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第171話 恐怖の具現

【監獄一層 A】

「ほれ、ここじゃ」

「ついさっきまでな、ここでじぃじ?と話をしてたんや」

「確かにこの溝の深さ、苦無だ」


 タクマは先程ゲットしたおタツの苦無を地面のメッセージに差し込み、溝の深さを測った。

 勿論、苦無で書いたためすんなりとはまる。


「しかし、証拠に牢が斬られ、いきなり苦無が現れたっきり、何も返事がないのじゃ」

「もしかして、相手側が敵と出会したために、撤退したんじゃないかな?」

「確かにさっき、タツ姐の悲鳴が聞こえた気がするで」

「ナノ、聞こえるのか!?」

「いや、ただなんとなーく、音波的な響きでそれっぽく聞こえただけやで」

「……ナノ、こっからは君がリーダーだ」


 その特技を知ったタクマは、ナノの両肩を掴み、キラキラした目で指名した。

 するとナノは、満更でもない様子で「う、ウチは一番年下やから、リーダーなんて無理や」と謙遜した。

 しかしタクマは、続けて「いいや!あの子達を従えてたんだから、そんな事はない!素質がある!」と、何故か燃えた口調で言う。


「あれ?ねぇタっくんメアメア、この石板からリューくんの匂いがする!」

「なんじゃと!?こんな石ころから?」

「けどこの石、何に使うんだ?確かに何か意味がありそうだけど……」

「とにかく、こう言った物はお主らに持たせるとロクなことがない。妾が預かるのじゃ」


 メアは言い、タクマから石板を奪い取った。確かにここに石板を嵌められそうな場所はなさそうだ。

 タクマはメアに謎の石板を託し、東側をもう一度探索する事にした。


【監獄一層 B】

「ねぇリュウヤさん、平気そうですけど、怖いものとかないんですか?」

「怖いものねぇ。ノエちゃんは、何が怖いの?」


 リュウヤはノエルを背負い、質問を返した。するとノエルは、うーんと考えた後、「オバケ」と可愛く答えた。

 オバケが苦手と聞いたリュウヤは、ケラケラと笑った。


「オバケかぁ。そいつは怖いな。トイレくらいなら、付いてくぜ?」

「べ、別についてこなくてもいいです!それより、教えてくださいよ!リュウヤさんの怖いもの」

「俺が怖いのは、まんじゅうだな」


 リュウヤが言ったその時、108の札が掛けられた牢屋の中に、まんじゅうの山が現れた。更に、109の牢屋から、大量の白い腕が飛び出してきた。

 それを見たリュウヤとノエルは、ギャァァァァァァ!!と悲鳴を上げた。


「だずげでぐだざい!リュウヤざん!」

「逃げるぞノエちゃん!108だ!」


 そう言い、二人は108の牢屋に逃げ込んだ。しかしそこには、リュウヤの苦手なまんじゅうが置いてある。

 

「でもリュウヤさん、ここにはリュウヤさんの怖いまんじゅうが……」

「あぁ。めっちゃ怖い。すげー怖い」


 リュウヤは青ざめた顔で、まんじゅうを見つめた。やっぱり怖いんだ。何で怖いか分からないけど、確かに白い腕の部屋よりかはマシだ。

 ノエルは心の中で感心した。しかしその時、リュウヤはまんじゅうを手に取った。


「あー怖い。怖いからこんなん食べてまお」

「リュ、リュウヤさん?」

「お、ノエちゃん。食べる?」


 なんとリュウヤは、怖いと言いながら、まんじゅうを頬張っていた。それも、さっきの怯えるような顔から、満足そうな顔に変わっている。

 

