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第162話 皇帝サマ、闇黒サマ

「眠ったか?」

「はい、グッスリでございます。ゴルド皇帝」

「よくやった。流石は薬の名手、ユラだ」

「有り難きお言葉」


 大剣を背負った男、もといユラは深く頭を下げる。そして皇帝は、タクマ達が本当に眠ったかどうか、タクマの腹を蹴り上げ、寝顔を確認した。

 タクマは、皇帝にまんまとハメられたとも知らずに、気持ちよさそうな寝顔を見せる。


「お、ありましたぜ皇帝!ヴァルガンナの奴らが持っていたオーブ、おまけに他のも4つありますぜ!」

「ヴァルガンナの王め、調子に乗って大金叩いて買ったと言うのに、国が滅ぶわガキにオーブを奪われるわ、まさに笑い物よ。ハッハッハ!」


 皇帝は厳つい男から5つのオーブを受け取り、光源にかざしながら笑った。


「それで皇帝、彼らの始末はどうします?」

「動けないよう拘束し、闇黒様の糧としてやれ」

「へぇ、やっぱ初めから俺を殺すつもりだったってワケだな?」


 勝利を確信してニヤけていると、どこからともなく陽気な声が聞こえてきた。

 まさかと思いタクマ達を振り返ると、眠っていた筈のメアがフォークを構えて突撃してきた。更に、ナノのヤマアラシミサイルが飛び出し、ノエルは部屋の柱をぶっこ抜き、ブンブンと振り回した。


「皇帝のくせに、睡眠薬で眠らせ首を討とうとは。まさに姑息な所業でござる」

「ごめんなさいね皇帝様。オーブは返してもらいますよ」


 そう言い、タクマは剣を構えた。


「ば、馬鹿な!完食したならば確実に眠る筈だぞ!おいユラ、どうなっている!」

「わわわ、分かりません!確かに薬は入れて、先に確認しに向かった時は眠っていました!それに、完食していれば必ず……」

「ウチらが、そう簡単に眠ると思ったら大間違いでありんすよ?」


 おタツが言うと、タクマ達はドン! と親指を出して見せた。その親指には、何かで切ったような跡があり、今も血が流れている。

 

「確かに最初は眠っちゃいました。でも、リュウヤさんだけは薬が効かなかったみたいでしてね」

「揺すっても起きんから、指切った痛みで叩き起こすって戦法や」

「それにお主ら、睡眠薬以外に、妾達を毒殺しようと考えておったな?」


 メアはフォークを捨てつつ、チラリと後ろの溢れたジュースを見た。

 しかし、何故溢したジュースが毒殺に繋がるのか分からないナノは「何でなん?」と訊いた。


「そうだ。確かに私は貴様らを眠らせたが、ジュースには何も入れてないぞ?」

「いいや、このアーモンド臭。コイツは青酸カリだぜ」

「青酸カリ?推理小説とかで人を殺すあの?」


 タクマは、はっ!と息を吸い込み訊いてみた。するとリュウヤは、大袈裟に「ピンポンピンポーン!タクマ君、ツルギサキポイント3点獲得〜!」と叫んだ。

 特にポイントに意味はない。


「確かにあの飲料、不思議な臭いがしたでござるな」

「あぁ。何せ、青酸カリはアーモンドみてーな臭いがして、味もメタリック杏仁豆腐味に変わる。でもな、コイツは殺すのに3グラム必要だから、小説みてーにそう簡単には行かねぇんだコレが。それも、3グラムなんか入れたら飲む前に分かっちまう」

「な、何かやけに詳しいでありんすな、お前様」


 おタツは、変に味にも詳しいリュウヤを横目に見る。するとリュウヤは、笑いながら誤魔化した。

 

「さぁ、早う観念してオーブをこっちに渡すんや!」

「ソレはタクマ殿の大切な物、どうか頼むでござる」

「くっ、ガキのくせに博識とは生意気な……」


 皇帝は怒りのあまり歯をギリギリと鳴らした。すると、リュウヤの目を見た時、「そうか、貴様の目……」と呟き出した。


「何故強力な睡眠薬が効かなかったのか。そして最近、闇黒様が騒ぎ出すようになったか。成る程、そう言う事だったか」

「何の事だ!」

「悪いが、やっぱり貴様らには死んでもらう。特にリュウヤと申したか、貴様は尚更逃がせん」


 言うと皇帝は、手を龍の腕のような物に変化させ、恐ろしい勢いでリュウヤに飛びかかった。


「リュウヤさん!危ない!」

「イツツ、サンキューノエ……ちゃん……」


 ノエルが突き飛ばしてくれた事で難を逃れられた。しかし、避けた先にあった柱の残骸は、何でも斬れる刀でスパッと斬られたような痕が残っていた。

 更に、皇帝の目は龍のように鋭い眼に変化しており、付き人のユラすらもその正体に驚き息を呑んでいた。


「な、何じゃあやつ!普通じゃないぞ!」

「ど、どうするでありんすかお前様」

「勿論簡単だ!総員、逃げるぞ!」

「おう!……って、えぇ!?」


 流れに乗り、6人が腕を上げたが、タクマだけは気付き、ノリツッコミをした。


「逃げるって、戦わなくて良いの!?」

「馬鹿言うなよタクマ。あの眼、今の俺らと断然にレベチだぜ?それに、例え魔物だったとしても、俺らが皇帝殺っちまったら……」

「きっと、国家転覆罪で、晴れて指名手配モノですね」

「そんならもう、逃げた方がええで!」


 リュウヤ達は走りながら、逃げる理由を伝えた。しかし、逃げても逃げても、城の構造が分からないため、全く出口に辿り着けない。

 しかも、何故かゴゴゴゴゴっと地震が発生した。

 きっと、皇帝の言っていた闇黒様が騒ぎ出したのだろう。


「嘘だろ、また行き止まりかよぉ!」

「もう逃がさんぞ!」

「はわわわわわわ、どど、どうするんですかコレ!吾郎爺、壁壊せないんですか?」

「無理でござる。仮に斬れたとしても、この鉄の壁、刀が壊れてしまう」

「それにこの壁、フレアで溶かそうにも時間が掛かりすぎてダメじゃ」


 メアもノエルも、どうにかして逃げる方法を考えた。しかし、ノエルの怪力も、メアのフレアも、まして吾郎の刀でも壊れない。

 どうすれば良いのか、タクマは頭を悩ませたかった。だが、すぐそこには変わり果てた皇帝が居るため、どうにもできない。

 するとその時、リュウヤが皆に「俺の合図と一緒に伏せろ」と、真剣な目で言った。

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