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第149話 秘密兵器ノエちん

【メルサバ兵寮 仮眠室】

「こりゃ酷い打撲傷だな。滲みるが、効力に期待はあるから我慢してくれ」

「あだだだだっ!」

「やっぱり居たんですか?恋の魔術師」


 ノエルは、リュウヤに薬付き包帯を巻かれて痛がるタクマに訊いた。

 流石に、隠し事をしたところで自分の力では解決できない事は目に見えている。タクマは、信じ難いが、あの占い屋で見た女の正体を明かそうとした。

 するとその時、タイミングの良い事にワンダ国王とリオ本人がやってきた。大事な話があるのだと察したメアが、連れてきてくれたらしい。


「タクマ君、恋の魔術師の尻尾を掴んだって、本当かい?」

「タクマ、そこで見たもの、奴の正体を教えるのじゃ」

「一体どんな顔だったの?恋の魔術師」


 3人は同時に訊いてきた。普段なら順番に聞け、聖徳太子かとツッコミたいが、今回ばかりは言わなかった。

 そして、一つ一つ、そこで起きた事を正直に話した。勿論、恋の魔術師の顔がリオにそっくりだった事も。


「え、本当にリオちゃんがそこに居たでありんすか?」

「ちゃうで。確かに顔はリオリオそっくりや。けど、匂いがしなかった。だからちゃう、アレはリオに似た誰かや」


 ナノは捕捉するように言った。

 そして次に、タクマが聞いた女の名前である「ジョン・ドゥ」の事も話した。


「じょん……どぅ?女の名前にしては、なんか違うような気がするでござるな」

「いや、ジョン・ドゥは名前がわからない人の事を指す言葉だ。きっとアルルと言う悪魔の女は、君達に名前を教えないため、あえて分からないフリをしたのだろう。グルなのに互いの名前を知らないのはありえない」


 ワンダ国王はそう言った。するとその時、リオはそう言えば、と何かを思い出し立ち上がった。

 

「リオ、どうしたのじゃ?」

「ねぇお父様、先代が私の事をすごく可愛がってたのって、どうしてだっけ」

「可愛がってた?どう言う事だ?」


 リュウヤは訊いた。するとリオは「何でかは分からないけど、私の事可愛がってくれたのよ。それとジョン・ドゥの顔が私だったのと、何か関係あると思って」と話した。

 

「確か、劇団員のユリアと言う少女と似てるから、だったかな」

「ユリア?それってもしかして、王様の部屋に飾られてる、あの絵の人ですか?」


 ノエルは訊く。


「いかにも、あの作品はユリアの肖像画だ」

「しかし何故、先代はそのユリアの素顔を知っていたと?」


 タクマは気になり、そう訊いてみた。ワンダ国王は、その話を聞き「特別に見せてもらったらしい」と答えた。

 

「特別、でござるか?」

「あぁ。いつも来てくれるから、特別に見せてあげたらしい。きっとその時見た素顔が、我が娘とソックリだったのだろうね」

「成る程な。確かに、もう二度と会えない人に似てたら、孫以上に可愛がるのも納得できる」


 リュウヤはうんうんと深く頷き、そう言った。


「けど、問題は正体やなくて、場所を変えられた事にあるんやないか?」

「あ、それだ!あの時は運良く見つけられたけど、ノーヒントでこんな広い中探すのは骨が折れるからな」

「じゃあどうするでありんすか?何か良い方法……」

「そうだ、良い事思いついた!」


 するとその時、リュウヤが立ち上がって言った。

 いきなりかつ最速の立案に、一同は驚く。


「なぁタクマ、リオちゃんの顔って事以外に、何か特徴とか無かった?」

「特徴……?そうだ!たしかあの女、赤いハイヒールを履いてた!」

「リオリオの靴は見た感じ、少なくともハイヒールやない。となると、それが手がかりやな」

「うっし!そうと決まれば完全に固まったぜ!」


 手がかりを訊いたリュウヤは、頭の中で練っていた作戦が完成した事を喜び、ガッツポーズをした。

 一体何を企んでいるのだろうか。


「お前様、一体何するつもりでありんす?」


 おタツは訊く。するとリュウヤは「聞いて驚くなよ?」と大きく言ってから、ダララララララ……とセルフドラムを始めた。


「ノエちゃん、君に赤ハイヒールの女捜索を頼んだ!」


 リュウヤはノエルの背中をポンと叩いて言った。それから数秒の沈黙が続き、ノエルは「えええええええええ!?」と驚いた。

 

「リュウヤ殿!何故ノエル殿に全部任せるでござる!これは拙者達の問題でござるよ!」

「そうじゃそうじゃ、何でよりにもよって、お主がノエルに命令しておるのじゃ」

「まーまーまーまー。気持ちは分かるけどさ、俺らは何もしないって訳じゃねぇから安心しろって」

「安心できる訳ないやろ。第一こんな大人数で尾行なんかしたら、真っ先にバレるわ!」


 まさに非難の嵐ではあるが、そんな中でもリュウヤは、火に油を注ぐ事なく、こっそりと耳打ちで事情を説明した。

 そして、その事情がノエルの耳に入ると、ノエルは「ま、まあ。それなら……」と渋々ではあるが受け入れた。


「俺らには秘密兵器があるから、何とかなるぜ」



 ──それから数分後の事。

【メルサバ 噴水広場前】

 時刻はもう既に6時。夕焼け小焼けの、子供は帰る時間だ。

 そんな中、綺麗な広場の周りには、カフェで寛ぐ男女や、ベンチで新聞を読むシルクハットのジェントルメンなど、沢山の人で賑わっていた。

 そんな中、セーラー服のような襟付きの服を纏ったツインテールの少女は、オドオドとした様子で辺りを見回した。

 そして、ふと後ろを振り向くと、物陰に隠れているリュウヤが謎の黒い箱を片手に、親指を立てて合図を出す。

 そう、このツインテールの少女こそ、ノエルなのである。そして、シルクハットのジェントルメンは吾郎、カフェの男女は変装したナノとおタツ、そしてタクマとメアである。

 勿論、タクマとナノは顔が割れている為、マスクにサングラスと言う不審者のような格好をしている。


「秘密兵器がどうたら言ってましたけど、本当にうまく行くんでしょうか……」


 ノエルは不安そうに呟く。そして、その頑張っている様子を、皆はそろりそろりと見守った。

 するとその時、フランスパンの入った紙袋を持った女と、ノエルはすれ違った。そして、すかさずその女の靴を確認した。

 だが、残念ながら赤ハイヒールではなかった。


「大丈夫なんだろうか……」

「ノエルを信じるのじゃ。あやつならきっとやれる」


 さっきまでリュウヤの作戦を非難していたとは思えないほど冷静に、タクマとメアは小声で話をした。

 するとその時、ノエルはある1人の女と話をし始めた。靴を見ると、その靴はまさしく、赤のハイヒール。ビンゴだ。


「……恋する乙女に花束を」

「……」


 ノエルはその女に、合言葉を伝えた。

 するとその女は、ノエルにしか聞こえないよう、耳元で「ついてきなさい」と言った。

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