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第156話 強き仲間に信頼を

『フハハハハ!これだから人間は面白い!自ら口に飛び込むとは、その愚かさ、ワタクシが褒め称えてくれる!』


 ラスターは、ケラケラと笑う。だが、メア達はその煽りに反応する事なく、無言で連携を取り、ラスターに攻撃を仕掛けた。

 腹部側の腕にナイフを刺し、階段状に刺したナイフの上をリオが登り、刺さっているナイフで腕に傷を付けた。

 ナノは一度鳥人に変身した後、上空からハンマーを振り下ろしながら降下した。

 そしてフラッシュとノエルは、魔法を放つ腕に、魔法や拳を当てて妨害した。


『フン、雑魚の分際でまだ足掻くか!《メガ・ランディオ》!』

「嫌っ!きゃぁっ!!」

「ノエル君!ぐわぁっ!!」

「フラッシュ!ノエルちゃん!?きゃっ!」

「リオ!くっ、何をする!離すのじゃ!」


 しかし、ラスターの呪文によって、フラッシュとノエルは瓦礫に殴り飛ばされてしまう。

 そして、メアとリオは、さっきまで攻撃していた腕に捕らえられ、口の前へと運ばれる。二人は、持っていたナイフで何度も斬りつけるが、チマチマした攻撃程度では撃退は不可能だった。


「ノエちん!おっさん!大丈夫?」

「くそっ!どうして私は肝心な時に役に立たないのだ……!」

「こんなの、勝てっこない……」

『フハハハハ!さぁ、そこでじっくりと見て絶望せよ!今からこの娘を喰ってやろう!』

「メア……」

「リオ……」


 誰もが絶望的、そう思っていた。しかしその時、何処からともなく、電気的な音が聞こえてきた。

 それと同時に、ラスターは体に異変を覚えたのか、急に腹部を左右上下に動かし始めた。


「な、何だ?」

『ぐぅっ!腹が!腹が苦しい!一体何が!』

「デンジバスター、発射!」


 強面な声が響いた時、民家の窓から、青い波動砲のようなものが発射された。

 それと同時に、ラスターの腹は大爆発した。

 その衝撃で、食われた筈のタクマが飛び出し、ラスターの仮面が大破した。



 ──メア達が、タクマが帰る事を信じて戦っている時の事。

 タクマは、炎の剣を松明代わりに、真っ暗な道を突き進み、0.1の賭けに踏み出していた。

 そう、タクマの考えた作戦はこうだ。

 ラスターの腹部、そこにあるかも知れない、糸を生み出す器官を燃やして爆発させる。その事に閃いたのは、オニキスの『内臓が爆発する』と言った発言から。

 しかし、蜘蛛の内部構造を知らない上、本当にあるのかすら分からない器官を探すのは、まさに賭けだった。更に、仮にあったとして、生きて出られる確率も低い。

 それでもタクマは、あり得ないと言っても過言ではない0.1に賭け、突き進んだ。

 するとその時、どこからともなく火薬の臭いが立ち込めてきた。


「この臭い……あった!」


 道なりに歩いてから数分、なんとタクマの予想通り、腹部と思しき広い空間の中に、大きな毛糸玉のようなものが置かれていた。

 その玉からは、腹部の射出口へと糸が張られていた。


「後はこれを……!?」


 しかし、ふとタクマが炎の剣に目をやってみると、剣をコーティングしていた氷が解け始めており、炎もだんだんと弱まっていた。

 生きて帰れるか不安だったが、躊躇っている余裕はないようだ。

 タクマは死の恐怖を振り切り、決死の覚悟で二つの剣を構えた。

 しかしその時、ラスターが激しく動き出したせいで、体内で地震が発生する。それにより、タクマは足を滑らせ、炎の剣を投げてしまう。


「あ……」


 そして、炎の剣はそのまま糸玉に引火した。




 そうしてタクマは、そのままフラッシュ達の方へと飛び込んでいった。


『ぐはぁぁぁぁ!!な、何が起きたと言うのだ!この電磁力、一体何処から……』

「どわぁぁぁぁぁ!!」

「キャッチ!っと、タクマ君、無事だったのか!」


 煤だらけで帰ってきたタクマは、顔の煤を拭い「死ぬかと思いました」と言った。だが、その顔は何処か清々しかった。しかも、まだやれる元気まで感じる。

 更に、民家の奥からも、ゴツい銃兵器のようなものを持ったサングラスの男が現れた。


「な、何者じゃ!」

「サバ、フラッシュ兵長、リスの嬢ちゃん」

「デ、デンジ!?その武器どうしたのよ」


 リオは、バズーカに似た見慣れない武器を見て訊ねる。それを見たノエルは、その武器を見て「あー!」と叫び声を上げた。

 そう、その武器は、ブラウアイの部下、もといゴロツキが使っていた電磁砲だったのである。


「ブラウアイの武器!?どうしてそれを持ってるんですか!?」

「研究班から掻っ払った。後で返すつもりだ」

『うぅ……見くびっていた……まさか、今の羽虫がここまでやろうとは……』


 震えながらも立ち上がったラスターは、消え入りそうな声で言う。

 そして、顔を上げたそこには、大きな桃色の水晶、もといオーブが埋め込まれていた。

 

「ここは皆で畳み掛けるわよ!」

「「「「「「おー!」」」」」」

『だが、まだだ……タナカトス様のため……ワタクシは……』


 6人はカチドキを上げ、最後の一撃を決める為、武器を持って突撃した。

 ラスターも、最後の力を振り絞り、炎魔法や光魔法を纏わせた鎌を巧みに使い、妨害する。

 

「そうはさせるか!《メガ・ドゥンケル》!」

「ジャスティスランス!」


 しかし、二つの鎌はフラッシュとメアの攻撃により軌道を大きく外してしまう。

 タクマは、炎と光の魔力をコピーし、光魔法の力を剣に注ぎ込んだ。


『ちょこざいな!』

「どけっ!《メガ・ウォーター》!」

「《フレア・ウィップ》!」


 ラスターは、腕を使って襲いかかる。だが、ノエルの魔法とリオの鞭によってねじ伏せられる。


「今よ!行って!」

「了解や!タっくん、飛ばすで〜!」


 ナノは、気合充分にハンマーを構え、タクマと共にオーブ目掛けて飛び上がった。

 

「はぁっ!〈閃光の剣〉!」

「〈だるま落とし〉!」


 タクマはオーブに傷を付け、その傷目掛けて、ナノは力強くハンマーを振った。

 すると、オーブにヒビが入り、ラスターの体が浮かび上がった。


『な……何だ……やめろ!ワタクシはまだ……』


 そして、オーブが破裂して飛び散った時、ラスターも同時に、花火のように爆発した。その際散乱した何かは、桃色の光を放ちながら、メルサバ中に飛び散った。


『タナカトス様……またしてもワタクシは……』


 そう言葉を残し、蜘蛛の仮面を付けた女魔導士の魂は、桃色のオーブの中に再度封じ込められた。

 そして、カツン と寂しげな音を鳴らし、瓦礫の海の中へと落ちた。

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