「リュウヤさん、本当に怖いんですか?」

「怖い怖い。あー怖い。だから食べて消してまおって魂胆よ」

「嘘ですよね?本当は何が怖いんですか?」


 ノエルが顔を近付けて訊くと、リュウヤはポケットから扇子を取り出し、バサリと開いた。そこには、なぜか「天晴」の文字が書かれている。

 そして、「今度は一杯のほうじ茶が怖い」と締めくくり、深々と頭を下げた。すると、まんじゅうが消え、今度は本当に一杯のほうじ茶が現れた。


「おー怖っ。いただきます」

「ねえリュウヤさん、ふざけてないで怖いもの教えてくださいよ」

「んとねぇ、俺の本当に怖いものは──」


 するとその時、角の方からギャァァァァァァ!!と悲鳴が聞こえてきた。

 リュウヤはすぐにその声をおタツの声だと判別し、ほうじ茶の湯呑みを投げ捨てて助けに向かった。


「ちょっと!置いてかないでくださいよ!」

「タツー!どこだー!」

「お前様ー!お助けくださいましー!」


 後ろの方から聞こえて来る。リュウヤは振り向く。

 するとそこには、人間サイズのモザイクと、それから必死で逃げるおタツと吾郎が居た。


「リュウヤ殿、おタツ殿を止めてくだされー!」


 しかしリュウヤは、すぐに歩もうとせず、その場でブルブルと震えた。


「リュ、リュウヤ……さん?」

「イぴまゃ!メスクワガタ!ごめん無理」


 リュウヤは訳の分からない事を言い放ち、おタツを無視して逃げてしまった。

 すると、さっきまで人現大だったモザイクが一段と大きくなり、ギシャァァァ!と鳴き声を上げた。


「リュウヤさん、何処行くんですか!」

「俺はクワガタ含めて虫が大嫌いなんだ!異世界のクリーチャーならまだしも、マジモンのクワガタは無理!」

「あーもう!これだから最近の男は……私に任せてください」


 そう言うとノエルは杖を構え、そこに氷の魔力を溜め込んだ。


「行きます!《メガ・フリズランス》!」


 ノエルは氷の槍を生み出し、それをモザイクの脳天に突き刺した。すると、身体の内側から凍り付き、モザイクは黒い霧になって消えてしまった。

 それは何故か、説明しよう!ノエルの生み出したメガ・フリズランスは、従来のフリズランスと違い、水素と酸素を限界まで圧縮して作り上げている。

 そのため、強度はこれまでとは違い、鋼をも貫通する槍に仕上がり、刺せば一瞬で凍りつくのだ。

 しかし、圧縮には強い魔法パワーを使うため、使用後暫くは他の魔法も使えない。まあ、ノエルには拳があるので特に問題はない。


「全く、最近の男の人はあんなので悲鳴上げるから成ってませんよ」

「ありがとうございなんし、ノエルちゃん」

「やはり漢でござるな。感心感心」

「ん?なぁ皆、この石って……」


 リュウヤはヒョイと戻り、影が居た場所に落ちていた石板を取った。

 そこには、「……ある日、邪竜の生み出した……明の使徒を殺めた。」と書かれていた。やはり、一部の石板であるため、前後に何が書いてあるのかは全く分からない。


「今度こそは持っておいた方が良さそうですよ?」

「ならここは、ウチが持つでありんす」

「おう、たのんだぜタツ」



 ──一方その頃、タクマ達はと言うと……

【監獄一層 A】

「あれ?この辺で何かが凍りつくような音がした気がするんだけど……」


 その頃タクマ達も、リュウヤが居る東側に来ていた。しかし、空間が別であるため、何もない。でも、そこに誰かは居る。そう信じ、タクマは牢屋の中を調べる。


「キャー!タクマ、見て見て!」

「何だメア、面白いものでも見つ……け……」


 騒がしいなと振り返ると、頭がドクロになったメアの姿があった。タクマはそれを見て驚き、後ろにドッテンとコケる。

 すると、ナノが腹を抱えて大袈裟なまでに大笑いした。


「ホント、タクマは面白いのぅ。こんなに綺麗な本物のドクロ、それもこんなに大きなのは見ないから、持って帰っても良いじゃろ?な?な?」

「アハハハハ!タっくんってばチョービビリなんやな!ウケる!」

「こらー!人の骨、それも監獄のものを持ち帰るなー!祟られても知らんぞ!」


 タクマは起き上がりつつ、メアを叱る。だが、メアは全く聞く耳を持たず、ミニプラで遊ぶ子供のように、骨を組み替えて変なものを作った。

 そうだった。メアの感性は自称サイコパスのようなとにかく人がドン引きするようなものが好きだったんだ。タクマはその事を思い出し、両手を手で覆い隠して唸る。


「何も突っ込まないけどさ、祟られても俺は責任取らないからね?」

「わーすごい!メアメア、それは何や?」

「コレは妾の考えた最強のモンスター!その名もムカデに──」

「メアー!それ以上はダメだー!」


 責任を取らないとは言ったが、流石にここまで行けば庇いきれない。

 タクマは慌てたあまり、メアの傑作を蹴り飛ばしてしまった。


「あー!妾の大傑作になんて事をするのじゃ!」

「悪いけどこれ以上はダメだ!特にムカ……ソレに関しては!」


 すると、ナノの叫び声が聞こえてきた。北側から聞こえて来る!

 それに気付いたタクマとメアは揉めるのをやめ、すぐに向かった。


「やっと見つけたで、ウチの仇!」


 なんとそこには、ナノの宿敵でもある悪魔 アナザーが立っていた。

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