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第160話 荒野 な 帝国

【ゴルド帝国】

 メルサバを旅立ってから約12時間、タクマ達が昼食を食べていると、突然ずっと走り続けていた馬が足を止めた。

 そして、着いた事を告げるかのように、ヒヒーンと大きく鳴いた。


「おぉ、ここがゴルド帝国か。何か想像してたのと違うなぁ」


 外の様子見がてら降りたタクマは、その先に広がる新世界を見て驚いた。

 そこは帝国にしては何だか古いようで、小さな村にしては小さすぎた。

 ギルドの看板がかけられた施設には、ウエスタン映画で見るようなスイングドアが付けられ、武器屋と思しき店の看板には、銃の絵が描かれていた。

 そこまで聞けば、ぱっと見城と何ら関係なさそうに見えるが、街の奥側には、なんとも場違い感のある漆黒の城が建っていた。まさに、無理矢理そこに西武開拓時代の舞台を縫い付けたような、そんな世界が広がっていた。

 おまけに、その近くには崖を切り崩して作った船着場まで完備されている。


「すんげぇなぁ、城に港にウェスタンとは。なんて言うか、マジめにカオスだな」

「何を騒いでおる、そんなに面白いもの見つけ……な、何じゃありゃあ!」

「なんと、これが帝国という奴でありんすか」


 騒ぎを聞いたメア、おタツ、リュウヤの3人は目を丸くして驚いた。しかしナノは、まるでもう見たとでも言うように、普通の目で帝国を見つめた。


「ナノナノはあまり驚きませんね」

「なんと、何でも興味を示すナノが何も思わないとは、これまた珍しいでござる」

「だってこの景色、パパの好きな絵画でよう見てたし、パパから嫌と言う程どないな街か聞かされたで」


 ナノはまさに、かつての父親代わりだった人物の絵と本物の街を比較する様に見て、全く違和感ありありなこの景色に驚く事はしなかった。

 

「さて、ギルドに入って御目当てのクエスト探しますか!」


 ノエルは他6人に声をかけ、いつも以上の元気さでギルドの中に入っていった。


「ノエル、いつにも増してやる気あるなぁ」

「ノエルが仕入れた情報だから、気合が入ってるんだな。俺達も行こうぜ」


 タクマはリュウヤと話し、ギルドへと足を踏み入れた。


【ギルド】

 スイングドアを開けると、そこに付けられたドアベルが入った事を知らせるために鳴く。

 中の施設はそこまで変わらず、右側から食堂、受付、そして停留所の所謂テンプレと言うもので仕上がっている。

 ただ、馬車は箱型の車ではなく、ド○クエのように白い布のようなもので骨組みを覆う形をしていた。

 更に食堂にはタグの付けられた瓶がマスターの後ろに並んでおり、ガンマン姿の男達はそこで昼なのにも関わらず酒を飲んでいる。


「何か、お酒臭いでありんすなぁ」

「この臭い、ワインとウィスキー、それとビールだな」

「リュウヤ、お主は何故そこまで詳しいのじゃ?」

「爺ちゃんが夜になると酒定期するし、それに日本食でもワイン使うから、いつの間にか酒の匂い覚えちゃってさ」


 リュウヤは頭を掻きつつ、嬉しそうに言った。そう言えば、剣崎の方でも「キープ」と言って後ろにタグ付き瓶を置いてたっけか。

 タクマがあちら側の世界の事を思い出していると、受付がざわつき出した。


「皆さんボードを見て、何か面白いのがあるのでしょうか?」

「うーん、人の頭が邪魔で全く見えへんわ」

「祭りでありんすかね?」

「とにかく、行って損はないでござるよ」「だね。ちょっと見てくか」


 タクマは言い、ボードの前に近付いてみた。しかし、人が多すぎて、結局何も見えなかった。

 そして、人混みの一番奥側から出てきたため、その人に何が書いてあったのか、タクマは訊ねようとした。すると男は、見えない人の為なのか、大声でそこに書かれていた事を発表した。


「お前ら聞いてくれ!またクロフル地下牢深層調査の報酬金が増えたぞ!今度はなんと、60万ゼルンだ!先週の2倍だぞ!」

「2倍と言うと、さささ、30万ゼルンじゃと!?」

「こんな大金の出るクエスト、なかなかねぇぞ?こりゃあ人気沸騰……ありゃ?」


 だが、男の演説のような宣伝を聞いた瞬間、さっきまで興味津々で集まっていた冒険者達は白けたようにはけてしまった。

 言われてみれば、他のクエストは強そうな魔物討伐でも、最大10万ゼルンくらい。この大金クエストだけは、一際目立つ。


「どうして皆取ろうとしないんやろか?」

「これは、妙でありんすな」

「でも、誰も手をつけないってんなら、今しか無いでしょ!」


 大金で人気がなくとも、いつかは誰かがそのクエストを受けるかもしれない。そう思ったタクマは、そこに貼られていたクエスト用紙を剥がした。

 すると、隣にいた魔法使いのお姉さんが、ヤバい人を見るような目でこちらを見てきた。


「やっぱり変ですよここ、何か怖いです」

「ウチの服装のせいでありんしょうか?」

「いや、確かに俺らの和風コーデは珍しいけど、流石にヤバい人見る目はないでしょ。俺ちゃん傷付く」


 リュウヤは不安になっている仲間のため、大袈裟に某セ○のモノマネをして倒れた。

 そして、元気が出た7人は、周りの目を気にせずに、クエスト用紙を受付に出した。その瞬間、食堂に居たガンマン姿の男がギルドを飛び出し、厳つい男がこちらに近付いてきた。


「おい小僧共、まさかそれ受けるってんじゃあないだろうな?」

「え、そうですけど?」

「ウチらなら簡単にこなせるで!馬鹿にされちゃあ困るで!」


 タクマは何を今更当たり前のことを、と言うように首を捻る。すると、男は指を差し、タクマ達をゲラゲラと笑った。

 

「ちょっと、いきなり笑うなんて失礼ですよ!」

「冷やかしなら、ウチが熱い手裏剣、かまりたりますえ?」


 2人が怒りを露わにしていると、厳つい男の仲間が「やめてやれ」と止めに入った。

 その男は背中に大剣を背負っており、両目が髪で隠れていた。


「あらまぁ、イイ兄ちゃんが来たもんだ」

「拙者、何かおかしなことしたでござるか?」

「いや、そんなんじゃ無い。とにかく、俺らはこのクエスト引き受けた奴を皇帝様の下へ連れて来いって言われてるからね。来てもらうぜ」

「ここ、皇帝!?」

「あぁ。とにかく黙ってついて来い。話は皇帝様からでも聞け」

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