れた。


「……貴殿、タクマ殿ではないのなら、何者でござる!」

「メアちゃん!ナノナノ!どうしてこんな事を!」

『姿はメアだが、我はメアではない』

『我も、姿はナノだがナノではない』

『俺達は邪竜の使徒、プラド様が残した影の一部だ』


 タクマ、基プラドの影は名乗る。だが、聞いたこともないその名前に、リュウヤ達は首を捻る。

 

「アンタらでありんすか?ウチらとタクマさん達を分断したのは!」

『いいえ?分断したのはこの奥に封印された凶惡魔獣ンゴチガ。奴の出す不思議な音は貴様らを別次元の同じ空間へと分断する』


 ✳︎


『そして我の影も分断され、別次元の影から身を形成した』

「ンゴチガ?プラド?そんな名は聞いたことないわ!」

「せや!変な名前の事話してないで、さっさとリューくんを返すんや!」


 リュウヤの姿をした黒い影は不敵な笑みを浮かべてメア達を見る。

 すると、行動不能の状況に居たタクマが、ゆっくりと立ち上がり出した。


「何が何だか、よく分かんないけど……」

「タッくん!無理したらいかんよ!」


 ✳︎


「つまりはアンタら偽物って事か。なるほどね」

「リュウヤさん!」


 ✳︎✳︎


「「でも……」」


 二つの次元の中で、二人は痛みに耐えながら立ち上がる。するとその時、リュウヤの空間では周りの炎が燃え上がり、タクマの方にはどこからともなく風が吹いてきた。

 

「偽物が……」


 タクマが言う。


「偽物は……」


 リュウヤは言う。

 そして、二人は同時に顔を上げた。


「タクマを、「リュウヤを、親友を騙るな!」」


 同時に言い放ったその瞬間、インターネットのバグのように一瞬時空が歪み、二つの空間が一つになった気がした。

 その証拠に、一瞬タクマの方には本物のリュウヤ達が、リュウヤの方には本物のタクマ達が現れた。


「そ、そうじゃ!ノエルはそんな口調じゃない!もっと可愛げがあるわい!」

「じぃじもタツ姐も、お前らと比べたらめっちゃ優しい!」


 ✳︎


「メアちゃんの顔してるからって、容赦はせぇへんえ?」

「ナノさん、今度会ったら謝ります。だから今は!」

「友の姿を騙る不届き者、拙者の刀の錆と消えよ」

「そういうこったよ、ニセモノ」


 リュウヤはドシンと一発四股踏みをし、タクマに剣を振り下ろし、横に立っていたメアとノエルも斬りつけた。


「テメェら全員ケツ出しな!纏めておしりペンペンの刑じゃコノヤロー!」

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