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第154話 死神の薬

「何なんだ今の……」

「タっくん!起きて!タっくん!」

「ナノ……」


 声がする方を見ると、頬に煤を付けたナノが、タクマの腹に刺さりかかっている瓦礫を引き抜こうとしていた。

 しかし、何故だか痛みは感じない。更に、動けと命令しても体が動かない。


『ちぃ、羽虫の分際で生き残りおったか!』

「メア君!起きたまえ!」

「リオさん!リオさん!死んじゃ嫌です!」


 首を横に倒してみると、そこには血を流して倒れるメアとリオ、そして二人に必死で声をかけるフラッシュとノエルが居た。

 何が何だかわからない。頭に血が回らないせいか、目の前が真っ白になった事以外覚えていない。


『雑魚どもめ、貴様らにはワタクシからの墓標をくれてやる!』


 すると、倒れた二人を狙って、ラスターの鎌が骨の触手のようなものを生やし、鞭のようにして襲いかかってきた。

 

「まずい!ノエル君、伏せるんだ!」

「きゃっ!」


 ノエルは、フラッシュに押し倒され、地面に伏せた。その時、奥の方でジャキン と何かが切れるような音がした。

 その後、ゴゴゴと崩れ落ちる音がし、民家が倒壊してしまった。


『ちっ、外したか』

「タっくん!早く逃げようよ!」

「ナノ、無理かも……」


 何度試しても、体が動かない。神経を完全に切り取られたように、痛みも感じない。動いて瓦礫を抜こうにも、全く抜けない。まして、ハンマー使いとはいえ、こんな瓦礫を小さなナノが引き抜くなんて無理だ。

 タクマは、そろそろ来るであろう死を受け入れ、ナノに言った。

 するとその時、地震のような振動が伝ってきた。

 

「?」

「死なせはしないぞぉぉぉぉぉ!タクマ少年!!」

「リュウヤさんとの約束、どうするんですかっ!」


 なんと、二人を担いだフラッシュとノエルが、こちらに飛んでくる。

 そして、タクマが倒れている地点を通り過ぎると同時にノエルは、馬鹿力でタクマごと瓦礫を引き抜いた。そして、そのままハンマー投げのようにグルグルと振り回し、ラスターに投げ飛ばした。


「だぁぁぁぁ!!」

「何だい、元気じゃあないか!」

「いや、アレはノエちんがやり過ぎたから叫んでるだけやで」

『雑魚が』


 大砲のように飛んでいくタクマは、ラスターの腕に捕らえられ、民家の壁に打ち付けられた。

 そして、ラスターは仕切りを直し、人間の腕と鎌を使い、残りの5人を追い詰めた。

 

「《フリズ》!《サンダー》!《ウォーター》!」

「〈だるま落とし〉!」

『フハハハハ、効かぬ効かぬ!《メガ・フレア》!』

「ぐわぁぁ!!くっ、全く効いていないだと!?」

『冥土の土産に教えてやる!ワタクシの身体は鎧そのもの!貴様らの武器では、何かを刺せても、倒す事などできまい!オーッホッホッホ!』


 勝ちを確信したラスターは、ボロボロになったフラッシュ達に、今までの攻撃が無意味だった事を教えた。

 するとその時、どこからともなく口笛が聞こえてきた。


「へぇ、身体が鎧ねぇ。成る程成る程」


 何者かが呟いた時、タクマが打ち付けられた民家から、オニキスが飛んで現れた。

 そして、ラスターの鎌を、蹴り二つで跳ね返し、フラッシュの前に立った。


「タクマさん!?それに、オニキスさん!」

「今度は面白いうちに来れたが、来てみりゃ無様なもんだな。特にコイツ、死にそうじゃねぇか」

『貴様、邪魔をするな!』

「邪魔なのはお前だ。すぐ事を済ませるから、それまで動くな。動いたら、殺す」


 オニキスは、黒い目を真っ赤に変え、ラスターを睨みつけた。それに激昂したラスターは、鎌に光の力を集め、オニキスごと全員を斬り殺そうと試みた。

 鎌は二つとも民家に刺さり、そのまま両方から襲いかかってきた。

 しかしその鎌は、時空が歪んだ事で変な方向に行ってしまい、タクマ達の頭上で重なり合った。


「……な、何なんだこれは!君は一体何者なんだ!」

「黙れと言った筈だ。それよりお前ら、回復したいか?」

「回復は私が……」

「動くな。お前の未熟な回復魔法じゃあ、この死に損ない、一匹も救えないぞ」


 オニキスは、ラスターを一瞥し、ノエルに厳しく言い放った後、何事もなかったかのように取引を開始した。

 勿論、フラッシュ達は身構え、ナノは完全に殺すつもりでハンマーを握りしめた。


「いいのか?このままじゃ、そこのタヌキとキツネは死ぬぞ?ついでにタクマもな」

「どうせロクでもない薬を飲ませるつもりやろ?」

「さぁな。オレも使った事ないが、回復は出来るみてーだ。ただ、魔力が尽きたら内臓が全部……」

「全部……どうなるんです?」


 するとオニキスは、大声で「どっかーーん!」と叫び出した。


「……ってなるらしいぜ?」

「そんな……じゃあ、タクマ君はよしとして、二人は魔法が主な攻撃方法だから……」

「どうすんだ?早くしねぇと、ほら」


 オニキスは、親指で後ろを差した。そこには、渋々と取引が終わるのを待つラスターが居た。

 

「……分かった。その薬を3人にあげてください!」

「の、ノエル!?何でや!内臓爆発するんやで!」

「確かにオニキスさんの言ってる事、信用なりません。でも、少しでも可能性があるなら、例え爆発したとしても、生き返るのなら……」

「私からも頼む!二人を復活させてくれ!」


 フラッシュは、頭がもげ落ちるような速度で頭を下げた。

 それを見たオニキスは、ニヤリと笑い、懐から銃を取り出した。

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