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第147話 隠された恋の巣

 タクマは、ナノと共に恐る恐るカーテンの中へと入った。

 そして、辺りを見回してみると、絵に描いたような怪しい占い屋のような空間が広がっていた。

 真ん中にはピンク色の水晶玉が置かれており、奥の棚には、魔女のようなオカルトチックな物が飾られている。


「な、何やここ……気味わるいで……」

「俺がついてる。何かあったら、すぐ後ろのカーテンから逃げるんだ」


 タクマはそう言い、念の為まだゲートが開いているかどうか確認した。

 すると嫌な予想が的中し、カーテンのかけられた入り口は、レンガ造りの壁に変化していた。つまり、閉じ込められてしまったのだ。


「こうなったら、嫌でも探索しないとダメみたいやな」

「だな。ナノ、とにかく俺から離れたらダメだぞ?」

「う、うん」


 怖くなったナノは、タクマの手を繋ぎ、占い部屋の探索を行った。

 まずは、気になっていた水晶玉を見てみた。確かに色はピンクがかっているが、他のオーブのようなどこか不気味な力は感じられなかった。となると、ただの水晶玉で間違いない。

 そして、棚の装飾品も探索してみた。

 魔女帽子を被った猫の置物に人の脚が入った鍋、保健室や理科室に置いてありそうな6分の1スケールの骨格標本など、きっとメアが好きそうな物ばかりが並んでいる。

 だが、特に怪しい様子はなかった。


「収穫なし、か」

「どうする?帰れんとなるとウチら……」

「しっ、何か来る!」


 微かに聞こえる物音を聞き取ったタクマは、急いで隠れられる場所を探した。

 すると、運の良いことに、隣の薄暗い部屋の中に、床に着くほど長いテーブルクロスのかけられたテーブルがあった。


「あそこだ」

「そこは嫌……」

「今はその要望には応えられない!ごめん!」


 幽霊でも居るかのような目でテーブルのある部屋を見るナノは、そう言ってもその場から離れようとはしなかった。

 タクマは仕方なく、ナノの目を隠し、急いでテーブルクロスの中に隠れた。

 するとその時、カツン、カツンとヒールのような音が聞こえてきた。


「来た」


 地味にではあるが、ヒラヒラした部分から、赤いヒールを履いた女の脚が見える。だが、まだよく見えない。

 恐る恐る、片目を出すようにしてテーブルクロスを上げて見る。すると、あの日見たフードの人物と同じものを纏っているのが見えた。


「やっぱりビンゴか。良ければ顔を拝ませてくれ……」


 タクマは彼、または彼女が素顔を晒してくれる事を祈った。すると、運が良いことに、その人物が仮面を外した。

 そして、その素顔を見て、タクマは驚いた。なんとその顔は、リオとそっくりだったのだ。


「そんな……」

「いや違うで。確かにあの顔、リオリオだけど、匂いが違う。いや、匂いがない」


 ナノは素顔を見てそう言った。確かに顔は瓜二つなくらい似ているが、昨日や一昨日、少なくとも彼女は赤いハイヒールを履いていなかった。

 更に、身長もメアと同じくらいだったのが、彼女はリオと比べて少し背が高い。

 ナノほど聴力や嗅覚に自信はないが、見た感じそう思える。


「それで、ユ……ジョンちゃん。エモノは見つかったかしら?」

『まずまずではありますけどね。着々と恋愛感情を奪えていますわ』

「あらそう。それなら良かったんだけど、例のオーブは今どこにあるの?」


 ここからは見えないが、女と話をしている。しかしこのどこかギャルじみた声、ピアとフォルテではないのは確かだが、聞いたことのある声をしている。

 一体何処だ?思い出せ、思い出すんだ。

 タクマは脳を働かせ、必死に聞き覚えのある声と合わせていった。

 するとその時、ヒールがこちらに向かってきた。


『あの長髪野郎!ヤツがアイツらに真実の眼を渡したせいで!また場所を変える羽目になった!』

「ひゃっ!まぁまぁ、そんなに怒らないの。場所変えるくらいどうって事ないでしょ?」

『違う!この場所は見つかる確率も低く、人も多い最高の一等地だったの!それをあの男、台無しに……』


 乱心なご様子の女は、テーブルの上に載っていた燭台などをガラガラと落とした。それにより、タクマから見て右側のクロスが上がってしまう。

 そして、それと同時にドサリと、何だか柔らかいものが落ちてくる音がした。


「大丈夫よ。困ったらお姉さんに任せなさい。第一、情報広めたのは私と、恋愛感情を奪ってる貴方の奴隷ちゃん達なんだから」

『そ、そうですわね。取り乱して申し訳ありません。アルル様』

(アルル……?)


 あの2人が言っていた首謀者の名、クィーンサキュバスのアルル。やはり絡んでいたようだ。

 だが今は出られない上に、彼女が何処に居るのかすら分からない。なればここは、誰もいなくなるまで様子を見るしかない。


「ウフフ、行ってらっしゃい。ジョン・ドゥさん」

『その名で呼ぶな。名前を思い出せないから仕方ないがな』


 そう言い、ジョンと呼ばれた女は、部屋を後にした。

 

「はぁ、わざわざα様が復活さしてくれたってのに、どうしてここまで人の恋愛感情に執着するんだろ。不思議な子」


 アルルは独り言を呟き、スタッとタクマの前に降りた。テーブルの上に居たようだ。

 するとその時、アルルはふぅ~と一息ついてから、靴先をタクマに向けた。


「さて、そろそろ出てきたらどう?可愛い可愛いネズミちゃん」

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