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第15話 追い求めすぎは迷惑に変わる

「何か、お恥ずかしいところをお見せしてしまって申し訳ございません」

「いや良いさ、君の服を破壊した私に非があるよ」


 王は顔を赤らめながらタクマを慰める。

 パンツだけは何とか無事だったものの、その姿をメアといえ同年代の女子に見られたと思うと少々恥ずかしい。

 そんな事を考えながらタクマは緑茶をガブ飲みし、お茶が気管に入ったのか咽せて吹き出してしまった。


「それにしても、この服が鎧と同じ性能だとはにわかにも信じられないです」


 タクマは今着ている白のコートみたいな物と中に着ている黒シャツ、そしてジーンズとよく似たズボンを見て言った。


「あまり信じられないようじゃが、鎧と服を錬金術で合成して作っておるのじゃよ」


 メアは得意げに話す。

 そうして、タクマ達はそのままティータイムに入った。


「そう言えば、俺が寝てる間に燃えてたはずの屋敷が治ってましたが、アレは一体……」


 タクマは今気付いた疑問について、王に訊いた。


「私を含む国民全員が手と手を取り合って復旧したのだよ」

「一応ここの国民は皆仲が良いからの、妾の屋敷も元どおりじゃ」


 メアは窓からチラッと見える屋敷を指差して言う。

 そこには、今誰かが住んでいるかのようにピカピカの屋根が顔を覗かせていた。


「国民の友情半端ないな……」


 そうして、時間も忘れタクマ達は王と話をした。


「そろそろ昼間だし、俺達はもうこれで」


 タクマが椅子から立ち上がった時、王が「待ってくれ!」と呼び止める。


「地図なしでオーブ集めなんて出来ないだろう?それに食事もご馳走しよう」

「いえいえそんな、ご馳走までさせて頂かなくても……」


 しかし、タクマの遠慮の言葉も聞かず、王は「いいからいいから」と二人を連れて食事部屋へと連れて行った。



「ハッハッハ、久しぶりに親子揃っての食事だな娘よ」

「もう、父上ったら!ハハハ!」


 タクマは不思議と何かハブられているなと感じていた。

 だが、親子の再会を見ていると、そんな気分が弾け飛んでしまっていた。

 すると、扉の奥から何だか懐かしい香りがしてきた。


「最近大和での修行から帰ってきたシェフに作らせた、極上のうどんと言うものです。さぁお食べなさい」

「ほぉ、パヌストとはよく似ているが白くて太く、しかもスープの中に入っておるとは驚いた……」


 メアは驚いているものの「何だこれ」とも思わず、太い麺を口に運ぶ。


「な、何じゃこれは!このツルツルとした舌触り、スープを吸ったのかこのさっぱりとした味わい、そしてこのスープ!良い塩加減でスープまで飲めるっ!!ようしタクマ、次の行き先は大和に決定じゃ!」

