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第170話 離れ離れの別空間

【監獄一層 A】

「おーい!メアー!ナノー!居るかー?」


 タクマは、さっきまで二人が戦闘をしていた入り口付近に戻り、名前を呼んだ。

 しかし、返事は返ってこなかった。そして、デビルベアも姿を消していた。だが、デビルベアの足跡と思しき穴には、まだ温もりがある。

 やはり、さっきまでここに居た事は間違いないらしい。では何処へ、皆は消えてしまったのか。


「ったく、何でよりにもよって俺が一人なんだ?」


 誰に文句を言うわけでもなく、タクマはリュウヤが持参した回転式懐中電灯を持って探索を開始した。


【監獄一層 B】

「リュウヤさん、やっぱり変ですよ。ふざけてないで探索しましょうよー」

「俺とノエちゃん二人っきりなんだし、たまにゃ面白おかしく遊んだっていいじゃんか。ばぁ」


 リュウヤは言い、牢屋の中から脅かした。ノエルは驚きのあまり、正拳突きが暴発してしまう。

 それにより、レンガの壁が大きな音を立てて崩れ落ちた。


「も、もう!怒りますよ!」

「めんごめんご。許してチョンマゲ、トノサマガエル」

「は?何ですかソレ」

「あり?ウケてない?俺ちゃんの考えたナイスギャグだと思ったんだけど……ん?」


 すると、リュウヤはノエルの足元に違和感を覚え、頭を掻きながら探した。

 そして、その中から石板のようなものを発見した。この石板だけ、他の瓦礫と比べて比較的綺麗だったため、すぐに分かった。


「リュウヤさん、これって……」

「何の文字だこりゃ。ノエちゃん、読める?」

「えーっと、……竜と、邪竜が……世界に、心を……?」

「邪竜?心?何かの暗号か?」


 リュウヤは首を捻り、一瞬考えた。

 しかし、リュウヤコンピューターはスパコンをも超える速さで「分からん!」と答えを出した。


「ま、ただのガラクタだろうし、置いてこう」

「ちょ、リュウヤさん!いいんですか!?」


 リュウヤは石板を投げ捨て、先へと進んだ。


【監獄一層 C】

 一方その頃、リュウヤとノエルがふざけているのと同時に、吾郎とおタツもその場所へと来ていた。

 

「うむむ、殆ど同じ構造であるせいか、今拙者達が何処にいるのかいまいち分からぬ……」

「けど何か、この辺にリュウヤさんが居るような気がするでありんす」

「リュウヤ殿が?しかし、人影は何処にも……っ!?」


 するとその時、何の前触れもなく壁がゴロゴロと崩れ落ちた。そう、ノエルが壁を殴ったのだ。

 その事に気付いたおタツは、空中回転をし、すぐに避けた。


「むっ、敵でござるかっ!」

「待って吾郎爺。あそこに綺麗な岩があるでありんす」


 おタツは、崩れ落ちた瓦礫の中にあった石板に手を伸ばした。

 しかしその時、石板はひょいと持ち上げられ、そのまま消えてしまった。


「あれ?き、消えた?」

「そんな馬鹿な。これは一体」


 吾郎は不思議そうに他の瓦礫を眺め、手掛かりになりそうなものを探す。

 すると、ドゴっ! と、重たい音が鳴ると同時に、消えた石板が姿を表した。


「まさかこれは……ようし!試しでござる!」

「ちょっと吾郎爺、ウチの苦無どうするでありんす?」


 吾郎は石板がまた姿を表した事で閃き、試しにおタツの苦無を借り、床に文字を彫った。

 『この文字を見た者、ここに名を書くべし。吾郎 おタツ』。デルガン文字で、そう彫り、おタツに見せた。


「これは?」

「拙者の考えとして。今、拙者達は同じ場所の別次元に居るのではないか、と推測したでござる」

「ど、どう言う事でありんす?」

「例えば仮に、拙者達の今いる場所が『い』だとすると、さっき石板が消えたのは『ろ』の空間と言う事に──」


 そこまで話をした時、ガリガリと何かを削るような音が聞こえてきた。


【監獄一層 D】

 ガリガリガリ 吾郎が彫った文字を見た誰かが、そこに返信を掘る。

 それは、メアとノエルの二人だった。隣でナノはビスケットを頬張り、その横でメアは『二人とも、今そこに居るのか?メア ナノ』と、投げナイフで彫った。


「ねぇメアメア、何でここにじぃじとタツ姐が居るって分かるん?」

「この堀の温かみからして、まだ出来たばかりの彫り書きと見て間違いなさそうじゃからな」


 メアが言うと、その推測通り、そこにまた、新たな返信が彫られはじめた。

 『姿は見えないが、確かに居る。証拠に、今から牢屋を斬る。故に離れてくれ。吾郎』

 文字が完全に現れてから10秒が経過した時、突然メア達の後ろにあった檻が綺麗に崩れ落ちた。


「な、何や!?」

「吾郎が斬ったのじゃろうな。しかし、このまま削り書き方式でやってくのは大変じゃな……」


【監獄一層 C】

「一応、拙者達が同じクロフル監獄の中に居るのは、確かなようでござる。しかし一体、どのようにすれば再開できるのだろうか……」

「そこが問題でありんすなぁ……」


 おタツと吾郎、そして別の空間に居るメアとナノは、頭を使い考えた。

 そして、彼らの中に、一つの共通点としてあのカチンコの音に関係がある、と言う憶測が出た。するとその時、奥の方の牢屋の扉がひとりでに開きだした。

 ギィ、キィーー 錆びた蝶番の音が鳴り響く。それはメア達の居る空間Dも同じだった。


「おタツ殿、拙者の後ろに隠れるでござる」

「は、はい……」


 吾郎は何が来ても動じないよう、強く踏み込み、刀を構えた。


「……来る!」


 カッ、と目を見開き、素早く抜刀する。

 しかし、斬りごたえがない。だが、おタツから見れば、そこにはあるものが居た。

 それはモザイクで隠されているため普通には判別出来ないが、あえて一言で言うなれば、それは巨大なgである。


「イィぃぃぃぃヤァダァダァァァァァ!!」

「お、おタツ殿!どうしたでござる!」

「く、来るな化け物ー!!」


 おタツは、モザイクの化け物と出会したショックで苦無を適当に投げ、全速力で逃げてしまった。


【監獄一層 A】

 おタツの投げた苦無は監獄内でリンクし、吾郎達のいた通路の奥に刺さった。

 シュタタタタ!そんなリズムの良い音が鳴ったため、タクマは近付いてみる事にした。


「この苦無、おタツさーん!居るんですかー?」


 返事はない。しかし、これは確かにおタツの苦無である。

 と、その時。宮内を引き抜いた瞬間、レンガが綺麗に落下し、そこから暗号のような絵が現れた。

 その絵は大きな回の字が描かれており、内側と外側に「101、102、103……」と順繰りに番号が振られた部屋がある。そして、回の字の南中央には、入口と書かれた小さな部屋があった。

 そう、それは第一層の地図だったのだ。


「成る程、こんな感じだったのか。通りでグルグル回ってたワケか」


 タクマが成る程!と目を丸くした時、また何処からともなくカチンコの音が鳴った。

 すると、さっきまで居なかったはずのメアとナノが、そこに現れた。


「た、タクマ!何処に居たのじゃ!」

「あれ?ナノ、メア!そっちこそ、何処に?」

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