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第13話 勇者伝説

 タクマは夢を見ていた。教室で三人が何か話している夢だ。

 そのメンバーはタクマ、リュウヤ、最後の一人は頭部にモザイクのような物があるせいで良く見えないが多分鹿羽根だろう。


「そういや……ラ、最近来てないけど単位大丈夫なのか?」


 リュウヤが謎の少年に声を掛ける。

 そして、……ラと呼ばれた男はその質問に答える。


「大………って!俺………から」


 しかし、頭部だけでなく、声も壊れたボイスチェンジャーを使ったかのように高く、しかも不快なノイズ音も混じってよく聞き取れない。


「随分と強気だなぁ、鹿羽根のそんな強さ俺も欲しいわ」


 タクマは笑いながら言う。やはりこの人物は鹿羽根で間違いない。

 しかも下の名前まで出てきた。しかしノイズのせいで最後の「ラ」しか聞こえない。

 だが、タクマはその本当の顔や声を思い出すことが出来ない。

 何故だろうか、ずっと一緒に居た仲だったのに、家はそんなに離れていない為にずっとプリント配達で顔を見てきた筈なのに思い出せない。

 そんなもどかしい思いをしていると、またノイズ音がした。


「ハ………ハ……ハ!」


 多分笑い声なのだろうが、それでもノイズ音のせいで良く聞き取れない。


「こ……い……無いと……俺の……夢…………い……な」


 夢……?何とかそこだけは聞き取れた。

 だが、それでも内容は分からない。


「そういや、お前の夢って何なんだ?まだこれ聴いてなかったよな」

「えぇ…………言………良い…ど……お前……言……よ?」


 この話は将来の話だと分かった、そして鹿羽根のノイズも少しではあるが改善したようにも思える。


「俺の夢は…………………………………」


 そう思ったも束の間、鹿羽根のノイズはどんどん酷くなって行った。


「お前……………なkぁ……ゎ……」


 リュウヤの声にもノイズがかかる。

 しかも、ゲームバグのような変な声まで出ている。

 辺りが崩れていく、何が何だかわからないくらいグチャグチャに。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 タクマはベッドにかけられた毛布を投げ飛ばし、勢いよく起き上がる。

 そして一旦深呼吸をし、自分の力で悪夢で興奮した身体を静めた。


「はぁ、何だったんだアレ……」


 辺りを見ると、見覚えのある木造の寝室が広がっていた。

 あの時フィルとアンに出会った宿屋の一室である。

 そして急にタクマが起き上がった事に驚き倒れている人も見えた。

 そしてよく見ると、その人は武器屋のケンであった事が分かった。


「起きたか……オレ……心配だった。そうだ……コレ……お見舞い」


 そう言うと、ケンは背中の巨大な鞄からタクマの剣を取り出した。

 だがそれをよく見ると、ティグノウスのあの強靭な爪のような物が取り付けられている。


「そうだ、あの後どうなったんです?」


 タクマが訊ねる時と同時に、誰かが部屋に入ってきた。


「あの後、妾と父上はすぐ目覚めたのじゃが、お主だけ三日も眠っておってな。その間に、父上含む国民全員で高速の復旧作業を終えた訳じゃ」


 メアはベッドに腰掛けながら言う。

 確かに、全焼とまでは行かなかったが、ほぼ燃えていた宿屋がここまでの復活を遂げているのは不思議である。


「そうか……ん?このデカイ宝石って……?」


 タクマは、近くの机に置かれた紅い宝石を見て思い出した。

 ティグノウスの目に入っていた宝石をくり抜いた事を。

 Zだの、メアはアルゴ王の娘だので放ったらかしになってしまったが、この不気味に光る宝石の事はまだ触れていなかった。


「それ……オーブ……か?」


 すると、その宝石を見たケンが『オーブ』と発言した。


「おーぶ?まさかそれって勇者伝説に登場するあの!?」


 メアが驚きながらも訊くと、ケンは首を縦に大きく振った。


「勇者伝説……それは……」



 勇者伝説

 ある日、ずっと平和だったデルガンダルに、闇の力に呑まれた魔王が現れた。

 力のない民は皆、魔王の闇に成す術もなく消されていく。

 しかし、そんな阿鼻地獄に立ち向かうべく、名もなき町で生まれた勇者「あああああ」が名を上げた。

 勇者は魔王討伐の為に必要な8つのオーブを集める旅をし、その道中で7人の仲間と心を通わせ、お供にした。

 そして、8人と8のオーブを使い魔王を討伐したのであった。


「これが……勇者伝説……師匠の……好きな……話」


 だが、ケンは瞑想するかのように瞑っていた目を見開き話を続けた。


「でもコレ……まだ終わらない……」



 しかし、倒した余韻に浸っていた勇者達が魔王の方を見ると、魔王は黒い粒のような物になりながら笑っていた。


「吾輩は因子となりてもう一度世に君臨す!」


 魔王はそう言い残して、因子となった。

 そんなピンチになった時、勇者は自分の命と引き換えに魔王因子を全て封印する事を決意した。


「オーブは故郷に持ち帰れ」


 そう遺言を遺して。

 そして七人の仲間達は、勇者の遺言通り、妖しく光る玉を一人一つ故郷持ち帰り封印した。


「そして……その一つが……ヴァルガンナの紅オーブ……」

「とりあえず……王に顔……合わせてこい。」

「何か色々、ありがとうございました!」

「暇あれば……また来な……」


 タクマはケンに見送られながら宿屋を後にする。

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