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第155話 99%の確率と、0.1の賭け

「ま、まさかアンタ!騙したな!」

「まあ見てろ」


 オニキスは、スルリとナノのハンマーを避け、倒れている3人に向けてトリガーを引く。

 ただ、出てきたのは銃弾ではなく、緑色の液体だった。ピュルルと出て来た液体が、タクマ達の傷跡に付着した時、さっきまでの瀕死が嘘のように立ち上がった。

 しかし、まだ傷は完治しておらず、3人は今にも倒れそうになる。


「はぁ……はぁ……オニキス……?」

「女もどき……何故じゃ……」

「あなたは……一体?」

「俺は最強狩りの死神。そして、お前らにとって大迷惑な存在だ」


 しかしオニキスは、いつもの台詞を言い残し、オニキスは去ってしまった。


「タクマ君!無事なのか!」

「二人とも、立てますか?」

「何とかのぅ。それより、奴に攻撃が効かないと言うのは誠か?」

「せやで。あのバカ蜘蛛、デカデカと言うてた!」

『神に祈る間は終わりだ!ワタクシが蹂躙してくれよう!』


 待ち侘びたラスターは、本気で殺しにかかって来た。鎌を使ってフラッシュ達を襲い、大量の魔法弾を放ちながら、メアやリオに掴みかかろうとする。

 それを防ぐため、フラッシュとナノ、そしてノエルの3人は、3人の内臓爆発を防ぐために、率先して対抗した。

 しかし、いくら攻撃しても無駄だった。ラスターは、しがみつくフラッシュを振り払い、骨触手とプロレスをしていたノエルを投げ飛ばし、後ろから攻撃を仕掛けようとしていたナノに蜘蛛の糸を吐きつけた。

 だが、それでも3人は諦めず、もう一度飛びかかった。


『ええい!ちょこまかと鬱陶しいハエ共め!何故こうまでして死に争う!』

「姫を守るのがナイトの務め!」

「仲間を守るのが、私の生き甲斐!」

「優しい皆を守る為なら、ウチは何度だって!」

『フン、くだらぬ!実にくだらぬ!そんな仲間のための自己犠牲精神、腐るほど聞いた!』

「だからなんだと言うのじゃ!」

「内臓が爆発するだか何だか知んないけど、そんなの私が逃げていい理由にならないわ!」

「えーとえーと、とにかく!無駄でもお前をぶっ倒す!」


 なんと、リオとメアも、更にタクマも参戦した。タクマは、集中的に降り注ぐ水属性と木属性を同時にコピーし、木を宿した剣で、ラスターの口を攻撃した。

 

『無駄だ!ワタクシにそんな弱々しい攻撃は効かぬ!』

「くっ、どうしたらええんや!」

「こうなったら……《フレア・ソード》!」

「り、リオ!馬鹿、何魔法使っておるのじゃ!死にたいのか!」

「内臓爆発が何よ。死なば諸共よ……」

「リオさん!そんなのダメです!」

『フハハハハ、雑魚め!さーて、誰から食ってやろうか』


 ラスターは、追い詰めたタクマ達を真っ赤な仮面の目で見下し、最初に食べる獲物を探した。

 このままでは死ぬ。魔法を使っても、内臓が破裂して死ぬ。かと言って物理で戦っても、外側は硬過ぎて無意味。

 ん?外側がダメ?そして、内臓……内側の臓器……

 その時、タクマの中に電流が走った。


「リオさん!この剣借りる!」

「お、おいタクマ君!何をする気だ!」

「やいラスター!食うなら俺を食ってみろ!」

「た、タっくん!何考えとるんや!」

『よかろう、威勢の良いガキは好きだ。踊り食いにしてやろう』

「皆は出来るだけ無理しないで戦ってくれ」


 タクマは、笑顔で振り向き、メア達に言う。


「馬鹿タクマ!そんな事したらお主……」

「約束する、必ず帰る。だから行かせて。な?」


 メアに腕を引かれたが、タクマは腕を引く手の小指に自分の小指を巻き付け、こっそりと指切りをした。

 

「じゃあ、行ってくる」

『んっ?自ら口に入ったか。自らこんな終わり方を選ぶとは、実に愚かだ』


 ラスターは、ケラケラと笑った。


 ──その頃、リュウヤの方は……


「たぁっ!」

「ぬぁっ!」

『おっと、流石サムライ。素早さに関しては一級品だね』


 リュウヤと吾郎は、共に刀を振り下ろした。しかしαは、二人の素早い攻撃を両手で受け止め、余裕そうな声で動きを誉めた。

 その隙を狙い、おタツは苦無を投げた。

 だが、αは腕から小さなミサイルを発射し、苦無を全て打ち落としてしまった。


「な、何でありんすかコイツ!隙がない!」

『安心なさい、不易な殺生はしないよ。ただ少し、君達に戻られると、彼女の頑張りが無駄になるからね。せめてラスターが死ぬか、タクマ君達が死ぬか、その結果が出るまで足止めするだけだよ』