「待て待て、大和の周りは迷いの森とも呼ばれる竹林があって、大和行きの馬車は無いぞ?」


 メアはその話を聞いてすぐしょんぼりしてしまった。



 タクマ達がうどんを食べ終わった時の事。


「とりあえず君たちもここ何日も疲れただろうし、ここから北東に位置する水の街 ウォルへ行くのはどうかね?」


 王は地図を開き、アルゴから北東に位置する街「ウォル」を指差す。

 そこには、小さく「温泉街」とメモ書きが記されていた。


「温泉かぁ、宿屋のシャワールームより疲れが取れそうだな」


 タクマは次の目的地をウォルにし、出発しようとした。その時だった。


「俺は1万だ!」

「いいや俺は5万出す!」

「じゃあ私は8万よ!」


 万だの何だと、外から騒がしい声が聞こえてきた。

 何だ?とタクマは思いながら窓を覗く。すると、馬車の前に多くの冒険家達が群がっているのが見えた。


「もうそんな時期か。毎年夏になると、こうやって行商人がやって来て、オークションや素材等のフリーマーケットを開くんだよ」

「タクマタクマ、金もある事じゃし今すぐレッツゴー!じゃぞ〜」


 メアはタクマ達を置いて一人で勝手に行ってしまった。


「それじゃあ、何か色々とありがとうございました!」


 タクマも、王から貰ったものが入ったバッグを持ち城を後にした。


「可愛い子には旅をさせ、か。これから楽しみだな、エリ」



「ほぉ、現代じゃうん十万もするほどの壺がこんな安値で……」


 タクマが特に分りもしないくせに、壺の出店を見ていると、メアがタクマの肩をガンガン叩く。

 振り返った時にメアはタクマの耳元で「欲しいものができたのじゃが……」と言ってきた。


「見た感じお金出したらロクなもの買わなそうだからダメだ」


 タクマは冷たく言い放つが、メアはタクマの腕を離そうとしない。

 しかも、目で「変なのじゃ無い」と訴えてきている。


「仕方がない、俺も見るから案内してくれ」

「こっちじゃ!」


 タクマはメアに連れられ、いかにも怪しい占い屋に来てしまった。

 そこにはまるで本物のような頭蓋骨、魔物の物と思いたい目が沢山入ったビン、そしてこの世界の文字で「封印」と書かれた札付きの壺が置いてあった。

 メアはそこに置いてある骸骨を持ち、目をキラキラさせている。

 値段は500ゼルンと安値だが、安いとは言えこんな変なものに金は出し難い。

 すると、奥でずっと水晶にパワー的な何かを送っていた店主が声をかけてきた。


「そこの坊や、アナタから何か力を感じるわ……」

「力……もしかしてアナタも分かる方ですか?」


 しかし、その店主はタクマの質問にも答えず占いを始める。

 すると、その水晶にあの時コピーしたワープの魔法陣が描かれた、小さな石が浮かび上がった。


「何じゃ!?この水晶どうなっておるのじゃ?」


 メアは興味津々に見ているが、タクマは背筋が凍るような気がしていた。

 そう、見覚えがあるのだ。

 あの時Zに無理矢理飲まされた石と同じだったのだ。


「これって、一体何なんですか……?」

「転送石。魔法石の中でも一生に一度実物を見れるか見れないと言われる程珍しい魔法石です。」

「魔法石……?」


 タクマがその事について訊ねると、店主は棚から古ぼけた本を出し、魔法石について書かれているであろうページを開いて見せる。

 その文字は今のものとは違うが、タクマには何故か何が書かれているか分かるため、タクマはそこに書かれた文を読む。


『魔法石、創世神話期の賢者達が作り上げたと言われるただの石に魔力を注ぎ込んで作り上げた石。主に使われる石は石炭、岩塩、丸石の三つだが、大賢者ノスは巨大な隕石で魔法石を作り上げた』

「岩塩タイプだったからか……」


 タクマがそれをスラスラと読み終え、独り言を交えて顔を上げて辺りを見た時、何故か周りに人々が集まっていた。


「えーっとぉ……」

「お前さん、何故古代デルガンダル文字をいとも簡単に読めるのだ……!!」


 店主は目を丸くしながら言う。

 メアに関してはその本を難しい顔をしながら読む。


「おいおい、もしかしてあのボウズ古代デルガンダル人の生まれ変わりなんじゃねぇのか?」

「あんなに難解な文字をあの若さで……!?」


 タクマは周りの「すごい!」と言う言葉のマシンガンに押されていた。

 ……まずい、これじゃウォル行く前に疲れて果てちまう。


「あー、俺たち急いでるんですみません」


 そう言った後、タクマは小声でメアを呼び戻し、その場から逃げるようにして去ろうとした。


「金はいくらでも払う、だから俺に古代文字を教えてくれ!」

「いいや私が先よ、ウチのエディちゃんの家庭教師になってちょうだい!」

「これで古代魔法も発見できるかもしれないんだ!だから私に!」


 しかし、古代文明を追い求める者達が後をついてくる。

 その時、タクマはある事を思いつき立ち止まった。


「文字を教える事は出来ませんが、そこに書かれていた魔法石の力だけならお見せできます」

「何だって!?」

「では、行きますよ〜!はいっ《ワープ!》」


 タクマが呪文を唱えた時、メアと共に二人は消えてしまった。


「なんと、これが超珍しい魔法石の力……」

「あぁ、素晴らしいわ〜」

「メモメモ……あっ!メモ帳がバラバラに!!」


 一同がその不思議な出来事の事を口々に言っていると、一人の知的そうな男が「これ逃げられましたな」と言った。

 すると、そこに居た学者達は皆「ああああああ!!!」と今更気づいて大声を上げた。



 一方その頃、タクマ達はと言うと……


「はぁ、何で温泉街行く前にこんな疲れなきゃならないんだ……」

「でも良いではないか、妾達がもうウォルの馬車に乗ってるとは誰も思うまい」

「それもそうだな、あぁ〜楽しみだ!」


 タクマは馬車の中で身体を伸ばしながら言う。

 しかし、伸ばしすぎたのか腕の辺りが攣った上に頭を馬車の屋根にぶつけてしまった。


「あだぁっ!」

「もう、何しておる!」

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