「理由は分からぬが、邪魔をするのなら斬る!それだけでござる!」

『さあ、その意気の通り、斬れるかな?』


 そう言うと、αは暗闇から真っ黒な刀を取り出し、リュウヤと同じ構えをした。

 そして、リュウヤとαは、互いに刀を打ち合った。


「まだまだ!〈剣崎流・雷切の開き〉!」

『ほぉ、これが君の特殊能力か。面白い《アビ・ティール》!』

「それが何だ!どりゃあ!〈剣崎流……」

『〈剣崎流・乱切り〉』

「ぐぁっ……」


 なんと、αはリュウヤの技を発動した。

 無造作に切り刻まれたリュウヤは、血を吹き出して宙を舞う。

 更に、リュウヤの腹に手を差し込み、そこから光の玉のようなものを奪い取った。

 そこにおタツは、αの首を狙って忍者刀を振る。するとその攻撃だけは、すんなりと首に入った。


「リュウヤの分!」

『夫婦愛、という奴か。素晴らしい。だが、《アビ・ティール》』


 αは、おタツの腹にも手を差し込み、そこから光の玉のようなものを奪い取った。


『成る程、この二つの力が。〈分身の術〉』

「な、何なんだコイツ……俺らだけの力をどうして……」

「まさか、タクマさんのコピーみたいな?」

『『二人仲良く眠りたまえ。《長篠の舞・双星乱舞》』』


 何が何だかわからない。そんな状態で混乱するリュウヤ達に、αは長篠の舞でリュウヤ達を斬りつけた。

 それにより、おタツは気絶し、リュウヤだけはギリギリその場を凌いだ。


「おタツ殿!こうなれば仕方あるまい!〈天照・陽炎の太刀〉」

『ほぉ、抜刀術か。なかなか見ない技だね。《アビ・ティール》』


 吾郎が抜刀の構えをしても、αは動じなかった。まるで、その攻撃を一度受けてみたいから突っ込んでこい。そう言って誘い込むように。

 それでも吾郎は、気にせず攻撃を仕掛け、αの後ろに回った。


「〈王手〉!」


 納刀する音が鳴った時、周りの景色が灰色になり、刀で斬った跡が浮かび上がる。


『これは……はぁっ!』

「がはぁっ!!」

「吾郎爺の天照を……弾き返したっ!?」


 なんと、吾郎の斬撃はαによって砕かれ、吾郎からも光の玉が奪われてしまった。

 そして、αは天照の構えで、吾郎に近付いた。


『〈天照・陽炎の太刀〉』

「やめろーっ!!」

「リュウヤ殿!危険でござる!」

『ほぉ、そんなになっても立ち上がるのか。流石、その強靭さ、感心するよ』

「殺させねぇ!殺すなら、俺を殺してからだ!」

「リュウヤ殿……」

『安心したまえ、殺しはしない。ただの時間稼ぎと言っただろう?』

「だったら、テメェを倒してタクマんとこ行く!」


 リュウヤは、血を吐いていると言うにも関わらず、お構いなしに全力で刀を振り下ろした。しかし、いつものような力は出ず、αの斬撃、〈王手〉を食らってしまった。

 それを食らった事により、リュウヤは、体の内側から破裂するように血が噴き出し、膝をついてしまう。


「くっ、どうしてだ?力が出ない……」

「あの技、タクマ殿も似たような技を……」

『タクマ君?いいや、タクマ君のコピーは魔法だけかつ、一度きりだ。その点、私のアビ・ティールは完全に《能力》を《奪う》技。この光の玉が、君達の持つ特技なのだよ』

「だから、拙者しか使えない天照を……?」

『そうさ。私がコレを持っている以上、君達は技を発動できなくなる。代わりに、私は使えると言う訳さ』


 そう言い、αはリュウヤから奪った光の玉を見せた。と思うと、αは3つの玉を3人に投げ返した。

 それが体の中に戻った時、さっきまで出なかった力が蘇ったように感じた。


「何のつもりでござるか?」

『これは言わば、ハンデだ。もしまた戦うとなった時、相手の手の内を知っていた方が、対策とか出来るだろう?」

「ナメてんなよな、オッサン」

『ナメてる?とんでもない、私は君達の事を気に入っているんだよ。特に君、君のその耐久力にね』


 αは、抑揚のない声で答える。そして、その耐久力を試さんと、弱ったリュウヤに刀を刺そうとした。

 しかし、それを寸前で止める。


「……?」

『もう稼ぐ必要はないみたいだ。さぁアルル、家へ帰ろう』

「待て!まだ勝負はついておらぬぞ!」

「今更逃げるってのか……?」

『そんなにカリカリしてると、いつか大切な物を失うよ?』

「そうはさせぬ!これでも食らえ!」


 吾郎は、残った力でおタツの手裏剣を取り、この場から立ち去ろうとするαに投げつけた。

 だが、αはあえてそれを食らい、その手裏剣を自分の鎧から引き抜いた。

 それを見た吾郎は、ありえないと言わんばかりの表情をした後、パタリと倒れてしまった。


「α……お前は何者なんだ……?」

『私は、何者でもあって、何者でもない。答えは自分で探したまえ』

「どう言う意味だ?」

『この手裏剣は、出会いの思い出として貰っていくよ』


 αは、倒れたアルルを肩に担ぎ、リュウヤ達に背を向ける。


「待て……」


 リュウヤは追った。しかし、瞬きをした頃には、二人の姿は消えてしまっていた。

 

「とにかく……アイツらの様子見に行こう……」


 リュウヤは、作った笑顔でおタツと吾郎を担ぎ、ゆっくりとタクマ達の戦場へと歩いた。

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